【事例付きで解説】介護職に必要な観察力とは?気づきを共有して信頼を生む4つのポイント
介護現場で働き始めたばかりの新人職員にとって、利用者さんの小さな変化を見逃さず、適切に対応することは簡単ではありません。 時には「いつもと違う」という違和感を覚えても、それを言葉にできなかったり、自分の担当外だからと見過ごしてしまったりすることもあります。
しかし、観察力を養い、感じたことを適切に伝え、責任を持って行動することで、利用者さんの安全を守り、チームの一員として信頼される介護職員へと成長できるのです。
この記事では、新人介護士のカイゴさんとうめが、業務の中で重要な能力の一つである観察力を身につけ、活用するコツをご紹介します。
登場キャラクター
カイゴさん
現場に入って間もない新人介護士1年目。分からないことだらけでも日々奮闘中!
うめ
介護に詳しくて、少しおせっかいな猫。カイゴさんの頼れる相談役。
小さな変化に気づく「観察力を養う」
夜勤明けの朝の起床時間。カイゴさんはいつも通り利用者さんの着脱介助を行っていました。
カイゴさん
おはようございます。じゃあ、そろそろ着替えましょうか!
声掛けをしましたが返事がなく、カイゴさんは一瞬戸惑いました。しかし、朝が苦手な利用者さんと認識していたため、眠気でぼんやりしているだけだと判断し、そのまま着替え介助を続けました。
しかし昼食時、食事に手を付けていないことに違和感を覚え、別のスタッフが検温すると熱発していました。朝の時点ですでに体調を崩し始めていたようです。
NG例:普段と同じに見えて変化を見逃す
カイゴさん
朝の時点で気づけてたらよかったんですが…まだ眠いだけだと思ってしまって…。
うめ
そうだったんですね。朝のことを改めて思い返してみて、普段と違うと思う瞬間はありましたか?
カイゴさん
えーと…いつも返事をしてくれる利用者さんなのですが、今日は返事が全くなかったのがちょっと気になってました。
うめ
それ、小さなサインかもしれませんよ!
カイゴさん
そうか…なんとなく違うって感覚、もっと大事にしてよかったんですね!
うめ
はい。『普段と同じようで違う』に気づく力、これが観察力ですよ。
OK例:ちょっとした違和感もメモして報告
カイゴさん
おはようございます。…ん?お顔、少し赤いような?
また別の日に声掛けをしてみましたが、普段に比べ反応が薄かったため、記録用紙に「表情が赤みあり/反応がやや遅い」と記載し、念のためバイタルを確認。
無理に起こさず、保冷枕をあて安静にし、朝の申し送りで報告しました。
・体温:37.3℃
・P:89
・Bp:127/48mmHg
・SpO2:92%
・表情が赤みあり/反応がやや遅い
上記の報告のおかげで看護師がすぐに確認することができ、早めの対応につながりました。
うめ
カイゴさん、ナイス観察力と対応です!小さな違和感でも書き留めて、チームで共有するのはすごく大事ですよ。
カイゴさん
ありがとうございます!今までは「気のせいかな」で済ませていましたが、これからは普段との違いをもっと意識します!
うめ
その調子です!顔色や姿勢、声の調子…気づけたことはすぐにメモを取るようにしましょう!
POINT
・小さなサインはすぐにメモ&申し送り
・表情・反応・声の調子などを前日比で見よう
担当外にも目を向ける「視野の広さ」
ある日のお昼ごろ、カイゴさんはトイレ誘導を行っていました。
カイゴさん
もう少しでお手洗いですよ。ゆっくり行きましょうか。
歩行を見守りながら廊下を進んでいると、隣のフロアにいる別の利用者さんがひとりで立ち上がりかけているのが目に入りました。
カイゴさん
少し危ない気がするけど、あの利用者さんは隣のフロアの方だし、口出しをしてはいけないかな…?今は自分のフロアの利用者さんを対応しないと…。
そのまま誘導を続けていたところ、ガタンという大きな音がしました。確認してみると、立ち上がりかけていた利用者さんが椅子ごと転倒しそうになっていました。幸い通りかかったスタッフが転倒寸前のところで支えたため、ケガはありませんでした。
NG例:自分の仕事じゃないといって放置
カイゴさん
立ち上がろうとしているのは僕も気づいてたのに…声をかければよかったなぁ…。
うめ
なるほど、声をかけるのをためらってしまったんですね。何か躊躇してしまう理由があったのですか?
カイゴさん
自分のフロアの担当じゃないことと、状況もわからないから、余計なことをしたらだめだとって思ってしまって…。
うめ
その気持ち、わかりますよ。でも、担当が誰であれ、利用者さんの安全を守るのがスタッフの大切な役割です。
カイゴさん
そうですね…。最初に気づいた人が行動することって大事なんですね。
うめ
そうなんです!担当外でも、気になることがあれば一声かける。それだけで事故を防ぐことができますよ!
