【京都観光のいま】古都の新しい魅力発信で、持続可能な観光推進へ。沿線地域に親しまれる❝嵐電❞の愛称とともに~京福電気鉄道株式会社
“嵐電(らんでん)”の愛称で親しまれ、嵐山と市街地中心部をつなぐ嵐山本線や緑豊かで有名寺院が沿線に点在する北野線。八瀬から比叡山まで壮大な自然風景を楽しめる叡山ケーブル・ロープウェイ。
京都市の東西の観光地へのアクセスを担う「京福電気鉄道株式会社」では各交通機関との乗り継ぎの円滑化や、駅のバリアフリー化などを進めており、観光の分散化にも取り組んでいます。京都市が推進する京都観光モラル事業の「持続可能な京都観光を推進する優良事業者」にも選ばれています。同社のさまざまな取り組みをご紹介します。
◇京都観光モラル事業
https://www.moral.kyokanko.or.jp/
◇持続可能な京都観光を推進する優良事業者
https://www.moral.kyokanko.or.jp/member
左 岡﨑広志さん 右 鈴木浩幸さん
“嵐電”の愛称を受け継ぎ、沿線のためにできることを
画像提供:京福電気鉄道株式会社
新幹線や飛行機など広域移動を支える「一次交通」とは異なり、嵐電は交通拠点と観光地を結び、生活や通勤・通学の足となる「二次交通」として地域に根差しています。
京都のまちなかを走る京紫色が特徴の車両、京福電気鉄道の嵐山線(嵐山本線と北野線)は地域の交通として欠かせない存在です。地元住民や観光客の足となっており古くから親しまれてきました。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
京福電気鉄道の嵐山本線は、明治43年(1910)に嵐山(らんざん)電車軌道として開業しました。その後、大正7年(1918)に京都電燈が吸収合併し、昭和17年(1942)に京福電気鉄道が設立され事業を継承しました。北野線は大正14年(1925)に京都電燈が敷設し、嵐山本線とともに京福電気鉄道が継承しました。
「地域に長年親しまれてきた『嵐電(らんでん)』の呼び名は、嵐山電車軌道に由来しており、私たちの財産です」と、広報担当の部長・鈴木浩幸さんと係長の岡﨑広志さん。『嵐電』はいま公式ニックネームという位置づけとしてその名を受け継いでいます。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
ハード・ソフト両面での安全・サービスの向上
京福電気鉄道は、嵐電と各交通機関との乗り継ぎの円滑化や駅のバリアフリー化、踏切設備の更新などに力を入れており、最近では、嵐山線の西院(さい)駅と、阪急電車京都線の西院(さいいん)駅のホームをエレベーターでつないだことによって、乗り継ぎの安全性と利便性が高まりました。
サービス介助士の教習(高齢者疑似体験)を受けるスタッフ
画像提供:京福電気鉄道株式会社
またお客様サービスにおけるバリアフリーを目指し、現場に出る社員は「サービス介助士」資格を順次取得しています。
認知症の高齢者など、社内や駅で困っている人へ対応できるように学ぶ講習には本社事務所の社員も参加するなどし、ハードとソフトの両面から安全性やサービスの質を高めているといいます。
観光の分散化と、閑散期にまちへ人を呼ぶ多彩な仕掛けづくり
インバウンド需要の高まりで、人気観光地への一極集中緩和が課題となるなか、同じく古都の交通を支える鎌倉の江ノ島電鉄と共同で「あたらしいコトみつけよう」をテーマに観光の分散化を図るPRを展開しています。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
「人気の観光地から、もう一駅、あと一歩先の見どころを紹介したい」という鈴木さんの言葉の通り、「喧騒の先の、静けさへ」というコピーのもと、京都・鹿王院舎利殿と鎌倉・円覚寺舎利殿や、京都・大覚寺大沢池と鎌倉・腰越海岸の水辺の光景を対比させたポスターを制作するなど、ビジュアルとその地にまつわる歴史や和歌などを幾重にもリンクさせた企画が注目を集めています。
