【藤沢市】藤沢合唱団 平和への願い歌にのせ 記念公演で『無言館』披露
藤沢合唱団(永山園子団長)は29日(土)、藤沢市民会館で創立45周年記念コンサートを開く。公演の目玉の一つが組曲『無言館』。長野県に実在する戦没画学生慰霊美術館を題材にした楽曲だ。戦後80年の今、公募団員も合わせた総勢65人で平和への祈りを込めて歌う。
無言館(長野県上田市)には、戦地へ赴き亡くなった画学生たちが出兵前に風景や家族、恋人などを描いた作品が展示されている。
同曲は、こうした背景や展示作品を基に作られた組曲。全10曲を通し、戦争の悲惨さや遺族の無念を描いている。永山団長は「志半ばで亡くなった若者たちに思いを馳せて歌いたい」と話す。
普段から歌に込められたメッセージを届けることを大切にする同団では、約1年前に戦後80年に合わせた発表を企画。春ごろに同曲を共に歌う公募団員を募ると、「想像を超える人が集まった」と永山団長。「無言館なら歌いたい」と初めて参加した人もいた。
上田市出身の藤村ちづ子さん(84・茅ヶ崎市在住)もその一人だ。「館内で見たそれぞれの物語がずっと胸に残っている。合唱で、戦争は絶対いけないと訴えたい」と力を込める。
「今」生きる糧に
実際に戦争を経験した世代も合唱に参加する中、指揮を務める中村拓紀さん(42)は「自分が指導してもいいのか」と葛藤したという。だが「ここで踏み込まなければ、今後この歌を演奏する機会が失われ、忘れられてしまうのでは」と、現地を訪れるなど作品と真摯に向き合ってきた。「聴いた人が実際に訪れてみたくなるような演奏にしたい」と意気込む。
コンサートでは、10曲のうち『無言館』『一枚の絵』『戦死』『祖母』『海』、そして終曲『今』を披露する。「ただ可哀想というだけでなく、今を生きる私たちの糧にできる何かを聴く人の心に届けられたら」
公演では他に、童謡や観客も参加できる曲など23曲を披露。午後1時30分開演で、チケットは大人1千円、中高生300円、小学生以下無料。当日券取り置き可能。問い合わせは永山さん【電話】0466・33・2248。