殺し屋「引退して庭いじりしたい」過激派「させねーよ!」72歳の名優が再びキレる『プロフェッショナル』
リーアム・ニーソンとイーストウッド
リーアム・ニーソン、72歳。これまで100作を超える映画に出演し、『シンドラーのリスト』(1993年)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた、言わずもがなの名優だ。2008年の大ヒット作『96時間』以降はアクションにも多く主演し、若手肉体派とは一味違う燻銀の魅力を見せつけてきた。
そんなリーアムの主演作『プロフェッショナル』が4月11日(金)より全国公開となる。自身のルーツである北アイルランドを舞台に、引退を決意した老殺し屋が憎しみと闘いの連鎖に再び巻き込まれていく姿を描く。監督はクリント・イーストウッド作品のプロデューサーを長年務め、2021年の『マークスマン』でもリーアムとタッグを組んだロバート・ロレンツだ。
眠れる殺し屋を武装過激派が呼び覚ます
1970年代の北アイルランド。血塗られた過去を捨て去りたいと願う暗殺者フィンバー・マーフィーは正体を隠し、海辺の田舎町で静かに生きていた。
だが引退を決意した矢先、凄惨な爆破事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派が町に逃げ込んでくる。さらに、ある出来事が彼の怒りに火をつけ、殺るか殺られるかの壮絶な戦いが幕を開ける。
避けられぬ宿命に導かれるように、フィンバーは過去に決着をつけるため、最後の死闘に身を投じるが……。
戦争が生んだアウトローと殺しの連鎖
本作でリーアムが演じる退役軍人のフィンバーは暗殺業から足を洗おうとする男だが、ロレンツ監督のキャリアもあってかイーストウッドが元アウトローの農夫を演じた『許されざる者』(1992年)を彷彿させる。思えば前タッグ作『マークスマン』も主人公を脳内でイーストウッドに置き換えても違和感のない物語だった。そしてロレンツ監督は今回、70年代アイルランドを舞台に西部劇を撮ろうとしたようだ。
リーアムはこれまでにも、アイルランド独立運動を牽引した男の伝記映画『マイケル・コリンズ』(1996年)や、アイルランド右派民兵組織の男の後悔とケジメを描いた『レクイエム』(2009年)など、祖国にまつわる作品に数多く出演してきた。“2人きりの賭け射的”に興じる警官ビンセントを演じたキアラン・ハインズも同郷の友人だ。
そんな本作の主人公フィンバーは、ある家族の内情に首を突っ込んだことをきっかけにIRAメンバーとガチ揉めし、再び闇の世界に引き戻される。フィンバーは稼業への矜持は強いがそれゆえの精神的な脆さもあり、色々と完璧とは言い難いところにスリルが生じる。箱庭的な田舎町に染み込んだ多くの血が、歯車の噛み違いによって一気に逆流・噴出するような、じっとりとした恐ろしさが秀逸だ。
いつもの“無双”を封印したリーアムだけでなく、粗っぽいが極悪人とは言えないIRAメンバーを演じたケリー・コンドンの存在感も忘れがたい。彼女もアイルランド出身で、『スリー・ビルボード』(2016年)や『イニシェリン島の精霊』(2022年)といったオスカー受賞~ノミネート作への出演や、MCU『アベンジャーズ』シリーズで人工知能<フライデー>の声優としても知られる実力派だ。
きれいさっぱり精算することはできない過去を抱えながらも”普通の日常”を求めるフィンバー。そんな彼の独りよがりな懺悔を周囲は慮ってはくれない。しかし、異なる信念を持つ者同士がごく私的ないざこざをきっかけに最悪の形で衝突する姿からは、それぞれの“選んだもの”の違いも感じ取れる。
『プロフェッショナル』は4月11日(金)より全国公開