声優×新喜劇が仕掛ける“笑劇”の化学反応──6月29日に東京初進出となる『ボイコメ』の舞台裏を川畑泰史さん&天津飯大郎さんが語る【インタビュー】
声優×吉本新喜劇という異色の組み合わせで大阪を中心に開催してきた「朗読劇ボイコメ」。朗読劇とトークショーの2本立てで行われる本イベントは、ラジオやイベントなどで見られない声優陣の一面が垣間見えることもあり好評を博しています。
そんな「ボイコメ」が、2025年6月29日(日)、アニメイト池袋本店B2Fのアニメイトシアターにて特別講演「朗読劇ボイコメ~声優×吉本新喜劇in東京~」として東京で初開催!
小野坂昌也さん、置鮎龍太郎さん、上田瞳さんら声優陣を迎えつつ、新喜劇チームは脚本も担当する川畑泰史さんと、新喜劇の同僚かつ自他ともに認めるアニメ・声優ファンの岡田直子さん、そして声優やアニメイベントのMCや企画イベントを開催する天津飯大郎さんも初参加!
小野坂さん、置鮎さん、川畑さん、岡田さんという「ボイコメ」ベストメンバーと、そこに加わる上田さんと飯大郎さんがどんな朗読劇を見せてくれるのか、注目が集まります!
そんな開催を目前に控えた本公演について、川畑さんと飯大郎さんへのインタビューを実施。川畑さんの“イケメン化構想”に、飯大郎さんの“ラブロマンス要求”まで!?
【写真】東京初進出の声優×吉本新喜劇「ボイコメ」を川畑泰史×天津飯大郎が語る【インタビュー】
「ボイコメ」をただの朗読劇と思うなかれ! 動きあり、アドリブしまくりの奇想天外のイベント!
――「朗読劇ボイコメ~声優×吉本新喜劇」は現在vol.4まで開催されていますが、振り返った感想と印象的だった回を教えてください。
脚本・出演 川畑泰史さん(以下、川畑):まず声優さんのスキルの高さに驚きました。朗読劇は慣れてらっしゃると思いますが、「ボイコメ」は台本を読むだけではなく、体を結構動かすことが多いし、最初の頃なんて朗読劇のていになっていなくて。
うちのメンバーにも「座ってやるんやで」と口をすっぱくして説明したのに突然動き出すし、池乃めだかさんなんか「手がカサカサでページめくれないから覚えるわ」とか言い出すし(笑)。
そんな状態からスタートしましたが、朗読が上手なのはもちろん、お笑いへの対応力などスキルの高さが素晴らしくてビックリしました。
――「vol.2」の公演情報の川畑さんコメントに「前日稽古のみという、 日本一稽古量の少ない新喜劇よりさらに少ない 、 当日稽古だけと言う有り難さ~!(笑)」とありました。
川畑:「ボイコメ」の稽古は公演当日の本番前の1回だけなので、小野坂(昌也)さんにはいつも叱られています(笑)。
――以前、岡田直子さんにインタビューした時におっしゃっていました。
川畑:その小野坂さんと置鮎龍太郎さん、白石涼子さんに出演いただいた「ボイコメ」vol.2の2日目が一番印象深いです。「ボイコメ」は毎回2日間やらせていただいています。初日と2日目でメンバーが変わるので、お話は同じでも公演ごとに出演する声優さん用のネタや役名を変えているんですけど、この時は違う台本を持って舞台に出てしまって。
それでも何とか頑張ってやっていましたが、やっぱり合わないところが出てきたので、正直に言ったところ袖から台本がスライディングで飛んできて。その間の時間を置鮎さんがお芝居やストーリーを崩さず、僕をイジってくれたんです。本編後のトークコーナーでは小野坂さんもイジってくださいました。
――岡田直子さんは「ボイコメ」を見学しに行ったことがきっかけで出演者になったシンデレラガールですが、その岡田さんがオタクとして尊敬する先輩に天津飯大郎さんを挙げていました。飯大郎は「ボイコメ」をどのように思われていたのでしょうか?
天津飯大郎さん(以下、天津):「ボイコメ」に出演された声優さんは、僕がレギュラーでご一緒している本渡 楓さん(ラジオ番組『本渡 楓と天津飯大郎の「本渡上陸作戦」』)や石川界人さんなど交流がある方が多くて、「ボイコメ」に出演してきましたとお知らせしてくれるんです。その後、みんな必ず「飯大郎さんはどうして出ないんですか?」と聞かれて(笑)。もちろん出たいなとはずっと思っていました。
川畑:ありがとうございます。
天津:アニメや声優関連と言っても僕がやってきたこととカテゴリーが違うので、「僕に何ができるんだろう?」と今でも思っています。
――そんな「ボイコメ」にとうとう飯大郎さんが降臨します。
川畑:去年イベントでご一緒した時に「ボイコメっていうのをやっているんやけど」と話して、いろいろアドバイスをもらったし、「困った時はまた相談にのってな」とお願いしました。僕の横には岡田直子がいるけど、それでもどうしようもなかったら飯大郎くんが懐刀としていてくれるのは頼もしいんですけど、今回は一緒に舞台に立ってもらえて嬉しいです。
これで本物の「ボイコメ」になった気がします。
――声優博士の飯大郎さんが加わって、やっと「ボイコメ」の完成形になった、みたいな?
