専門家「肥満は生活習慣だけが原因ではない」一方、患者の9割が「自己責任」 偏見が阻害要因に?
田辺三菱製薬(大阪府大阪市)と日本イーライリリー(兵庫県神戸市)は2月27日、肥満症患者、医師、および一般生活者を対象に肥満に対する意識調査を実施し、一般生活者の7割、肥満症患者の9割近くが「肥満は自己責任」と考えていることが判明したと発表した。
肥満症は、個人の生活習慣だけでなく、遺伝などがさまざまな複合的な要因が組み合わさって起きるとされ、社会の中に肥満を「自己責任」とするオベシティ・スティグマ(肥満に対する偏見)が存在していることが明らかになった。
肥満患者、3人に2人が「100%本人の責任」と考える
「肥満の責任の所在について、「100%本人の責任」と「本人の責任が大きい」を合わせると、患者87%、医師64%、一般生活者70%が肥満は「本人の責任」と考えていた。
患者の約3人に2人(63%)は、肥満は「100%本人の責任」と回答しており、医師の6%、一般生活者の23%と比べて高い結果となった。
肥満症患者や一般生活者だけでなく、医師を含めた社会全般にオベシティ・スティグマが存在しており、特に肥満症患者は9割が「肥満は自己責任」と考えるなど、肥満症患者が持つ強い自己責任意識(セルフ・スティグマ)は、一般生活者のスティグマよりも大きかった。
科学的根拠があっても「自分の努力だけで解決が難しい」に「同意」しないは4割に
日本肥満学会の肥満症ガイドラインによると、肥満に至る要因は、個人の生活習慣だけではなく、遺伝や環境、身体的、心理的、また社会的な要因などが複合的に組み合わさっており、自分の努力だけでは解決が難しいとされている。
ただ、肥満や肥満症は複数の複合要因で起きるという前提でも、「自分の努力だけでは解決が難しい」ということに「同意しない」人(あまり同意しない+同意しないの合計)は、肥満症患者で34%、一般生活者は41%に上った。
医師の9割近くが肥満は「治療が必要」
肥満症治療に対する見解については、ほかの病気と同等またはそれ以上に「治療が必要」と回答した患者は78%、医師が87%、一般生活者が69%だった。
保険診療で肥満症治療が積極的に行われることについて、一般生活者の約半数が「好ましいと思わない」または「どちらともいえない」と回答するなど、抵抗感が垣間見えた。
なお、当メディアでは、大正製薬(東京都豊島区)が実施した調査を紹介し、健康診断の結果「メタボ(あるいはメタボ予備群)」と判定された人の約3人に1人が、対策を「何もしない」と回答(34.7%)したことを紹介した。
大正製薬では、メタボ解消には生活習慣改善が大切な取り組みとなるものの、生活習慣の改善を支援する特定保健指導の実施率が30%に満たない(目標は60%)ため、効果が限定的となっていると指摘している。
田辺三菱製薬の発表の詳細は、同社の公式プレスリリースで確認できる。