『魔法使いサリー』は元々『魔法使いサニー』だった!『ガンダム』の名前の由来にはアノ男性用化粧品が関係していた!?
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「作品タイトルとその辺りの名前にまつわるエトセトラ」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
アニメ作品の名前にまつわるあれこれ
今回は、アニメのキャラではなく、作品タイトルや制作会社の名前にまつわるエトセトラについてお話できればと思っております。
まず、作品タイトルが正式に決まるまでの変遷のお話を。例えば、これは割と知られている話ですが『魔法使いサリー』(1966年)は元々『魔法使いサニー』として連載されていました。
なぜ変わったかというと、アニメ化のタイミングでほかの会社が持っている商標権とぶつかったんです。商標を確認したら日産の車に「サニー」があったんですね。しかも日産は、ソニーが持っている「サニー」の商標を許諾を得て使っていたとか。
商標権はジャンルが違えば2つを同じものと混同することはないだろうと、基本問題にはならないという考え方もあるのですが、なかなか一筋縄ではいかないところもあります。なので安全を取るために、企画段階ではゴーサインが出ていても、商標がかぶっていたので名前を変えるということがあるんです。
『メガゾーン23』(1985年)というOVAのアニメも、最初は『オメガゾーン』というタイトルでした。ただやはり土壇場で時計のオメガブランドとかぶっているという話が出たため、オを取ってメガゾーンにしたようです。
また、企画段階でつけた名前がだんだんブラッシュアップされていくというケースもあります。ガンダムは一番最初の企画書では『フリーダム・ファイター』とか『フリーダム・フォートレス』など頭文字がFFとなるような単語で作られていました。
その後ロボットが登場することになり、その名前をとって『ガンボイ』あるいは『ガンボーイ』といわれるようになります。当時はロボットが銃を持つという設定が珍しかったため「ガン」とついており、少年が乗るから「ボーイ」でした。
あと背景には、当時『コンボイ』という映画が流行っていたのを踏まえたということもあるようです。その後もう少し語呂をよくしたいと、当時チャールズ・ブロンソンが出演するコマーシャルが話題だった男性用化粧品の「マンダム」をヒントに、『ガンダム』と決まりました。このようにブラッシュアップを経て変わっていったわけです。
アニメ制作会社の名前についてもお話しましょう。アルファベットで書かれてる会社がいくつかありますよね。例えばJ.C.STAFFはJAPAN CREATIVE STAFFの略。ではProduction I.Gはどうでしょう。これは石川・後藤です。Iは石川光久さんのI、Gは後藤隆幸さんのGで、創業者たちの名前から取られています。
『ポケットモンスター』でおなじみOLMはOriental Light & Magic。これ元々は、ジョージ・ルーカスが設立したSFXの会社、インダストリアル・ライト&マジック(ILM)にあやかりたいとOriental Light & Magicにしたという話です。
また、『SHIROBAKO』(2014年)の制作会社P.A.WORKSはProgressive Animationです。いろんな会社に色々な思いが込められていますね。Japan Creativeとか、Progressive Animation、前進していくとか、そういうのが多いかなと思います。