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【変わる富士登山】今夏から山梨県側で始まった入山制限。静岡県側でも事前登録を推奨。 なぜ規制は必要なのか。登頂経験がある記者が解説します!

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「変わる富士登山」です。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年8月1日放送)

(山田)今日は富士山の話題ですね。今は連日、いろんな方が登ってるところだと思いますけど、今年からいろいろとルールが変わって、リストバンドをつけるというような話もありますよね。その辺りを詳しく教えてください。

(山本)実は私もまだ今年は富士山に行ってないんです。

(山田)登ったことはあるんですよね?

(山本)振り返ると、結構前から何回か登っていますね。

(山田)何回もあるんですか。

(山本)仕事で登ったことの方が多いですね。初めて登ったのはもう26年前です。これも仕事でした。その時に比べると周りの状況や富士山そのものが変化してきています。何より登る人たちの気持ちが変化してきたのではないかと思うので、今日はそんなところを話したいと思います。

(山田)静岡新聞はこの時期、富士山臨時支局を開設しているんですよね。

(山本)今年も開設しました。それほど長い期間ではないんですが、記者が山小屋に寝泊まりして富士山の上がどうなっているのか、どんなことが起きているのかといったことや課題を毎年取材しています。

(山田)富士山臨時支局の公式X(旧Twitter)もありますけど、今朝はすごくきれいな雲海からのご来光がポストされてましたね。

(山本)今日は下界から見ると曇っていましたけど、雲の上からは素敵な御来光が見えたようですね。写真は臨時支局に行っているカメラマンが撮影しました。

(山田)こういう富士山の状況を静岡新聞で伝えていくために、毎年臨時支局を開設しているわけですね。

(山本)富士山臨時支局という名称で一定期間、山小屋に拠点を置いて取材をするということがいつから始まったのかを調べたところ、2006年が最初でした。実はこのとき、私は臨時支局員を務めました。

(山田)静岡新聞初の富士山臨時支局員!

(山本)このときは山頂の山小屋に4泊しました。それ以降は、富士山の世界文化遺産登録などの動きがあり、2010年以降は毎年続いています。

富士山は2013年に世界文化遺産に登録されましたが、それ以前にも世界自然遺産を目指そうという機運が高まった時期がありました。

(山田)それはゴミの問題とかいろいろあって実現しなかったんですよね。

富士山にかつてあった「白い川」問題とは?

(山本)はい。それが一段落した後、今度は文化遺産としての登録を目指してはどうかという機運が高まってきました。そこで、静岡新聞としても臨時支局を設けようということになり、2006年の夏に仕事で登山したということなんです。

私が初めて富士山に登ったのはそれより前の1998年です。このときはSBSラジオの番組で、一般から募集した人たちを連れてタレントさんと一緒に登山し、それを番組にする企画に携わったことがきっかけでした。このときは、話で聞いていた通りごみも多かったですし、何よりトイレの問題が印象深かったです。

(山田)今でこそバイオトイレとかがありますけど、当時は?

(山本)「白い川」と呼ばれる惨状になっていました。当時はため込んだし尿をシーズンオフにそれをその場から流して処理していました。このため、トイレットペーパーなどの残り物が川のように見える状態でした。

(山田)それで「白い川」と言われていたんですね。

(山本)その後、何回か富士山に登るたびに、その辺りの問題はかなり改善されたと感じています。確かにまだトイレの問題はいろいろと課題はありますが、山はきれいになっています。ゴミも意図せずに落ちてしまったようなものはありますが、ポイ捨てするような雰囲気ではとてもありません。

富士山は非常に多くの方が訪れているだけに、気軽に登れるイメージがあるかもしれませんが、実際には結構大変です。事故も起きていますし、少しでもケガをしてしまったら救助隊や友人に担いで下ろしてもらわなければなりません。

(山田)気軽に思ってしまうんですよね。僕が良くないなと思うのは、「私も登れたんだから大丈夫だよ」という誘い文句。当日の体調や山のコンディションの見極め、きちんとした装備などが非常に重要なので、あまり誘い文句に踊らされないほうがいいかなと思うんですけど。

登山者の殺到で生じる問題とは?

