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2024年の金の相場はどう動いた?価格を左右するポイントを振り返り

mymo

【画像出典元】「Billion Photos/Shutterstock.com」

2024年8月、「令和のブラックマンデー」と称される株式相場の大暴落が発生しました。日経平均が終値で前日比△4451円となり、過去最高の下げ幅を記録しています。アメリカの相場冷え込みに加え、日本銀行(日銀)が政策金利を上昇させたことが背景と見られています。

運用する資産には様々な特徴があります。一般的に株が下落した時「資産の逃げ処」として重宝されるのが貴金属です。特に貴金属の代表である金は、戦争リスクや金融政策、災害リスクの懸念が高まるたびに上昇し、「有事の金」とされてきました。2024年秋現在、世界中で様々なリスクが高まっています。ただ、有事の金に往年の力強さはありません。金の価格はどう動いたのか振り返ってみましょう。

インゴットの価格上昇の動き

金の最新チャートを見る前に、まず「インゴット」という言葉を理解しましょう。貴金属界隈で「今日の金はいくらですか?」と聞かれた時、一般的には「今日のインゴットはいくらですか?」という意味で使用します。

日本語でインゴットは金塊(金の場合)と称される場合もあれば、「地金」と呼ばれるケースもあります。純度の高い貴金属を定型のケースに流し込み、保存しやすくしたものです。印象としては若い世代や専門業者はインゴット、一定の年齢以上の方々は地金という言葉を使います。また金は「動産」として所得税など各種税金の対象ですが、その場合は地金という言葉を使います。

では金のインゴットのチャートを見てみましょう。

引用:なんぼや

2000年から右肩上がりで上昇を続けている金は、2020年前後から上昇幅を上げ、2024年4月には一時期、インゴット1万4000円台に迫りました。この背景には、金価格を左右する複数のポイントがあります。

2024年の金価格を左右した2つのポイント

ポイントの根拠として、2024年に特化した金価格のチャートを見ていきましょう。タイムリーな出来事の際に、金の価格がミクロでどのように動いているのかを把握することができます。

引用:なんぼや

1.戦争リスク

「有事の金」という言葉通り、戦争リスクは金価格に大きく関わります。ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、イスラエルとイランの緊張も大きな変動要素です。

2024年4月にイスラエルは米欧や中東諸国からの自制要請を無視し、イラン空軍基地などを狙って報復攻撃を行ったと世界中で報じられました。この時にイスラエルが攻撃した事実を認めなかったことで、貴金属へ資金逃避される流れが強まり、金相場は大きく上昇しました。

しかし翌日、イランはイスラエルに報復攻撃を行わない方針を発表し、事態は沈静化に動きます。これにより中東情勢への過度な緊張が緩和される見通しを受け、金は大幅に売られました。

2.アメリカなど各国の利上げ・利下げ

金の値動きは各国の政策金利にも大きく左右されます。特にアメリカは世界最大の経済国です。アメリカの中央銀行であるFRB(アメリカ連邦制度理事会)が利下げを行うと金は売られます。逆に利上げが示唆されると、金利のつかない資産である金は再評価され、大きく買われます。

FRBが金利政策を決めるのは消費者物価指数(CPI)などの経済統計の動きです。統計や世界情勢を受け、金相場は「利下げが遠のいたか、近づいたか」を判断し、金の売買をします。2024年現在FRBを率いるパウエル議長の発言は、大きく注目されています。

2024年の金の相場価格は既にリスクを織り込み済み?

【画像出典元】「stock.adobe.com/Lemonsoup14」

これらの戦争リスクと金融政策リスクですが、「既に織り込み済みではないか」という指摘もあります。織り込み済みならば、今後金利が動いても金価格に大きな動きはないはずです。

2024年9月にアメリカは利下げを予定しています。ただ数カ月前から利下げは行われると確実視され、既に0.5%引き下げという具体的な数字まで出てきているため、織り込み済みの公算は強いでしょう。

日本に関しては2024年内に再度利上げをする可能性はありますが、令和のブラックマンデーを受け日銀は慎重になっているという意見が優勢です。賃金統計など景気動向を踏まえた上で、今後の方針が決まっていくことでしょう。

一方、戦争リスクはどうでしょうか。ロシアとウクライナの戦争、イスラエルによるガザ侵攻を発端とした中東不安も、長期化の様相を示してきました。このまま戦況が硬直化するならば、有事の金が買われ続ける可能性はさほど高くないと考えられます。

ただ戦争局面においてどちらかの国に勝敗がつく場合は、金価格にとっても変動要因になります。また新たな戦争リスクが生じることになれば、金は大きく買われることになるでしょう。利上げ・利下げなどの金融政策に比べれば、変動要因としては高いものと考えられます。

上に記載した2024年のチャートを見ても、右肩上がりの勢いは抑制され、価格が大きく上下することも増えています。金の特徴のひとつに値動き幅が小さい(ボラティリティが小さい)という点があるのですが、2024年4月以降2000円の幅で上下していることは事実です。

大規模購入の前に様子を見たいタイミング

【画像出典元】「stock.adobe.com/Lerbank-bbk22」

ここまでの分析を踏まえると、このタイミングで金を大規模に購入するのは個人的にはお勧めしません。2024年春から続く停滞感が、数年続く可能性も十分にあるためです。目安としては資産ポートフォリオの10~20%で金を所有するのを上限として、それ以上は他の資産への差し替えを推奨します。この場合の金とはインゴットのほか、金まわりの個別株や投資信託、ETF(上場投資信託)などです。

購入して暫く放っておく場合や、少額で積立をする場合は、そもそも短期間でのボラティリティなのであまり関係ありません。長期的に見れば上がる可能性が高い資産という評価は変わらないものです。ただ、(現在のインゴット1万2000円が)これから2万円、3万円になるというイメージは、あまり持てないのではないでしょうか。

一般的に投資は、世の中の大多数が「買いだ!急げ!」となった時には既に天井が訪れており、最高値ですらある、という格言も昔から伝わっています。自分の資産の中で金がどのような位置づけなのかを冷静に分析し、売買のタイミングの参考としましょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

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