川畑:そうです!
天津:いやいや!(笑) でもそう言ってもらえて嬉しいです。
「ボイコメ」に取り組む川畑さんを襲った弊害に飯大郎さんも納得!?
――ここまで「ボイコメ」をやってみて、出演された声優陣からの感想やご覧になったお客さんからの反響はいかがでしたか?
川畑:仕事が終わったらみんな大人なので「楽しかった」って言うと思いますが(笑)、公演が終わってからしばらくして「楽しかった」と言っていただいたり、vol.1やvol.2に出演してくださった声優さんがご自身が出演していない「ボイコメ」のお知らせをX(旧Twitter)にも「自分が出演した時、おもしろかった」とツイートしてくださって。「本当に楽しんでもらえたんだ」と実感できて嬉しさいっぱいでした。
天津:キャリアを積んでいる役者さんだからこそ、新しい刺激を感じられるから終わった後、心地いい感覚になっているんじゃないでしょうか。あと稽古がない……。
川畑:あるよ。数少ないけど(笑)。
天津:台本から逸脱するけど、外れ過ぎないで戻すとかなかなか経験できないと思うので、声優さんにとってもすごくプラスになっているんじゃないかなと思います。
川畑:あと観に来てくださったお客さんは、最初の頃は吉本新喜劇を観たことがない人ばかりで、ほぼ声優さんのファンでした。でも十分に楽しんでいただけたようで、良い反応をいただきました。「ボイコメ」を始めたのは新喜劇と声優さんがコラボして何か新しいことをしたいという想いがありますが、裏テーマとしては吉本新喜劇を知っていただいて、新喜劇を観に来てほしいと思っていました。公演後に「新喜劇に興味が湧きました」とか「今度観に行きます」というコメントをたくさんいただいて、とても嬉しいです。
――飯大郎さんから見て、ここまでの「ボイコメ」出演声優のラインナップについてどう思われますか?
天津:どの回も間違いない声優さんばかりなので、キャスティングされている方の目利きがいいんだろうなと。一度聞きたいと思っていたんですけど、誰がキャスティングしているんですか?
川畑:誰が決めているんだろう? もちろん関西出身の方なら新喜劇をわかっていると思うけど、関東などあまり知らない方は我々が台本なしで芝居しているイメージがあるらしく、ちょっと二の足を踏まれる方もいるという話は聞いたことがあります。
――岡田さんは「吉本の社員さんにすごいアニメ好きの方がいるので、その方が考えているのかもしれません」とおっしゃっていましたが……。
川畑:そういえば、そういう人がいますね。実際に社員さんの中でも「ボイコメ」を楽しみにされている人がいますし。
天津:僕らお笑い芸人もアニメを観たり、話題にするのも当たり前で、今は若い人ほどそういう傾向があるかもしれません。
川畑:最初の方はキャスティングが決まったら、その声優さんの出演作を可能な限りチェックしたこともありました。例えば置鮎さんと本渡さんが出ている『パリピ孔明』とか。でも観てしまうとそのキャラの声で「ボイコメ」のセリフを聴きたくなっちゃって。権利関係もあるので、何も知らないまま台本を書いて、わからないことがあったら周りの方に教えてもらうくらいがいいのかなと思っています。それとアニメはめちゃめちゃおもしろいですね。
天津:そうなんです!
川畑:新喜劇の本番の前日稽古が終わった後は、セリフを覚えないといけないし、ネタもいっぱい考えないといけないという一番大事な時間なんですが、アニメがおもろすぎて長時間観てしまって、「ヤバ!」と顔が真っ青になったこともありました。
天津:おもしろいアニメがいっぱいありますからね。
――今回の特別公演には小野坂さんと置鮎さんというおなじみのお二方に『ウマ娘』などで人気の上田 瞳さんが初参加しますね。
川畑:小野坂さんと置鮎さんがいてくださると本当に心強いです。上田さんは僕と同じ京都出身で、関西のノリもわかってらっしゃる方なので、何の心配もしていません。ただ僕が東京で受け入れられるのか、それだけが今心配です(笑)。
天津:絶対、大丈夫ですよ!
