【高校サッカー決勝見どころ】11/16 静岡学園vs浜松開誠館!対照的な両チーム、勝つのはどっち?
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「高校サッカー決勝見どころ」です。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年11月14日放送)
(寺田)今回はディープに静岡の高校サッカーについてお話したいと思います。第103回全国高校サッカー選手権県大会の決勝が11月16日午後1時からエコパスタジアムで行われます。静岡学園ー浜松開誠館の注目カード。静岡学園は15度目、浜松開誠館は3度目の全国舞台を目指します。
決勝の見どころを紹介する前に、今大会全体を振り返ってみます。今回は東部勢の健闘が光りました。
まずは県Aリーグの飛龍。高校生のリーグは上から全国区のプレミア、地域ブロックごとのプリンスとあり、県リーグはその下。簡単に言うと飛龍は“J3”なんですが、決勝トーナメントの準々決勝でプリンス勢で伝統校の藤枝東と対戦し、1−3から追い付いてPK戦の末、格上を撃破して4強入りしました。
FWの丹羽主将を中心に頑張るチームで、準決勝は静学に1−6で敗れましたが、ロングスローで相手の攻撃を分断し、試合序盤は押し気味で王者を苦しめました。
富士東も10年ぶりの決勝トーナメント進出でした。この夏の県総体は40年ぶりに8強入りを果たしたんですが、その実力がまぐれじゃなかったことを証明しました。富士東は県リーグのまたその下の東部地区リーグ所属。県リーグもA、B、Cってあるんですが、さらにその下の地区リーグ所属。1次トーナメントで格上リーグのチームを次々破り、まさに快進撃でした。
(山田)これからも期待できますね。サッカーと言うと、中部や西部のイメージがありますからね。
(寺田)実は東部勢ってまだ夏のインターハイと冬の選手権でいずれも全国切符を取ったことがないんですよ。中部、西部の壁が厚いんですね。今回も決勝トーナメントに進んだ16校に東部勢は4校いたんですが、飛龍以外はいずれも初戦敗退しました。
飛龍のスタンドに掲げられた横断幕には大きな文字で「東部から全国へ」って。これって飛龍の関係者だけでなく、県東部地区サッカー界の悲願なんですよ。東部勢ではプリンスリーグには富士市立がいます。サッカー王国に東部から新たな風を吹き込めるか。今後の活躍に期待したいです。
(山田)東部にも頑張ってほしいですねえ。
静岡学園は個人技重視のスタイル
(寺田)話を戻して、16日の決勝。対戦カードは静岡学園ー浜松開誠館。タレントぞろいの静学に対し、よく走り組織力で戦う開誠館。門努さんの予想は?
(山田)難しいですねえ。
(寺田)静岡学園はこれまで100人近いJリーガーを輩出している名門。サッカー日本代表は今、W杯のアジア最終予選を戦っていて、この代表メンバーにも静学出身のMF旗手怜央選手(スコットランド・セルティックFC)とDF関根大輝選手(柏レイソル)の2人が入っています。
静学と言えば、ドリブルにショートパス。ブラジルに源流がある個人技を重視した攻撃的サッカーです。前監督の井田勝通さんが築き上げ、現在の川口修監督が引き継ぐスタイルです。
試合を見たらすぐ分かります。全員の個人能力が高く、ドリブルを仕掛け、ショートパスをつないで相手ゴールに襲いかかる。練習を見に行くと、個人技を重視した内容なんですよ。おそらくリフティング対決をしたら、Jリーガーに勝てる選手がたくさんいますよ。
今年も能力の高い選手が多く、攻撃的ポジションで2年生の篠塚選手が準決勝まで3戦続けてゴールを奪って好調ですし、両サイドにもドリブルが得意なスピードスターを配置しています。しかも、層が厚いんです。
今や主軸の篠塚選手も夏前まではBチームだった。静学のトップチームはプレミアリーグで戦っていますが、プリンスリーグにBチーム、県AリーグにCチームという具合に、5軍くらいまで各リーグにチームを送ってるんです。トップの選手が調子悪くても、下のチームから勢いのある選手が上がってくるんです。
それに対して開誠館もここ6年間で2度、全国選手権に出場し、近年力を付けています。
