Awkmiu、ゲストにOmoinotakeを迎えてのツアーファイナルは見たものを多幸感で包む最高の空間に
5月3日(金・祝)・名古屋・ell.SIZE、5月18日(土)・大阪・南堀江knaveを経て、5月31日(金)・東京・代官山UNITでファイナルを迎えた『Awkmiu LIVE TOUR "HEKIREKI"』。ゲストアーティストにOmoinotakeを迎えたこの公演の模様をレポートする。
Omoinotake
藤井怜央(Vocal&Keyboards)がピアノを弾きながら歌い始めた後、福島智朗(Bass)、冨田洋之進(Drums)、サポートプレイヤー・ぬましょう(Percussions)の演奏も合流。オープニングを飾った「One Day」によって、会場は瑞々しいサウンドで一気に満たされた。高鳴る胸の内を手拍子で表現する観客の表情がとても明るい。「幸せ」と「EVERBLUE」も届けられたことによって、ますます穏やかなムードで包まれたフロア。序盤から至福の美メロの連続であった。
「Awkmiuのシキちゃんと僕が接点を持ったきっかけが、パーカッションのぬましょうさんです。去年の11月にぬましょうさん主催のイベントに呼んでいただいて、それぞれの曲をカバーしたり、コラボをしたんです。そのライブの日に"2マンライブをやりたいんです"というお話をシキちゃんとドラムの米哉さんから頂いて、今日の出演が実現しました。米哉さんと対バンするのも久しぶりなんですよね」――今回のライブへの出演が実現した経緯を藤井が語った後、「心音」「空蝉」「Friction」も披露されたが、演奏しているメンバーが実に楽しそう。「あの頃に出会った人たちとの点と点が繋がりました。音楽やっている中でも、とても嬉しい時間の1つだなと改めて思いました」――旧知の仲であるAwkmiuの関根、ぬましょうとの共演について途中のMCで語った福島の言葉も、ピュアな喜びで溢れていた。
観客が心を震わせながら耳を傾けているのが、周囲のムードからまざまざと伝わってきた「幾億光年」。起伏に富んだメロディの展開にワクワクさせられた「蕾」。そしてラストに届けられたのは「トニカ」。観客の間から歌声が起こった瞬間、メンバーたちはとても嬉しそうにしていた。Omoinotakeの音楽は、爽やかに心を潤してくれる。幅広い人々を魅了できる高い実力を再確認させられるライブだった。
Awkmiu
SEが流れる中、シキ(Vocal)、Aki(Keyboards)、カヤケンコウ(Bass)、関根米哉(Drums)が登場。「アロー」がスタートすると、観客の手拍子がすぐに加わった。フロアにいる1人1人に語りかけるかのようにシキが歌っていた「楽園はいらない」。ギターを弾きながら歌った彼女が、バンドアンサンブルに熱量を添えた「ミュージックゴースト」。ダンサブルなサウンドを響かせた「1089」……4曲が一気に披露された後に迎えた最初のMCタイム。「初めてOmoinotakeのワンマンライブを観たのが、この代官山UNITなんです。いつか対バンしたいと思っていたので、実現できて嬉しいです。しっかりバトンを受け取りましたので、この後は我々に任せてください!」――シキの言葉を受け止めた観客は、大きな拍手をステージに届けていた。
「今回のツアーは、"HEKIREKI"というタイトルです。3月に『されど空の青さを知る』というEPをリリースして、それを引っ提げてのツアーなので、繋がりのあるタイトルにしたかったんです。"HEKIREKI"は、雷、大きな音という意味。"されど空の青さを知る"は、"井の中の蛙大海を知らず"の続きの言葉。こうやってライブに来てくれたみなさんには、それぞれの場所での生活があります。それって、1人1人が1つ1つの井戸の中にいるみたいだなと思って。井戸の中から空を見上げた時に雷が鳴り響いたら、どこの井戸にいてもわかる。今日、あなたがどこから来たとしても、ちゃんと1人1人に届けられるようなライブ、ツアーをやりたいと思って、"HEKIREKI"というタイトルにしました」――ツアータイトルに込めた想いが語られた後、新曲「Pistol」がスタート。シキの歌声は、華やかであると同時に凛々しい。歌の核に意志がしっかりと宿っているからなのだと思う。続いて披露された「ブリーチタウン」の哀愁を帯びたメロディも、彼女の歌声によって雄々しい表情を浮かべていた。
ドラマチックな展開を遂げるバンドサウンドが観客の興奮を誘っていた「avalanche」と「Masquerade」を経て、再び迎えたMCタイム。「生きていると素敵な出会いがたくさんあります。永遠にそばにいるのは難しいけど、素敵な人と出会えた記憶は心の中に生き続けて、私たちを強く、優しく生かしてくれるんだと思います。あなたの大切な人を思い浮かべて聴いてください」とシキが語ってから歌い始めた「スプートニク」は、曲に刻まれた物語が温かなサウンドで浮き彫りにされていた。そして「ライブをやる度に音楽とバンドができて本当に幸せだと感じます。いつかちゃんと恩返しができるように、ここにいる全員を必ずもっと眩しい場所に連れて行きます」という言葉が添えられた本編ラストの曲「灯火」。メロディだけでなくシャープなビートも担っているピアノに刺激され、観客は激しく手拍子を打ち鳴らしていた。
アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきたメンバーたち。「昔は僕の方がOmoinotakeよりも先輩。今はあちらが先輩という、とてもややこしい関係でして(笑)。ぬましょうは、高校の時に“武道館を目指そうぜ”と語り合った音楽仲間。でも、17年間で1回も対バンをしたことがありませんでした。今日、初めて対バンしました。みなさんは歴史の目撃者です。感慨深い日になりました!」と想いを語っていた関根。ぬましょうと同郷の彼にとって、今回の共演は心底嬉しいものだったのだろう。浮かべていた笑顔の明るさが思い出される。
「とてもいい日になりました。Omoinotakeのみなさんに尊敬と愛を込めてカバーをさせていただきたいと思います。この足で未来に会いに行く力をくれる曲です」とシキが言い、披露されたOmoinotakeのカバー「彼方」。瑞々しいメロディを慈しむかのように歌う姿が印象的だった。そしてラストを飾ったのは「どくどく」。観客が掲げた掌が照明を浴びながら揺れる様が眩しかった。ツアーファイナルを締め括る最高の風景として、ステージ上の4人は噛み締めていたのだと思う。
こうして終演を迎えた『Awkmiu LIVE TOUR "HEKIREKI"』のファイナル公演。長年に亘って育まれてきた友情で実現した両バンドの共演は、観客にたくさんの幸福をお裾分けしてくれた。とても心温まる2マンライブであった。
取材・文=田中大 撮影=Ryohey Nakayama