セガが初任給を10%アップし33万円に 報酬・働き方改革も同時に進め、人材獲得を強化
セガ(東京都品川区)は11月12日、2026年4月入社の新卒社員から初任給を現行の30万円から33万円へ、約10%引き上げると発表した。物価上昇や人材獲得競争への対応として、報酬制度の見直しや働きやすい環境づくりを進めている。
新卒初任給は33万円に 報酬制度を柔軟化し競争力強化へ
今回の給与改定では、初任給の引き上げに加え、既存社員を対象とした基本給のベースアップも実施される。2026年4月1日より、国内の正社員の基本給を平均約10%引き上げるほか、賞与の一部を組み入れる形で、役割に応じた柔軟な報酬体系へと改定される予定だ。
セガは「Empower the Gamers 感動体験を創造し続ける」というミッションの下、エンターテインメント事業をグローバルに展開しており、その実現には多様な人材の採用と育成が不可欠だとしている。給与水準の見直しは、従業員が安心して働ける環境の提供とともに、国際的な人材競争に対応するための取り組みの一環だ。
育児・介護・副業まで支援 「ファミ+」「Job+」など多様な制度を拡充
セガは報酬面の強化と併せて、働きやすさを支える人事制度の拡充も進めている。代表的なものが、育児・介護支援の「ファミリーサポートプラス制度(ファミ+)」と、副業支援制度「Job+」だ。
ファミ+制度では、育児・介護を両立しながら働けるよう、さまざまな支援策が整備されている。たとえば、子が2歳に達するまでの育児休業、小学3年生までの短時間勤務、卵子凍結にかかる医療費の支援、出産・子育て支援金(1子あたり30万円)、育休復職支援金(20万円)など、ライフステージに応じた支援を提供している。
介護分野でも、最大93日間の介護休業、短時間勤務制度、保存有給休暇の利用、外部相談窓口の設置など、家族を支える社員への配慮が見られる。
Job+制度は、社員が業務時間外に副業に取り組むことを認める制度で、スポーツ指導や声優業、絵本制作、コンサルティングなど、多様な分野での実績がある。社員の能力開発や自己実現を後押しすることで、企業価値の向上や新たなイノベーション創出にもつなげている。
このほか、週2回までの在宅勤務を基本とするハイブリッドワーク制度、同性パートナーへの福利厚生適用、トランスジェンダーへの就業支援など、ダイバーシティを推進する取り組みも進めている。福利厚生ポイント制度「カラフルポイント」や、確定拠出年金、社員持株会制度なども利用可能だ。
初任給を引き上げた企業は7割超 TDB調査に見る全国的な傾向
セガの施策は、全国的な企業動向とも呼応している。帝国データバンクが2025年2月に実施した調査によると、2025年4月入社の新卒社員に対し、初任給を引き上げる企業の割合は71.0%にのぼった。主な理由としては、人材確保、最低賃金の上昇、物価高騰への対応などが挙げられている。
また、初任給を引き上げた企業の平均引き上げ額は9114円となっており、1万円未満の増額が中心だ。こうした中、セガの3万円(約10%)の増額は、全体平均を大きく上回る水準であり、物価高や人材獲得にとどまらず、戦略的な制度改定として際立っている。
既存社員との「逆転現象」にも配慮 セガの施策との共通点
同調査では、初任給の引き上げによって「既存の若手社員の給与を逆転してしまうことへの懸念」も企業から多数寄せられている。たとえば、「既存社員の給与水準も併せて見直す」「今後の課題として対応を検討中」といった声が見られた。
セガも、初任給の引き上げと同時に全社員のベースアップを実施しており、この「逆転現象」への対策として先回りした形だ。報酬と制度の両面から環境を整備することで、既存社員のモチベーション維持と優秀な人材の確保を両立させる姿勢がうかがえる。
帝国データバンクは「初任給の引き上げは人材確保には必要だが、既存社員とのバランスを保つことが今後の大きな課題となる」と指摘している。
「初任給に関する企業の動向アンケート(2025年度)」は2月7日~12日にかけて、インターネット上で実施。有効回答企業数は1519社。
セガの発表の詳細および帝国データバンクの調査結果は、各社の公式サイトで確認できる。