(山田)浜松開誠館の赤のユニホーム、格好いいですよね。
浜松開誠館は「戦う、走る、粘る」
(寺田)現在はプリンスリーグ東海で5位。タレント集団の静学に対し、開誠館の基本コンセプトは「戦う、走る、粘る」。チーム全員が攻守にハードワークして戦い抜きます。
今年は創部20年の節目になります。お隣の愛知県出身の選手もいますが、浜松市中心に県西部の選手が半分ほど。高度な技術を要求するより、基本に忠実なプレーを徹底しています。「基本の文法が分からないと英語は理解できない。サッカーも同じ」と。創部当時から指揮を執る青嶋文明監督は言います。基礎を大切に、その上に技術力、さらに実戦への応用を積み重ねて、選手を育てています。
2年前に全国選手権に出場したチームも全体が連動してボールを奪いにいくプレスが武器でした。団結力があってすごくいいチームで、私も初戦の取材に浦和駒場スタジアムまで行きました。
その大会で準優勝した熊本代表の大津を苦しめたんですが、終了間際の失点で1対1の同点に追い付かれ、PK負け。あと一歩、初戦突破してれば、いいところまで行ったんじゃないかと残念でした。
今年のチームも伝統の組織力に優れているだけでなく、セットプレーも武器なんです。準決勝の藤枝明誠戦はフリーキックとコーナーキックから2点を挙げて競り勝ちました。
セットプレーってキッカーのボールと待ち構える選手の動きを合わせるんですが、長身の選手を狙うだけじゃなく、相手の裏をかいたり、意表を突いたりと、いろいろ作戦を考えるんです。
開誠館は国内外のプロチームの動きを再現し、選手間でアイデアを出し合っているそうです。決勝にどんなセットプレーを用意してくるか。注目ですね。
(山田)学園と浜松開誠館。対照的で面白いですよねえ。
両監督のこれまでの歩み
(寺田)さらに、両チームの指揮官も対照的。
まず開誠館の青嶋監督は元Jリーガーです。現在56歳。出身は浜松なんですが、清商に進学して、エースストライカーとして2年生の時に全国制覇を経験してます。Jリーグ創設時から清水エスパルスでプレーしました。しかし、けがが続いてその後は大成できず、現役引退後すぐ開誠館の監督に就任したんですよね。
伝統校がひしめく中部と比べ、浜松は当時サッカーがそこまで盛んではなく、創部時のグラウンドにはネットも照明もなかったそうです。そこから「この地域に日本を代表するサッカークラブを立ち上げる」という志を立てて指導を続けています。
(山田)浜松開誠館は野球もバスケットボールも強いですよねえ。
(寺田)青嶋監督は「地元の選手を育ててこそ、開誠館の存在意義がある」と言うんです。また、自分も選手時代に度重なるけがを経験しましたから、「選手として未熟だった自分が教えられるのは、挫折に対する強さや自制心」って。そういう信条を持っています。
(山田)僕、そういうの好きですよ〜。
(寺田)それに対し、静学の川口監督。51歳で沼津市出身。静学OBなんですが、川口さんは高校時代からけがに泣かされ続け、選手としては実績を残せなかったんです。そこから卒業後、単身でブラジルに渡って1年半、武者修行したんです。当時のベルマーレ平塚から練習生の話があって帰国したんですが、そこでまたけがをして選手生活を終えました。
その後はプロゴルファーを目指そうとしたこともあったそうですが、藤枝明誠での指導を経て母校静学のコーチになったんです。そして2019年には全国選手権で県勢24年ぶりの全国制覇を果たしました。井田前監督から個人技を重視するスタイルを継承しながら、テクニックだけではなくフィジカルでも強い、世界で通用する選手を育てようとしています。
この間もね、話を聞いたら「選手の特長を伸ばし、ピッチで表現させることが一番。自分たちのスタイルを出して負けたらしょうがない」と言い切ってました。
(山田)おお、その考え方なんですね。監督の話も面白いですね〜。
(寺田)両監督は対照的だと言いましたが、「ただ勝てばいい」ではなく、志を持って選手を育てようとしている点は共通しますね。
土曜日の決勝でどんなドラマが生まれるか。私もまた取材に行きます。SBSラジオでも実況生中継します。楽しみにしたいです。