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大阪・八尾に残る「河内音頭」発祥の寺・常光寺に行ってみた

草の実堂

画像:常光寺の本堂 筆者撮影

大阪府八尾市や東大阪市を中心とする中河内地域では、今も夏の風物詩として「河内音頭(かわちおんど)」の盆踊りが盛んに行われています。

実際に踊りの輪に加わったことがなくても、「エンヤコラサーア、ドッコイショ」という独特の合いの手を耳にしたことのある方は多いでしょう。

その河内音頭の起源に深く関わっているとされるのが、八尾市にある常光寺です。

今回は、意外と地元でもあまり知られていない「河内音頭」発祥の地とされる常光寺を訪れてみました。

寺院の様子と、河内音頭の起源や歴史について詳しく紹介していきます。

常光寺の現在

画像:常光寺の山門 筆者撮影

常光寺は、近鉄八尾駅から高架下の商店街を西に向かい、5分程の所にあるファミリーロード(本町商店街)を左折して、南に50メートルほど進んだところを右に入るとすぐにあります。

近鉄大阪線の高架化に伴って現在の駅になるまでは、ファミリーロードの近辺に駅があり、この商店街が街の中心でした。

常光寺の山門は両側に仁王さんが睨みを利かせています。

境内はそれほど広くはなく、山門をくぐると正面に本堂が見えます。

画像:常光寺の本堂 筆者撮影

前述したように、この常光寺は、八尾市や東大阪市など中河内地域で受け継がれてきた盆踊り「河内音頭」の発祥地として知られています。

境内には「河内最古之音頭発祥地」と刻まれた石碑が静かに建てられています。

画像:河内音頭発祥の地の碑 筆者撮影

また、本堂のそばには、日本の寺院では珍しいマニ車も設置されています。

チベット仏教では一般的に見られるもので、ひと回しするごとに、経典を一巻読誦したのと同じ功徳が得られるとされています。

画像:常光寺のマニ車

常光寺の歴史と「河内音頭」の起源

常光寺の歴史をひもとくと、その起源は奈良時代にさかのぼります。

聖武天皇の勅願を受け、僧・行基によって創建されたと伝えられています。

南北朝時代には戦乱に巻き込まれて焼失し、一時は荒廃しましたが、至徳2年(1385年)、この地の土豪・藤原盛継により再興されました。

さらに室町時代には足利義満から自筆の「初日山」「常光寺」の額が贈られ、今も寺宝として大切に保管されています。

現在の本堂などは比較的新しいものですが、千年以上にわたる長い歴史を刻んできた寺院であることがうかがえます。

この再興の過程が、後の「河内音頭」の起源と関わるとされています。

画像 : 足利義満像(鹿苑寺蔵)public domain

義満の支援を受け、京都から淀川・大和川を経て運ばれた大量の木材が再建工事に用いられました。

その運搬作業では、指揮役の音頭取りにあわせて作業員たちが声を掛け合い、それが「木造り音頭」と呼ばれる流し節の掛け声となって広まりました。

やがてこの作業歌は、以前から各地に伝わっていた念仏踊りと融合し、現在の河内音頭の原型である「流し節正調河内音頭」へと発展していったと考えられています。

常光寺の「地蔵盆踊り」

現在の常光寺は臨済宗南禅寺派に属し、ご本尊の地蔵菩薩は「八尾地蔵」として親しまれています。

境内では毎年8月22日・23日の地蔵盆に合わせて「地蔵盆踊り」が行われ、多くの人で賑わいます。

両日とも、夜7時から11時まで盆踊りが続きます。
前半の2時間は、ゆったりとした節回しで物語を朗々と歌い上げる「流し節正調河内音頭」が披露され、後半はテンポを上げた現代調の「河内音頭」が櫓を囲んで賑やかに踊られます。
境内には、この盆踊りの様子を撮影した写真も掲示されています。

数ある河内音頭の盆踊りの中でも、常光寺では今も原型とされる「流し節正調河内音頭」が継承され続けています。

なお、この「流し節正調河内音頭」は、平成8年に環境庁の「残したい日本の音風景100選」に選定されています。

常光寺のその他の行事

常光寺では春の風物詩として、「大般若会(八尾地蔵練り供養)」の行事も行われています。

例年4月の最終日曜日、境内に特設の回廊が設けられ、地蔵菩薩や七如来、赤鬼・青鬼・閻魔大王の面を付けた人々や、小坊主や稚児に扮した子どもたちが練り歩きます。

地獄極楽絵巻を表現する儀式であり、大般若経を転読しながら、地蔵菩薩による厄払いを行い、家内安全や町内繁栄を祈願します。

画像:常光寺の梵鐘 筆者撮影

また、毎年大晦日には除夜の鐘つきが行われます。

多くの寺院と同様、人間の心にあるとされる百八の煩悩を鐘の音で一つずつ打ち消し、新年の平安と健康を祈る行事です。

年の瀬の街に、常光寺の鐘の音が今も静かに響き渡ります。

おわりに

八尾市といえば、河内音頭の本場として全国的に知られ、自治体も「河内音頭の街・八尾」を掲げて地域振興に取り組んでいます。

今回実際に常光寺を訪れ、その佇まいを確かめるとともに、荒廃と再興を経た寺の歴史が、河内音頭の起源と結びついていることを改めて知ることができました。

常光寺の地蔵盆踊りでは、今も「流し節正調河内音頭」が受け継がれ、その独特の節回しが夏の夜を彩ります。

河内音頭の原点ともいえるこの響きを、八尾の地でぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

参考 : 『常光寺公式サイト』『八尾市公式 河内音頭のまち八尾』他
文:撮影 / 草の実堂編集部

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