スマホは何歳から?小中学生の所持率、トラブル経験談、SNS依存、ルールづくり【専門家QA】
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
小学生、中学生にスマホ(スマートフォン)は必要?まだ早い?何歳から持たせた?アンケート結果や所持率データなども
今や大人においては1人に1台はほぼ持っているスマホ(スマートフォン)。
ですが、いざ子どもに持たせるとなると「小学生や中学生にスマホはまだ早いのではないか、本当に必要なのか」「何歳から持たせるべきなのか」「どんな風にスマホ使用のルールを決めたらいいのか」など不安に感じることもあるのではないでしょうか。
このコラムでは
・「スマホの不安やトラブル」アンケート結果
・何歳からスマホを持たせた?
・小学生、中学生、高校生のスマホの所持率
・スマホの悪影響やトラブル体験
・専門家解説のスマホルールのつくり方やスマホのメリット
などをご紹介します。
今回発達ナビでは「スマホの不安やトラブル」についてのアンケートを実施しました。「スマホを持たせているが心配なことがある」が約47%、「まだスマホを持たせていないが心配なことはある」が約36%とお子さんにスマホを持たせている方、まだ持たせていない方、共に多くの方が不安を感じている結果となりました。
※2024年11月22日までの結果です
子ども家庭庁の「令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」では小学生の42.9%、中学生の78.7%、高校生の97.4%がスマホを利用しているという結果がでています。
やっと所有する気になってくれたのは中3になる春休みでした。(ヒヨコさん)
https://h-navi.jp/selective_surveys/259
自宅に電話がない為、連絡手段が無く、災害等が起こった時に連絡が取れないことを考えて、中学からスマホを持たせています。(しのっぺさん)
https://h-navi.jp/selective_surveys/259
高校入学とともに家を出なければならなかったので、それを機に購入。(アールグレイさん)
https://h-navi.jp/selective_surveys/259
始まりが小5〜ガラケー。支援校高等部卒業後、スマホデビュー。(める。さん)
https://h-navi.jp/selective_surveys/259
中学入学とともに購入。(にゃこさん)
https://h-navi.jp/selective_surveys/259
発達障害や発達に特性のある子どもの課金、ゲーム・SNS依存…発達ナビ読者の方が感じたスマホの悪影響やトラブル体験。専門家からのコメントも
ここからはアンケートの中からいくつか回答を抜粋し、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生に対応方法やコメントなどをいただきました。
始まりが小5〜ガラケー。支援校高等部卒業後、スマホデビュー。
(略)
心配されるゲーム依存、プリカでのゲーム課金、スマホ依存、破壊と心配ごとは全てやりました。しかし全て自分の稼ぎからなので失敗重ねながら本人も学び中。
知りたいことを検索したり、乗換案内やマップを使って目的地まで出かけたり買い物での
電卓計算、バーコード決済、友達とのラインと便利な機能も理解して使えるようになったので持たせて良かったです。(める。さん)https://h-navi.jp/selective_surveys/259
(井上先生コメント)
理想的に活用をされていると思います。知的障害(知的発達症)がある子どもにとってスマホを活用することでスケジュールや時間管理、交通機関の利用、お金の支払いや金銭管理、コミュニケーションなどさまざまな適応スキルを補うことができると思います。
一方、詐欺やフィッシングメール、悪質なアダルトサイトなどの危険性もあります。ときどき使用状況を管理したり、日ごろから相談に乗るようにし、定期的に相談をしていくと良いでしょう。
中学入学とともに購入。朝起きたとたんからSNSに夢中。家族との食事よりもSNSを見ながらの食事のほうが落ち着くようです。家族の食事というものはなくなりました。
また、学校のお友達とのLINEなどでは悪口を書かれたりしてもめることも。このもめたことがきっかけで登校しぶりとなってしまい、現状を把握することに苦労しました…(にゃこさん)https://h-navi.jp/selective_surveys/259
(井上先生コメント)