(山本)富士山の夏の開山期間は2カ月強ですが、その間にどのぐらいの人が登っているのかというと、コロナ禍を除くと毎年20万人以上。多いときには30万人が押し寄せてきたということです。

昨年は22万1000人。コロナ禍前の9割以上の水準に戻ってきました。それだけの人が集中すると、どうしても無理が出てきてしまうんですよね。先ほどのトイレの問題もそうですし、時間帯によっては登山道が人で渋滞します。臨時支局に行った先ほど同僚に電話で聞いたところ、平日ということもあって渋滞まではできていないそうですが、今年も例年と同じように多くの人で賑わっているということでした。

(山田)そんな中、今年からいろいろルールが変わった部分があると。これから登山される方に向けてお伝えしておかなければいけないことがたくさんありますね。

(山本)富士山の登山ルートは山梨県側の吉田口と、静岡県側に富士宮口、須走口、御殿場口の3つのルートがあります。今年のルールは山梨県側と静岡県側で少し違います。

山梨県側は一足早く厳しい制限を設け、吉田口は1日当たりの入山数を4000人ほどに絞っています。午後4時から翌日の午前3時までは、山小屋予約者以外の入山を規制することを厳密にやっているようです。通行料も山梨県側は1人2000円徴収しています。

静岡県側はそこまでやっていませんが、事前に登録する仕組みを試行しています。登山する場合は事前にインターネットを通じて登録し、そこで富士登山に必要なマナーを紹介しています。例えば、必要な装備品であったり、夜通しで登ってすぐに帰って来る「弾丸登山」の危険性を伝えたりして、それを理解した上で登録するよう推奨しています。登録した方には、その証しとしてリストバンドを渡すということを始めました。

なぜこういうことをしているのかと言うと、短期間に大勢の人が押し寄せる形では無理が生じて事故が起きてしまうからです。また、世界遺産としても問題ではないかということが文化遺産登録時から言われていたということもあります。世界文化遺産の富士山には「信仰の対象と芸術の源泉」というタイトルがついていて、あくまでも文化的な側面に世界遺産としての価値があるとされています。あまりに人が押し寄せすぎると、そういった部分が損なわれてしまう恐れがあるので、保存するためにもきちんと管理、ウオッチしていきなさいと言われています。

(山田)ユネスコ側から言われてるんですよね。きちんと制御して価値を守っていかないと世界遺産ではなくなる可能性もゼロではないですよと。

(山本)そういうことなんです。一度保全状況のチェックを受けたところ、これまでの取り組みが高い評価を受け、クリアしています。ただ、今のまま無制限な入山者数でいいのかという部分は課題として残っています。そこで、今年から山梨側は規制に踏み切り、静岡側もいろいろと考えているようです。

実は政府も検討しています。静岡側が山梨側と同じように規制できないのは、エリアが広くて登山道から外れたところからでも登れてしまうからなんです。それを全て規制するのはなかなか難しいというということで、山梨側と同じような形にできていません。そこを何かできないかということで、岸田文雄首相が先日、政府も富士山混雑対策を支援していく、というような発言をしました。

このため、静岡側も来年、再来年を見据えると、今よりも規制が厳しくなっていくかもしれません。

富士登山の体験は素晴らしい。だからこそ守るべきことが

(山田)そういうところを守って登らなければいけないということですね。8月に入って「山の日」とかもありますけど、シーズンのど真ん中ということで富士登山を計画されている方もいるでしょうね。ただ、事故とかはないようにということですよね。

(山本)そうですね。少し足をくじいただけでも、そこから動けなくなってしまうと救助隊を呼ばなければならなくなります。救助隊には相当な負担になってしまいますので、体調管理も含めて万全の態勢で挑んでほしいですね。それでもケガをしてしまうことがあるかもしれないので、その時は人の手を借りて助けてもらうのは仕方ないです。ただ、準備は怠らないでいただきたいですね。

富士登山はやはりすごくいいんですよ。素晴らしい体験になるのは確かです。夜に静寂な中で山を見渡すと、本当に神聖な場所にいるんだなと感じて、信仰の対象になってきたという意味が分かる気がします。静岡県の人にとっては地元にある日本一高い場所ですから、やはり登頂しない手はないかなと思います。

(山田)何かエネルギーがあるんでしょうね。

(山本)なので、体力に自信があって準備万端な人はぜひ行っていただきたい場所ではありますね。

(山田)規制はあるけど、登るなという話ではないですからね。

(山本)そうですね。

(山田)登るために山を守るということですよね。今日の勉強はこれでおしまい!

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