フランシスコ教皇のコンクラーベに着想を得たという映画『教皇選挙』を観た感想 → 枢機卿だらけのダンガンロンパ
全世界に13億人以上の信徒がいるキリスト教最大の教派カトリック教会。その頂点であるローマ教皇・フランシスコ教皇が2025年4月21日、88歳で亡くなったことが報じられている。かつてロックアルバムをリリースしたこともあるフランシスコ教皇。バンドマンである私(中澤)にとっては比較的身近に感じるところがある教皇であった。
そんなフランシスコ教皇が選出されたコンクラーベにインスピレーションを受けた映画が、現在日本で公開されている。その名も『教皇選挙』。これ、気になってた! というわけで観に行ってみました。
・公式Xによると
3月20日から日本公開されている本映画。そのX公式アカウント(@CCLV_movie)が4月21日に哀悼の意を表したのが以下の投稿だ。
「フランシスコ教皇が逝去されました。「『#教皇選挙』興収ランキング5週連続TOP10入り」と投稿準備をしていた矢先でした。
本作の原作の構想が生まれたのは、フランシスコ教皇が選ばれた2013年のコンクラーベに関するTV報道を原作者ロバート・ハリスが見たときだったそうです。
原作・映画はフィクションですが、面影を探し、重ねてしまいます。謹んでご冥福をお祈りいたします。」
・コンクラーベとは
教皇が空位になった際、枢機卿による投票で新たに選出される。「コンクラーベ」とはその選挙のこと。ちなみに、NHKによると、コンクラーベは通常教皇が亡くなってから15日から20日後に行われるという。映画公開中にリアルでもコンクラーベが開催されるとは原作者のロバート・ハリス氏もビックリだろう。
ただ、私が本映画を気になっていたのは、そんなリアルの状況とは関係なくて、どちらかと言うとシンプルにクオリティーが高そうだったからだ。なにせ、アカデミー賞8部門ノミネートな上、脚色賞を受賞しているのである。
・ストーリー
おまけに、キャッチフレーズは「これは選挙か、戦争か。」だ。ストーリーは次の通り。閉ざされたシスティーナ礼拝堂で行われる秘密の投票。次期ローマ教皇をめぐる極上のミステリーが、その禁を解く。
──門外不出の場所を選んだその舞台からすでに気になる。だが、最も気になるのはミステリーという言葉。コンクラーベで一体何が起こると言うんだ。
・正直レビュー
フィクションとは言え、コンクラーベで殺人事件とか起きようものならファミコンのクソゲーでも見てるみたいなテンションになりそうだ。教皇が実は殺されてて、その犯人が枢機卿の中にいる感じだったらどうしよう。映画ド素人である私からすると「ミステリー=殺人事件」だったのでそう思ったんだけど……
実際、観てみたところ、このミステリーに惹きつけられまくった。アカデミー賞にノミネートされているくらいなので、演技などでの没入度の高さは言うまでもないけれど、やっぱりどれかと言えば脚本が素晴らしいと思う。
・枢機卿だらけの『ダンガンロンパ』
そのミステリーの方向性は私がパッと想像したものとは全然違っていて、何回も繰り返し投票が行われるというコンクラーベの性質をうまく利用したものだった。大きな謎を追うというのではなく、投票ごとに真実が明らかになって流れが変わるストーリー展開が秀逸なのである。
例えるなら、枢機卿だらけの『ダンガンロンパ』だ。殺人事件なしで、よくぞここまで密室デスゲーム感を作り出したものだ。
色んな角度で注目を集める本作だが、観に行ってみるとシンプルに作品力に没頭させられた。アカデミー賞みたいな賞レースの受賞作って「あっちの方が良くなかった?」みたいに感じることが多いけど、本作を見終わった後に感じたのは覇王色。エンドロールでこう思わずにはいられなかった。「これは確かに脚色賞だ」と。
というわけで、ストーリー重視の人には刺さりそうな本作。軽いノリの映画に飽き飽きしている人はゴールデンウィークに重厚なるミステリーを紐解いてみるのも良いかもしれない。
参考リンク:教皇選挙、NHK
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
場面写真:(C) 2024 Conclave Distribution, LLC.