リンキン・パークの復活大傑作「From Zero」新加入の女性ボーカリストが素晴らしい!
7年ぶりに劇的復活したリンキン・パーク
チェスター・ベニントンの死から7年が経過した2024年、リンキン・パークが劇的に復活した。新たなボーカリストにエミリー・アームストロングを迎えてニューアルバム『From Zero』を発表。
21世紀に最も成功したロックバンドのひとつとして、絶大な人気を誇るバンドが、カリスマボーカリストを自死で失い、そこから立ち直るまでには7年という歳月が必要だった。この間、私たちファンはリンキン・パークの復活を半ば諦めていたが、昨年初頭から新たなボーカリストを迎えたという噂が流れ、そのボーカリストは女性であるということだった。
女性ボーカリストの加入に賛否両論
超人気バンドのカリスマ・ボーカリストが女性に変わるということはどういうことか考えてみよう。
▶ レッド・ツェッペリンのロバート・プラントが脱退して後任が女性ボーカリストだったとしたら?
▶ ヴァン・ヘイレンのデイヴィッド・リー・ロスが脱退した後のボーカリストがサミー・ヘイガーではなく、女性ボーカリストだったとしたら?
これってかなりイメージしにくい話だし、ファンからは絶対に賛否両論が巻き起こることは間違いない。しかし、リンキン・パークは、大胆にも女性ボーカリストを迎え入れた。そして、エミリー・アームストロングの加入について、予想通りファンの間では賛否両論が巻き起こった。
ロックが持つ躁鬱の両極を表現したチェスター・ベニントン
前任のチェスター・ベニントンは、圧倒的なスクリームで聴く者のロック衝動を喚起させることと同時に、繊細な声でリリカルなスローナンバーを歌いこなし、ロックが持つ躁鬱の両極を表現することのできる稀有なボーカリストだった。また、端正な顔立ちとタトゥーだらけの身体で、ヤバさと繊細さを兼ね備えたロックスターを体現していた。そんな唯一無二のカリスマ・ボーカリストに代わる存在などいるわけがないというファンも多く、新ボーカリストのエミリーに対して懐疑的な意見があったのも無理はない。
しかし、新たな体制で制作されたニューアルバム『From Zero』は実にリンキン・パークらしい作品だった。本作で鳴らされるサウンドは、ストレートなロックナンバーが多く、そこに切ないメロディーのミディアムナンバーが丁度よい塩梅で配置されている。アルバムの構成もよくまとまっており、良曲連発の32分間はあっという間に聴き終わってしまう。また、今までよりもマイク・シノダが歌い、ラップする割合を増やすことで、ボーカリストが変わったにも関わらず、そこから聴こえてくるサウンドからはどこを切ってもリンキン・パークの王道サウンドに聴こえるよう工夫されている。
女性ボーカリストを迎えた理由とは?
鳴っている音だけを聴くと、全てが順風満帆に進んだ感のある新生リンキン・パークだが、新たなボーカリストを迎えるにあたって、メンバーはかなり頭を悩ませたことだろう。前述のとおり、チェスター・ベニントンのカリスマ性に匹敵するボーカリストを見つけることはとても難しいだろうし、もし、似たようなキャラクターの男性ボーカリストを見つけたとしてもチェスターと比較され、高い評価を得ることは更に難しい。
そこで全く違った個性を迎えつつもリンキン・パークのサウンドに融和するボーカリストを迎えること、併せてチェスターと比較されにくいことに重要性を置き、導き出した答えが女性ボーカリストであり、スクリームから伸びやかな声で美メロまで歌いこなす歌唱力を兼ね備えた実力者=エミリー・アームストロングに白羽の矢を立てたのだろう。結果、復活作『From Zero』では、今までのリンキン・パークの魅力を損なうことなく、新たな魅力も作品に持ち込むことに成功しており、バンドの新たな出発を強く感じさせることに成功している。
また、圧倒的に男性メンバーの割合が高いヘヴィロック・シーンにおいて、リンキン・パークが女性ボーカリストを迎えたことは、彼らのリベラルな姿勢が打ち出されており、そこには強いメッセージが込められているように感じる。
常に変化し続けるバンド=リンキン・パーク、そして来日公演にも期待!
大傑作アルバム『From Zero』でシーンの最前線に帰還したリンキン・パーク。今までの遍歴がそうだったように、これからもリンキン・パークは、様々なサウンドを取り込み、変化し続けていくだろう。こうした変化の過程にエミリー・アームストロングの個性がどのように融合していくのかを考えるととても楽しみだ。始まったばかりのリンキン・パーク第2章がどんな旅になるのかを考えると凄くワクワクするし、今後も彼らから目が離せそうにない。
そして、リンキン・パークはこの2月に来日公演を行う。12年ぶりの来日公演だけにファンの飢餓感は沸点に達しているところ。もちろん、見どころはエミリー・アームストロングの本邦初お披露目であり、ライブにおいてどんなケミストリーが生み出されるのかに注目したい。
アルバムのリリース前にインターネットで全世界に中継された復活ライブでエミリーは少し緊張気味で、ぎこちないところも感じられたが、ワールドツアーを経験して行われる日本公演は先の配信復活ライブよりも強度を増したパフォーマンスを観せてくれるはずだ。ワールドツアーのセットリストに組み込まれている過去の名曲たちがどのように生まれ変わり、新たな魅力が加えられたのかを確認することも大きな楽しみだ。ぜひとも彼らのゼロからの再出発を体験したいと思う。