SNSに夢中になるというのは親としては想定外だったかもしれません。しかし、今の子どもたちは友人関係をつくっていく際に、スマホのSNSのグループは大きな影響を持ちます。その中で関係性を築くこともできれば、傷つけたり傷つけられたりといったこともおこります。傷ついてしまった場合は子どもと相談し一旦グループから離れ、SNSを見ないようにすることも一つの方法です。SNSにはさまざまな種類や機能があります。そのすべてを使うのではなく、例えばインスタグラムなどであればストーリー機能を使わない、見るだけにするなど自分にあった使い方やルールをつくっていくのも良いと思います。
いま小5の息子がいます(ADHDとSLDの診断あり)。
中学生になったらスマホデビューかな…とは思ってますが、正直いえば持たせたくない気持ちでいっぱいです。
スマホ依存(特にゲーム依存)、紛失や破損(ほぼ確実にやらかす)、ネット虐めの当事者(被害も加害も)になったら嫌だなとも思ったり。
でも短期記憶が激弱な息子にとって、上手く使いこなせれば強力な味方になることも分かるんです。自分もADHDですが、スマホの音声メモとリマインダーとアラームにどれだけ助けられてるか分からない。それだけに悩みますね…。(sacchanさん)https://h-navi.jp/selective_surveys/259
(井上先生コメント)
ゲームやSNSにハマりやすいタイプの子どももいます。その場合は最初に具体的なルールを親子でつくること、機器についているペアレンタルコントロール(親のための監視管理機能)を活用し、時間制限やアクセス制限、ダウンロード制限を行ったり、クレジット機能などが自由に使えない設定にしておく必要があります。
使ってほしい機能については、具体的に操作方法を教え、生活の中で活用させることが重要だと思います。一緒に調べものをしたり、祖父母やいとことコミュニケーションをしたりしていくのもよいと思います。
発達障害や発達に特性のある子どものスマホ使用のルールづくり、ネット依存問題、スマホのメリットなど専門家が回答!
Q:特性のある小学生や中学生にスマホを持たせることのメリットなどが知りたいです。
A:(井上先生回答)
チャットGPTやAIアプリを活用することでいろいろな情報を手に入れることができます。一つのアプリからの情報だけでなく、さまざまな情報ソースを手掛かりにしてその違いに気づき、自分の考えをつくっていくことがこれからの世界で重要になってきます。チャットGPTやAIアプリの結果を鵜呑みにするわけではなく、家庭や学校でそれらを活用しながらどうやって情報を整理し、自己決定していくのかの教育が必要になってくると思います。
Q:子どもがネット依存のようになってしまい、家にいる間ほぼ1日スマホをいじっています。とりあげると暴れたり暴力に繋がってしまいます。どう対応したらいいでしょうか。
A:(井上先生回答)
スマホをいじると言ってもその内容によって対応方法は異なります。まず何をしているのかを親が知ることが大事です。仮にここではスマホのゲームだとします。スマホゲームだけが本人の楽しみになってしまうとそれが奪われることは本人にとって人生を奪われることに等しいと感じてしまうこともあります。
また、禁止されることは本人自身を否定されることのように受け止められる場合もあります。一旦好きなように使える状況に慣れてしまった場合、強制的に取り上げたり禁止するだけでは暴力になってしまう場合もあります。また、たとえ成功しても勉強するようになるとは限りません。さらにこのことで親子の信頼関係を悪化させてしまいかねません。
スマホゲームに入りびたること自体を問題にするのではなく、食事や入浴、睡眠といった生活習慣を守ること、学校を含めた外出や社会参加ができることが大切です。集団で行うスマホゲームの中には夜中でないと難しかったり、自分だけが抜けることができない場合もあります。そういったことを話し合いながら一緒にルールを考えたりスマホゲーム以外の余暇を探したりしていくことが考えられます。
Q:小学生、中学生のスマホのルールづくりに悩んでいます。一日何時間、どんな制限を付けるかなどルールが知りたいです。
A:(井上先生回答)
1日何時間が良いかということに対してはそれぞれの年齢や使用内容、目的などによって異なると思います。親の立場から言うと宿題のあとのちょっとした息抜きとして30分や1時間といった声がよく聞かれますが、子どもに聞くと3時間とか5時間と言ってくることが多いです。親と子どもで互いに感情的にならず、なぜその時間でなければならないのかを納得しながら目標時間を決めていくことが大切です。
スマホのルールづくりには正解はありません。子どもの特性やスマホの使い方を加味した時間設定、最初からルールを決める、子ども自身がトラブルを体感してからルールを決めるなどそのご家庭に合ったルールづくりがあると思いますが、どの場合でも「子どもと親とがルールの必要性や目的を共有し、話し合ってルールをつくるということ」が非常に重要です。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。