川畑:そこに岡田直子ちゃんと天津飯大郎くんという強力なメンバーもそろっているので、不安要素は自分だけです。
天津:いやいや(笑)、僕は信頼しかありませんから。今回も素晴らしいキャスト陣がそろえたなという驚きと青二プロダクションとどうパイプを繋げたのかという疑問がありますし、これ以上、「ボイコメ」が人気になったら、偉い方からご家族や声優志望の方まで出してくれと言われるんじゃないかと心配しています(笑)。
川畑:そういうのをよく聞くよね。もちろん「ボイコメ」に出演してくださる皆さんは実力者ばかりですから。
――飯大郎さんは小野坂さん、置鮎さん、上田さんと面識はありますか?
天津:以前、一緒にご一緒した方もいるし、はじめましての方もいますが、過去に関西に住んでいた方たちで、お笑いが好きだったり、新喜劇にリスペクトがあるからこそ、めちゃめちゃ良いコラボだと思うし、想像を超える化学反応が起きるのではないかなと期待しています。
まだ「ボイコメ」は直接観たことがないですけど、岡田直子が企画したアクロスエンタテインメントさんとのコラボ新喜劇(2025年1月公演の『とある神様に異世界転送させられた新喜劇座員が、オタク知識(スキル)を振りかざし無双するみたいです。』)を観させていただきましたが、お互いのリスペクトがあって、好きだから成立する舞台だなと伝わってきました。だから今回もそうなるんだろうなと思っています。
今回の朗読劇のテーマは「刑事のバディもの」!? ラブロマンスもあるってばよ
――川畑さんが台本を書く上で難しさを感じたことや苦戦したことはありますか?
川畑:初回は手探りでしたが、声優さんのスキルの高さがわかったので、今はナチュラルに書かせていただいています。声優の皆さんは良い人ばかりなのでやりやすいですね。新喜劇みたいに「出番が少ない」とか「多すぎる」とか文句を言ってくる人がいないので。
天津:そんなこと言っていいんですか?(笑)
――ちなみに今回の台本の進行状況はいかがですか?
川畑:僕の手元からはもう離れました。
――ちょっとどんなお話なのか教えてもらってもよろしいでしょうか?
川畑:先日の記者会見で、何本か構想をお話ししましたが、小野坂さんが「バディもの!? 刑事ものっちゅうことか?」と、めちゃくちゃ喰いついてきたので、急遽、小野坂さんとバディの刑事ものにしました(笑)。
天津:すごい!? そうなんですね! 今、初めて聞きました(笑)。むしろ今日の取材で教えてもらえると思っていなかったので、早く聞けてラッキーです。
――なるほど、飯大郎さんも当日に台本初見でも大丈夫だと。
天津:そんなこと言ってません! もちろん台本は早いほうがいいけど!「郷に入っては郷に従え」ということわざもあるので、僕はできる限りのことをやるだけです。僕はハッカー役じゃないかなと思っています。
――確かにいそう!
天津:それは失礼でしょ!
――すみません(笑)。岡田さんは男性声優とのラブロマンスを望まれる傾向があるようですが、今回はあるのでしょうか?
川畑:そんな要素も多少はあります。でもそこがメインになると小野坂さんを裏切ることになってしまうので(笑)。
――本番を迎える前に顔合わせはされましたか?
川畑:いつもは顔合わせをさせていただくんですけど、今回は記者会見の時に小野坂さんと上田さんとお話しさせていただきました。置鮎さんは前回も出演していただいていますし。飯大郎くんは「みんな、知っているし、いいやろ」ということで顔合わせなしで。
天津:吉本ですね〜
川畑:実際に飯大郎くんとお会いするのは当日になります。
――既に台本は上がっているようですが、まだ間に合うかもしれないので飯大郎さんから内容に関して要望はありますか?
天津:やっぱり上田さんと僕のラブロマンスですね。
川畑:入れてありますよ。
天津:本当ですか? やったぜ! でも蓋を開けたら岡田とのラブロマンスというのはやめてください。誰も得しないですから。
(全員爆笑)
――まとめると刑事のバディもので、ラブロマンスがあるコメディということですね。
川畑:そうですね。どこまでをラブロマンスと言うのかはわかりませんけど、恋愛ものにもなっています。
トークショーでは飯大郎さんも遠慮してしまうような、声優への鋭い質問やムチャぶりに期待!
――朗読劇の後のトークショーも毎回好評ですね。
川畑:僕らもそうですが、若い時はちょっとトガったことを言ったり、かわいく振舞ったりしがちじゃないですか?