OK例:気づきを共有して事故を未然に防止
カイゴさん
あ…あそこの利用者さんが立ち上がりそう!どうかしましたか?今立ち上がると少し危ないので、一度座り直してみませんか?何か気になることがあれば、私に聞いてくださいね。
その後、すぐにピッチでフロア担当の職員に声をかけたおかげで、その利用者さんは無事に誘導され、転倒を防ぐことができた。
うめ
素晴らしい判断でしたよ、カイゴさん!担当の利用者さんだけでなく全体を観察できていますね。
カイゴさん
ありがとうございます!一声かけるだけでも違うって本当ですね。
うめ
そうなんです!事故予防はチームプレイですよ。『気づいた人が最初に動く』を合言葉にしましょう。
POINT
・迷ったらまず声かけで様子を確認
・優先順位を考えつつ、周囲の安全も確保する
・気づいた人が最初のアクションを起こす
申し送りや会議で意見を伝える「発言力」
定例のカンファレンスは、利用者さんごとの心身の状態や適切な介護技術を共有する大切な時間です。利用者さんの最近の変化について問われたとき、カイゴさんは一瞬手を挙げかけましたが、躊躇してしまいました。
カイゴさん
気になる様子の利用者さんがいるんだけど…、でもどうやって伝えればいいんだろう…。
結局発言ができないまま会議は終了してしまいました。
NG例:感じたことをうまく言葉にできない
カイゴさん
ってことがあって…結局発言できなかったです…。
うめ
いざ会議で発言するとなると不安になりますよね…。でも、カイゴさんは何か気になることがあったんですよね?
カイゴさん
はい。その利用者さん、前は食事中にもっとお話しされてた気がするんです。
うめ
それは素晴らしい気づきですね。ぜひ共有しましょう!事実→気づき→提案の流れでまとめると伝えやすくなりますよ!
カイゴさん
なるほど!事実を先に言って、そこから自分の考えを伝えるんですね!
うめ
そうなんです。この3つの項目にまとめる意識を持つと、伝わりやすくなりますよ!
OK例:「事実→気づき→提案」で3行発言を意識
翌週の会議。カイゴさんは事前に話す内容を整理して臨んだ。
カイゴさんここ3日ほど、食事中の発話が減っていて、ほぼ無言です。以前はスタッフに話しかけていたので、気持ちの変化があるかもしれません。
何が要因となっているのかを確認した方が良いと思っています。職員側で対応ができそうな内容であれば、私の方で対応したいと思いますがいかがでしょうか?
他のスタッフからも同意の声が上がり、結果カイゴさんの提案が採用されました。
うめ
すばらしい整理力でしたよ!伝える力、しっかり育ってます。
カイゴさん
ありがとうございます!3つのパートにまとめると自分の考えも整理しやすいんですね!
うめ
そうなんです!自分の言葉で、どんどん発信していきましょう。
POINT
・伝えるときは事実→気づき→提案の順で整理
・具体例・前後の比較があると説得力アップ
・短く簡潔に自分の考え・言葉を話す
タスクをきちんとやり遂げる「責任感」
レクリエーションの片づけをしていると、カイゴさんは先輩から利用者さんの洗濯物を取り込むよう指示を受けた。
カイゴさん
分かりました!これが終わったら対応します!
そう返事をしたものの、すぐに別の利用者からトイレ誘導を頼まれ、その後はお茶出しの時間に。バタバタしているうちに、洗濯物のことはすっかり頭から抜けてしまいました。その後、先輩から確認され、思いだしたカイゴさんは急いで洗濯物を取り込みました。
NG例:「後でやる」がトラブルのもとに
カイゴさん
やろうと思っていたのに、別の仕事が入って忘れてしまいました…。
うめ
忙しい時ほど、忘れやすいですからね。頼まれごとは、どう管理していますか?
カイゴさん
えーと、頭の中で覚えてるだけです…。
うめ
それはリスクが高いですよ。メモやチェックリストに書き出すのがオススメです。
カイゴさん
なるほど…。自分が忘れないようにする工夫が必要なんですね!
うめ
そうなんです!工夫と合わせて頼まれた仕事に責任を持つという意識も大切ですよ。
OK例:頼まれたことはすぐにメモをして整理
カイゴさん
これは終わったから、次は事務作業をして、15時になったら利用者さんに薬を届けにいく…っと。
頼まれごとがあるたびにすぐにメモを取り、タスクが終わるたびに完了マークを付けていったおかげで、複数ある頼まれごとを抜け漏れなく対応することができました。
うめ
完了マーク、しっかりついてますね。素晴らしいです!
カイゴさん
ありがとうございます!やらなければならないことを見える化すると頭の中が整理できるんですね!
うめ
そうなんです。今やることとあとでやることを分けて、きちんと完了まで持っていく。それが責任感ですよ。
POINT
・頼まれたことはその場でメモして可視化する
・頭だけに頼らず、ツールやメモ帳を活用する
・完了したらチェックし、小さな達成を積み重ねる
まとめ:新人介護職に必要な観察力の4つのポイント
カイゴさん
自分にできることから実践していったら、ちょっと自信が出てきました!
うめ
ポイントを意識するだけで、周囲の状況に気づけるようになってきましたね!
カイゴさん
チームでの連携もスムーズになった気がします!
うめ
観察力や発言力が身につくと、他のスタッフからの信頼もアップしますよ!
うめ
今回の話をまとめると、新人介護職が意識すべきポイントは以下の4つです!
カイゴさん
よーし、明日からも利用者さんの小さな変化を見逃さないように頑張ってみます!
小さな気づきを大切にし、視野を広く持って行動すれば、利用者さんの変化を見逃すことなく、安全で安心な介護を提供できます。 一つずつ意識して、確実なケアにつなげていきましょう。
うめ
次回は「仕事を効率化するコツ」を紹介!新人介護職の皆さん、次の更新もお見逃しなく!
カイゴさん
次回も必ずチェックします!