看板ネコと秘湯で人気の宿が火事で…復活へのエール受け奮闘中【北海道・足寄町】
「秘湯」との呼び声も高い北海道十勝地方の足寄町にある「山の宿 野中温泉」。
雌阿寒岳のふもと、開湯112年の歴史を誇ります。
豊かな温泉と看板ネコたちが名物で、登山者や地元の人々に愛されています。
しかし、1月23日の夕方、状況は一変します。
厨房から出たとみられる火が旅館に広がり、ほぼ全焼してしまったのです。
当時は客がおらず、ここに住んでいた代表の野中祐子さんも逃げて無事でしたが…。
「消防団が早く来てくれたので、まずはネコを探した。呼び続けたんですけど、なかなかみつからなくて…。臆病だったので相当怖かったんだと思う」
7匹いた看板ネコのうち、「どぅ太」だけはまだ見つかっていません。
無事だったネコのうち、5匹は野中さんの姉の家に避難。
いま野中温泉にいるのは『シャム』1匹だけです。
黒いがれきとなってしまった母屋。
焦げた臭いが漂い、煤だらけとなった客室。
野中さんの家財道具もほとんど焼けてしまいました。
「人生のすべてを焼き尽くしたといってもいいくらい、何も残っていない。本当に何も。」
電気や水道も止まったままで、営業再開の道筋は立っていません。
ただ、希望も残っています。源泉かけ流しの、自慢の硫黄泉が無事だったのです。
「焦げ臭さはずっと残るんですよね。お掃除とか放っておいてもだめだよね。まずお風呂からはじめようと一歩一歩きれいにして、どろどろだったのでみんな掃除してくれて」
地元のボランティアも駆けつけ、がれきの撤去を手伝っています。
ボランティアの一人、山下さんは「生まれてからずっと野中温泉があるわけだから、維持してほしい。再建してほしい」と話します。
再開を待ち望むのは、地元の人だけではありません。
火災のあと、全国のファンから野中さんやネコたちを心配する声が相次ぎました。
その声に応えようと、野中さんはYouTubeチャンネル「温泉猫折々…時々余談」でネコの変わらず元気な姿を動画で発信しています。
また、雌阿寒岳を望める雄大な景色や、復旧に向けて作業に取り組む様子なども発信し、野中温泉の「イマ」も伝えていきたいと話します。
「私たちの身体を気遣ってくれる声、『ネコ大丈夫?』という声があり、『大変だけどこれから頑張って』と私たちを鼓舞してくれる言葉とか、『必要なことがあったらいつでも駆けつけるから』という声。『ありがとう』という言葉が陳腐なくらいありがたいと思っています」
まずは、野中さん自身とネコたちの暮らしの再建をはかること。
そして、全国のファンたちが待ち望む、お風呂の再開を焦らずに目指すため、フェイスブックで支援も募り始めています。
たくさんの人の心と体を癒した温泉が、今度は温かい気持ちに支えられ、一歩一歩、歩んでいます。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は取材時(2025年2月25日)の情報に基づきます。