お茶が飲みたいけどもう立ちたくない~その時あなたは~【御手洗直子のコマダム日記 #198】
一大センセーションを巻き起こした「婚活コミック」著者、御手洗直子さんが結婚して2児の姉妹の母に。あいかわらずのつっこみどころ満載の日々、渾身のひとコママンガ&エッセイでお送りします。
「つっこみが止まらないコマダム日記」#198
今回は『お茶を飲みたいけど立ちたくない状態』にまつわるお話です。
『お茶持ってきて』の最適解とは
おかずを作っておかずを作って残り物のおかずを盛り付けて温める物は温めて、そのあとに冷たいおかずを盛り付けて汁物をよそって家族におかずトレイを取りにこさせてその間に果物をむいて、冷凍ごはんを温めてそれは別皿にあけて自分のごはんを盛り付けてああ、でも麦茶のボトルが空だからこれは先に作っておかないと…と最後の力を振り絞って麦茶を作って自分のごはんを食卓に置いた瞬間に食事中に飲むお茶が無いと思ってももう立ちたくないのである。(ここまでフルに動いて50分)動きたくないけどお茶が飲みたい。
ではどうするかといえば子に持ってこさせるのである。
ここで間違っても『お茶持ってきて』などと言ってはいけない。
ではどうするか。
①『わぁ~、ここがウワサのカフェかあ…!かわいいメイドさんがいるらしいけど…あ、いた!あのう…かわいいメイドさん、注文いいですか?』と次女に話しかけるのである。引くな。これが普通に通用するんだうちは。普通に通用するのでここで次女が『あ…はい、注文ですか?』とかしこまった状態で返してくるので『麦茶をください』と言うとこの辺でようやく自分が使われると気付いた次女が『おかあさん、麦茶飲みたいの?』と聞いてくるので②両手でハートを作って『お願い♥』とオクターブ高く頼むと8歳はわざわざお盆に乗せた麦茶を持ってきて『ご注文の麦茶です…』とうやうやしく持ってきてくれるのである。8歳はまだこれが通じる。もちろん『わぁ~、ありがとうございます!ここのお店は麦茶がおいしいってウワサを聞いてたんです!』という小芝居を演じたあとに麦茶を飲むのである。ここまでして立ちたくない。俺は座って麦茶を飲む。次女もメイドになりきったまましゃなりしゃなりとごはんを食べるのでWINWINなのである。メイドはごはんを食べ…?るのか…?
ちなみに11歳はこれが通じないというわけでもないがあまりノリノリには乗ってこないので素直に麦茶を持ってきてほしい旨を伝えて②をやると持ってきてくれる。さすが11歳は若干渋ったりするのだが、『今度何かおいしいもの買ってくるから!アイス!アイス買ってくるから!』という適当な一押しをすると持ってきてくれる。ありがとう。やさしい。
逆も然り。
『おかあさん、お茶』では動きたくないのである。お母さんはお茶ではない。ので、『もっとかわいく言って』と言うと、次女は席を立ち片足を上げハートポーズとキメ顔をしながら『お茶持ってきてください♥』とオクターブ高く言ってくるのである。そこまでしてもお茶を持ってきたくは無いのである。わかるよ。お母さん、わかる。なので持ってくる。かわいいポーズをしたので持ってきてやろう。ちなみにコレは11歳もちゃんとキメ顔とキメポーズをキメて『お茶をください♥』をしてくるのでお茶を持ってくることになっている。
我が家では今のところ、このシステムが滞りなく作用している。このシステムの良いところは払う対価が容易なわりに請け負うほうが対価を得らえることによってわりと満足した状態で労働に赴けるところである。満足とは『タダで働いてるわけではなく相手にかわいいポーズをさせたしな』という達成感とかわいいポーズが見られたという満足感である。このシステム、いつまで運用できるんだろう。
あと弱った動物の赤ちゃんがお茶を飲みたいっていう設定も強い。アザラシの赤ちゃんが『キュ~ンキュ~ン。のどがかわいたよう』とか言うとお茶を持ってきてくれるのである。コレほんといつまでやってくれるんだろう。私もいつまでやるつもりなんだ。
娘たちが成人してもやってくれていたらどうしよう。私のほうがやばいやつにならないか。今の時点でやばいやつじゃないのか。そうか。
そしてアザラシの赤ちゃんはおそらく麦茶を飲まないのだ。(おわり)
御手洗直子
Profile pixivで大人気。累計閲覧数1100万を誇る爆笑コミックエッセイスト。なんでそんなにネタ満載人生を・・・という謎の人。既刊に「31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる」「31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる」(共に新書館)、「腐女子になると、人生こうなる!~底~」(一迅社)、「つっこみが止まらない育児日記」「さらにつっこみが止まらない育児日記」(ベネッセコーポレーション)など。たまひよのサイトで、数話限定公開中。
御手洗直子X(旧twitter):mitarainaoko