高知県嶺北地域で取り組む山と都市そして人を結び未来へ繋げる「もりとみず基金」とは
高知県の北部に位置し、四国のまんなかエリアにある大豊町、本山町、土佐町、大川村。嶺北(れいほく)地域と呼ばれるこの4町村は、山や川などの雄大な自然と、その自然資源を活かしたラフティングやカヌーといったアクティビティが盛んなエリアだ。
今回は、この嶺北地域で発足した「一般財団法人 もりとみず基金」の取り組みを紹介する。
官民連携で立ち上げ、四国銀行など地元企業も監事として参加しているこの団体。過疎が進む地域にあって、どのような活動をしているのか。地域が直面している課題や目指す未来を伺った。
地域の将来を考える中で生まれたアイデアが形に
高知家の○○取材班が訪れたのは、「もりとみず基金」がオフィスを置く、土佐町にあるコワーキングスペース「あこ」。
写真左から、代表理事の三好一樹さん、職員の⽴川真悟さん、インターンの佐野翔梧さん、事務局長の尾﨑康隆さん(土佐町役場から出向中)、土佐町地域活性化コーディネーターの松野伸介さん。
-「もりとみず基金」が生まれたきっかけを教えてください。
三好さん:地域でのいろいろな検討がつながっていって、結果的にできあがったんですよ。県職員として長く林業行政に携わる中で、嶺北地域でも勤務をしていました。そんな中で尾﨑さんや立川さんに出会い、地域の人の営みや自然をどうやったら未来に繋げていくことができるだろうと議論を重ねていました。そうしているうちに、県職員を早期退職し地元に帰るつもりが、嶺北の皆さんに声をかけていただいて「もりとみず基金」の代表理事をすることになっていました。
写真提供:もりとみず基金
嶺北地域で暮らす人にとっては当たり前の景色である、連なる山々と見惚れるほどに透き通った川。
「この当たり前を未来に残すために」と、林業振興や環境保全、SDGs推進など、各地域で進んでいた検討が繋がって立ち上げられたのが「もりとみず基金」だ。
尾﨑さん:嶺北地域では過疎・高齢化が進み、手入れの行き届いていない山が増えています。スギやヒノキを植えた山は適切に手入れをし、山の環境を維持することが必要です。そして、山を手入れすることが水資源の保全にも繋がります。また嶺北地域の水資源は、お隣の香川県へも運ばれます。単独の市町村ではなく、森や水で繋がる自治体同士で連携して取り組んでいくことが必要ではないかと考え、私たち嶺北地域と高松市で「もりとみず基金」を設立しました。
写真提供:もりとみず基金
2024年1月に設立した、「もりとみず基金」。現在は、林業従事者に向けた研修や林業機械の貸し出し、環境教育、そして二酸化炭素の排出削減に取り組む企業と地域を繋ぐ活動を行なっている。
写真提供:もりとみず基金
写真提供:もりとみず基金
森の価値を見つめ直し、未来へ繋げる
森を手入れすることで、水資源を守り、人の営みが豊かになる。
このことは、ここで暮らす人たちがずっと積み重ねてきた循環だ。しかし、地域の人たちが大切にしてきたその積み重ねも現在では維持することが困難になっている。
三好さん:30年前と比較すると、嶺北地域の林業従事者は4分の1まで減りました。また高齢化も待ってはくれません。新たな担い手の確保と育成、サポートは設立当初から取り組んでいます。さらに、「もりとみず基金」が橋渡し役となって都市や企業との繋がりを作り、ヒト・モノ・カネが循環する仕組みづくりも作っていきたいと考えています。
尾﨑さん:活動の根底にあるのは、「この地域が好き」という気持ちです。私たちにとって大切なこの地域がこれからも続いていくように、環境や資源、営みを価値あるモノとして今一度見つめ直すことが必要だと考えています。
森を守ることは水を守ること。
そして、水を守ることは私たちの暮らしを未来へと繋ぐこと。
「もりとみず基金」の活動は、豊かな森と清らかな水を未来へと手渡すための、確かな一歩となっている。
一般財団法人 もりとみず基金
住所:高知県土佐郡土佐町田井1495-1
TEL:0887-70-1310
https://www.moritomizu.org
文/長野春子