戦後日本を代表するアーティスト、中西夏之の回顧展が六本木で開催中
六本木の「スカイ ピラミデ(SCAI PIRAMIDE)」で、戦後日本を代表するアーティストの一人、中西夏之(1934〜2016年)の展覧会「中西夏之:1962〜2011」が2024年6月22日(土)から9月14日(土)まで開催中だ。2016年に惜しくも逝去した中西の、半世紀にわたる足跡を振り返る回顧展という位置付けだ。
中西は、高松次郎、赤瀬川原平と1963年に結成した「ハイ・レッドセンター」としての活動や、土方巽(ひじかた・たつみ)作品での舞台装置など、特定のジャンルにとどまらない多様なキャリアを展開してきた。2017年の個展以来のまとまった展覧会となる本展では、1960年代の著名な「コンパクト・オブジェ」から始まり、絵画と鑑賞者を包摂する空間構造を考察した1980年代の代表的なシリーズ「弓形」や「ℓ字型」、2000年代以降のペインティングまで、未発表作品を含む約10点を展示する。
本展に際して、多摩美術大学教授の光田ゆりは、中西のことを「連作のかたちで制作・発表してきた作家」と評している。その連作の在り方は「ひとつの主旋律がフーガのように反復、変奏されつつあみ出される流れに」乗ったものであり、「それぞれのカンバスに新しく実験を加え展開していった」という。
著名な作家の場合、その名を高めることになったいくつかの作品にばかり目を向けがちだ。例えば、中西は山手線でのハプニングから始まった「コンパクト・オブジェ」や、ハイ・レッドセンターとしての活動が非常によく知られている。しかし、こうした若い時期の著名な作品だけではなく、連作という視点で中西の活動を眺めてみるのも面白い。
光田いわく、その作品はモチーフを明するタイトルではなく、「絵と向かい合う自分は、地上のどこに位置を持つか」、「左辺右辺からせめぎあう絵の中央とは」といった、中西以前には問われることがなかった問いが動機になっているという。せっかくの生涯にわたる活動を概観できる機会。複数の作品を比較しながら、中西がどのような問いを作品に投げかけたのかを考えてみてもいいかもしれない。
8月10日(土)〜18日(日)は夏期休暇となる。展示の詳細については、公式ウェブサイトを参照してほしい。