天津:(大きくうなずきながら)あるある。
川畑:出演した声優さんの黒歴史を探し出して、「これはどういうつもりで言ったんですか?」とツッコもうと思っています。
天津:それは恥ずかしいですね。
――いつもは岡田さんが出演声優のデータバンクとして活躍されていますが、今回は飯大郎さんもいますからね。
川畑:そうなんです! かなり強烈な取り調べになることでしょう。
天津:いやいや(笑)。でもなんぼでも考えていきますよ。
川畑:よろしくお願いします。
――改めて今回の東京公演の注目ポイントや見どころのご紹介をお願いします。
川畑:「ボイコメ」はいつもは手探り状態で、リモートで顔合わせして当日「はじめまして」というスタートですが、今回は小野坂さんと置鮎さんは過去にも出演していただいて、いろいろイジっていただいて。上田さんとも、出身が一緒なので打ち解けてしゃべっていただきましたし、飯大郎くんも以前から知っているし、岡田は新喜劇のメンバーなので、今までよりもう一歩踏み込んだ「ボイコメ」を観ていただけるんじゃないかなと思います。
まあ我々が声優さんに失礼なことを言ったり、逆の場合もあったり、割とギリギリを攻めた内容になるんじゃないかなと(笑)。
天津:僕も声優さんを呼んだライブをプロデュースしていることもあって、普段からお仕事でお付き合いがある以上は攻められないんです。攻めようと思ってもつい遠慮して行けない部分があるので……マネージャーさんの顔が浮かんだりして(笑)。
――僕もインタビューする時、つい安全策を取りがちなので期待しているんです。
川畑:(笑)。でも皆さんが聞けないことだったり、逆に岡田がいるので、ファンが聞きたいことをトークショーでは話せればいいなと思っています。
天津:僕では作れない踏み込んだものが「ボイコメ」にはあると思うので、僕自身もプロデューサーとして勉強するつもりですし、演者としても楽しみです。
川畑:ありがとうございます。
――気が早いのですが、今後「ボイコメ」でやってみたいことを教えてください。
川畑:今回は初めて東京で、しかもアニメファンの聖地と言われているアニメイト池袋本店のアニメイトシアターという劇場でやらせていただけるのが楽しみです。今は1年に3回のペースでやらせていただいていますが、これまではすべて大阪の開催だったので、これからは毎月開催して、半分は東京でやれたらいいなと考えています。「ボイコメ」を大阪と東京を起点にどんどん広げていきつつ、吉本新喜劇もたくさんのアニメ、声優ファンの方にも楽しんでもらえたらいいなと思っています。
――アニメイトの店内を使った新喜劇も観てみたいものです。声優だけでなく、店員さんにも出演してもらったりして。
川畑:いいですね。
天津:それはおもしろいかも。
川畑:次回の東京公演はそれで行きましょう!
天津:早すぎますって!
川畑:もちろん飯大郎くんと岡田ちゃんのエゲつない協力と「ボイコメ」好きなファンの方の声が必要ですけど。偉い方がこの記事を読んでいたら前向きにご検討ください。
天津:男性声優さんが多いと女性のお客さんが多いと思うので、個人的にはこの世で川畑さんが一番イケメンという世界観でやってほしいです。そしてお客さんにも「キャー!」という声で参加していただいたら楽しそうかなと。
川畑:おもしろそう(笑)。
天津:そして川畑さんがイケボで「俺の横に来いよ」と言ってみたり。もし実現したらそれを肴に1年くらいおいしいお酒が飲めると思います。
――「ボイコメ」天津さんプロデュース公演や岡田さんプロデュース公演も観てみたいです。脚本はもちろん川畑さんで。
川畑:まあそれはともかく、こんな「ボイコメ」やってほしいというアイデアがあったらXなどのSNSでつぶやいてください。
――「ボイコメ」ファンの方とまだ観たことがない方へメッセージをお願いします。
天津:僕は初めての参戦ですが、これまで「ボイコメ」に出演された声優さんからは「おもしろかった。また出たい」と撮影や収録じゃない場所で聞いていたので、僕もすごく楽しみです。「新喜劇×声優」のコンテンツのパワーをぜひ皆さんにも体感していただきたいです。そして川畑さん、僕の演技の出来は置いておいていただいて、ひとつお手柔らかに。
川畑:朗読劇というと、薄暗い中でピンスポットライトが当たっている状況で本を読んでいるイメージがあって、ハードルが高いかもしれないし、そして東京の方には新喜劇は大阪、関西のものと思われるかもしれません。
でも朗読劇と言いながら言うほど朗読劇ではないですし、新喜劇とコラボと言いながらも100と言っていいくらいメインは声優さんです。皆さんの目の前のハードルをすべて取っ払っているので、気楽に観に来ていただけたら。劇場でお待ちしています。一緒に楽しみましょう!