OSK日本歌劇団『レビュー夏のおどり』で未来へ羽ばたく新トップスター・翼和希 取材会の模様をレポート
OSK日本歌劇団の新トップスター・翼和希の東京でのお披露目公演『レビュー夏のおどり』が2025年8月22日(金)から新橋演舞場で上演される。翼と翼の同期生である娘役トップスター・千咲えみが登壇して行われた取材会で語られた内容をお届けする。
和洋二部構成で緩急豊かなレビュー
今年6月、大阪松竹座で上演された『レビュー春の踊り』でトップスターとしての第一歩を踏み出した翼は「大阪で無事に千穐楽を迎えることができ、ホッとした気持ちと達成感でいっぱいです。公演中、場面一つひとつへの思いがどんどん深まり作品が成長していくのを実感することができました。東京公演ではさらに磨きをかけてまた新たな一歩を踏み出したいと思います」と決意表明。
傍らで嬉しそうに微笑む千咲は「新橋演舞場での『夏のおどり』は私たちにとって特別な公演。同期で自分にとって大切な存在である翼和希のトップスターお披露目を全力で盛り上げて参りたいと思います」と挨拶した。
第一部『翔~Fly High~』、第二部『The Legendary!』の二部構成によるレビューは、前半が花柳寿楽構成・演出・振付による日舞、後半が中村一徳作・演出の洋舞となっている。お気に入りの場面について問われると翼は心から困った様子。言葉にならない声を発しては「絞れない~~。なんやろ?」と会場を和ませた後、次のように続けた。
「やっぱり粋でいなせな江戸から始まる”チョンパ”は外せないなと思います。第二景の『鳥』はファンタジー、三景の『風』ではみんなでいろんな和楽器に挑戦して会場一体となって盛り上がり、しっとりした『月』は平安の世界。緩急豊かでフィナーレの『翔』は(振付の)山村友五郎先生のいかにもザ・OSKレビュー! と言った感じでみんなで未来に向かって羽ばたこうという、希望に溢れていて大好きです」
結局、一部すべての景に触れることになり自身の思いも溢れんばかりの翼は「長くなりそうだから」と二部については千咲に託すことに。千咲は『鳥』についてのフォローを加えた上で後輩への愛情と優しさを示した。
「せりふも歌もなく日本舞踊の所作だけでお見せする『鳥』をご覧になった海外の方が、『意味がわかった』とおっしゃっていたという話をお聞きしました。あそこは舞台装置も素晴らしくお衣裳も豪華でとても素敵な場面となっています。洋舞ではお客様が歓声をあげてくださったところがありました。その二部で私が大好きなのは初舞台生によるラインダンスです。頭にケーキを載せてみんなとっても可愛いんです」
トップスターの原点、鳥肌の”チョンパ”
第一部の幕開きの演出について翼が語った”チョンパ”とは、真っ暗な場内が一瞬で明るくなることを指し、翼も千咲も客席でその瞬間に出会った時の感動が忘れられないという。
翼:真っ暗で何も見えなかったのが、チョーンという柝の音でパッと明るくなり華やか世界に一気に引き込まれました。それが衝撃的で『うわぁっ!』という声が本当に出ました。こうして今、お話しているだけでも鳥肌が立つくらいです。
千咲:私も声が出ていたと思います。こんな世界があるんだ! 私もこの舞台に立ちたいと思いました。明かりが点いた時のお客様の『うわぁ』の声が嬉しくて、その瞬間に『OSKの公演にようこそ!』という気持ちになります。
翼:幕が開いた時にふわっと空気が一気に流れて来て、明かりが点いた時のお客様の反応を受け止めた劇団員のエネルギーが今度は客席に流れていく……。この感覚は生の舞台だからこそ! だと思います。
トップスターたちの原点ともいえる”チョンパ”、翼が語るようにそれは劇場で体験してこそ味わえる感動なのだ。
お互いに相手が踊るパートで好きな場面について聞いてみることにした。
翼:二部のラテンで千咲が男役を引き連れて踊る場面があるんですが、そのラストが大好きでお稽古場から目が釘付けで毎公演たまらん! と思って見ていました。可憐な、可愛らしい娘だけでなく、こうした男前な娘役はOSKならではと思います。
千咲:お客様から見えないアングルではあるのですが……。最後のご挨拶で真ん中に立つ翼を劇団員全員で見守っている時、スポットライトを浴びたその背中に感動しています。その二部のオープニング、翼のスパニッシュのダンスがすごくカッコイイのでぜひ注目していただきたいです。
同期生であり年齢も一緒、同じ時期にOSKの舞台に出会い魅せられ、同じ道を志して、共に切磋琢磨しあって来た翼と千咲の絆と信頼関係が、随所に滲み出た取材会だった。そのふたりからのメッセージで締めくくることとする。
翼:8月は絶対にものすごく暑いと思いますが、その暑さに負けない舞台を必ずお届することを約束します。新しいOSKのお披露目でございます。その一歩をぜひ見届けていただきたいです。OSKは今年103年目ですが、地に根を張って100年、200年、300年、1000年桜として満開で咲き続けられるよう劇団員一丸となって頑張って参ります。
千咲:OSKの舞台が初めての方にもずっとご覧くださっている方にも、皆様の期待を上回れるような舞台となるようお稽古を重ね、『楽しかった』『明日も頑張ろう』と思っていただけるようなステージをお届けしたいと思っています。
なお、本公演は8月22日(金)~26日(火)新橋演舞場にて上演。イープラスでは、8月25日(月)に独自席種・独自価格での貸切公演を実施。詳細は下記にて。
取材・文=清水まり