観光の分散や閑散期の集客についてはいち早く取り組んでおり、2002年に着手した嵐山駅の改修もその一つ。嵐山エリアは夕刻から夜にかけて客足が伸びないという課題があったなか、駅構内店舗の営業を20時までとし、人が集える広場にベンチや、改札外の人でも利用できるトイレを設けました。当初は不安視する声もありましたが、徐々に夜の利用が増え、2004年には駅の足湯を開設したほか、2013年には京友禅のポール600本を駅構内に林立させた「キモノフォレスト」を設置、四季を通して訪れる人の目を楽しませています。こうした夜にポイントを置いた取り組みでナイトツーリズムの活性化や観光分散化に協力しています。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
また、夏休みシーズンの名物となっているのが「妖怪電車」です。沿線にある東映太秦映画村で2007年に行われた世界妖怪会議を機に企画されたもので、その後も好評の声に応え、嵐電が独自に継続することになりました。当初は職員が妖怪に扮装して乗車するなど、なかなか手のまわらないところもありましたが、妖怪をテーマに地域振興を図るグループ「百妖箱」や沿線の嵯峨美術大学など多くの人々の支援・協力があり、いまは沿線の家族連れが楽しみにする恒例イベントとして定着しています。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
地域とのつながりが生んだ「フジバカマ」の保護育成活動
京福電気鉄道では、「鉄道会社が事業を継続できるのは、沿線に活気があってこそ」という思いのもと、沿線地域の振興にも努めてきました。地域の人々と交流する「嵐電フェスタ」や、通学路に踏切が含まれている沿線の小学校を対象に交通安全教室や車庫の社会見学などを行う「嵐電教室」を開催しています。
嵐電開業100周年を機に始めた「嵐電沿線協同緑化プロジェクト」もその一つです。ほかの地域の鉄道会社の取り組みを参考にスタートしましたが、しだいに沿線住人から「うちの庭のついでに水をやっとくで」と申し出があり、その後も地域の園芸好きの方に場所を使ってもらうかたちで活動が進んでいったといいます。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
さらには沿線の緑化をきっかけに、立命館大学が取り組んでいた京都府絶滅寸前種の「フジバカマ」を保護育成する活動にも合流することになりました。学生を含むプロジェクトメンバーが力を合わせて少しずつ株を増やし、紫の花と紫の車体の取り合わせは、秋のおなじみの風景になりつつあります。
また、太秦地域の皆様がが作成された地域のマップ「てくてく太秦」の制作を引き継ぎ「太秦てくてくマップ」として発行を続けています。そのまちに住む人ならではの見どころ情報も掲載されていて、「太秦は普段着の京都を感じることができるまち。観光客の方もぜひ訪れてみてほしい」とおすすめだそうです。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
環境に配慮した新型車両を導入。まちの歴史を未来へつなぐ鉄道として
フジバカマ保護・育成の取り組みなど、沿線の緑化をはじめ、京福電気鉄道では「KES・環境マネジメントシステム・スタンダードステップ2」の認証を2006年から継続取得し、エコオフィスやごみ減量にも努めています。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
2025年2月には、新型車両「KYOTRAM」が導入されます。「小さな鉄道会社ですから、新型車両の導入は実に四半世紀ぶり」と笑顔の岡﨑さん。バリアフリーや多言語にも対応しており、従来型の車両に比較し消費電力量も削減されるなどSDGsの取り組みにもつながります。
画像提供:京福電気鉄道株式会社
沿線には見どころも多く、とくに北野線の「桜のトンネル」(鳴滝駅~宇多野駅)は春の風物詩。「実はこれは会社が植えたのではなく、一世紀前の北野線開通時に地域の人々からいただいたものなんです」という鈴木さんのお話に、地域に支えられ、地元に根ざしてきた鉄道の歩みが垣間見えます。
有名観光地だけでなく、沿線のまちのくらしや歴史、それをつなぐ交通機関も含めて京都を深く楽しんでみませんか。
■リンク
◇【京都観光モラル】優良事例集
https://www.moral.kyokanko.or.jp/case
◇京福電気鉄道株式会社ホームページ
https://www.keifuku.co.jp/
記事を書いた人:上田 ふみこ
ライター・プランナー。京都を中心に、取材・執筆、企画・編集、PRなどを手掛け、まちをかけずりまわって30年。まちかどの語り部の方々からうかがう生きた歴史を、なんとか残せないかと日々奮闘中。