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それでもまだ雪の上に立ちたくて。スノーボーダーとして生きる覚悟。「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL Vol.4」

Backside

BACKSIDE 編集部

本連載「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL」は、編集者でありスノーボーダーでもある僕(編集長)が、24-25シーズンを通じて感じたことを綴る全4回のコラム。滑り続ける意味、伝えるという仕事、仲間とのつながり──そして、人生そのものとしてのスノーボーディングについて。

 
4月上旬。街はすっかり春の装いで、山も緩やかに雪解けが進んでいた。
 
その頃、僕の左ヒザは、ついにはっきりと悲鳴をあげた。1月下旬から感じていた違和感が、明確な痛みに変わり、階段の上り下りもこれまで以上に億劫になった。
 
それでも滑っていたのは、ただ単純に滑りたかったから。今シーズンは、近年では一番エアを楽しめたシーズンだったと思う。もしかすると、それが“代償”だったのかもしれない。
 
東京と千葉、2つのスポーツ整形外科で診察を受けた。13年前に粉砕骨折した左大腿骨外顆。その骨の一部が剥がれ、ズレが生じているという。
 
選択肢は3つ。骨片の除去手術、再建手術、人工関節置換。いずれも、雪上に戻る未来は、かぎりなくゼロに近かった。将来、おじいちゃんになったら人工関節に置換することは想定して生きてきた。でも、こんなにも早く“終わり”の影が見えてしまうとは……考えていなかったのが正直なところ。
 
それでも、僕の答えは明確だった。
 
このヒザで、できるかぎりを尽くす。たとえ飛べなくなったとしても、いまはターンを描ける。仲間と笑って滑る時間は、まだ作れる。
 
滑るという行為は、僕にとって“生きる”ということと同義だ。この身体、このヒザ。この現実を受け入れながら、まだ終わらせたくない。
 
そして、2025年のゴールデンウィーク。僕は富山・立山バックカントリーの雪の上にいる。読者コミュニティ「BACKSIDE CREW」の仲間たちとともに、テントを張り、雪の上で火を起こし、山に登って滑っている。
標高2,000mを超える残雪の山を、痛むヒザとともに登っていくのは正直しんどい。でも、まだ滑れること──それがなによりもうれしい。誰かと一緒に笑って、ラインを刻む時間を共有できること──それが、僕にとってすべての答えになっている。
 
Instagramの投稿で綴った、”Fuck this situation, but I keep shredding.”というフレーズ。この言葉は、“滑り続けたい”という希望だ。
 
どこまで滑れるかは、わからない。でも、今日も滑っている。スノーボードを愛する、いち編集者として、いちジャーナリストとして、そして、いちスノーボーダーとして──。
 
おわり

text:Daisuke Nogami(Chief Editor)
riding photo:YUI

 
【前回記事】亡き“父”と“友”へ。滑ることでしか伝えられない想いがある。「SNOW LIFE IS BEAUTIFUL Vol.3」

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