マグロの聖地<三崎>に行ってみた 神社もおみくじもグルメもマグロ尽くし?【神奈川県三浦市】
神奈川県三浦半島の先端にある三崎港は、全国屈指のマグロの水揚げ量を誇る「マグロの聖地」。
そんな町を歩いてみると、あっちにもマグロ、こっちにもマグロ。魚好きにはたまらない風景が広がっています。
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そんな三崎の「マグロレポート」をたっぷりお送りします。
奉納するのはマグロ? マグロ神社は三崎の守り神だった
まず訪れたのは、三崎の守り本尊とされる「海南神社」。地元では「マグロ神社」の愛称で親しまれています。
三崎港から歩いて3分の場所に位置し、古くから大漁と航海安全を祈願する神社として、漁師たちに信仰されてきました。
市の水揚高統計によると、昭和43年に三崎魚市場の年間取扱量は約9.5万トンに達し、港には年間約500隻のマグロ漁船が入港していたとか。
境内からはそんな三崎の海が一望でき、出港前には1日に何回も安全祈願の神事がこの「海南神社」で行われていた記録があるそうです。
おみくじは「釣る」スタイル?
いざ鳥居をくぐり階段を上ると、「三崎のマグロ」と名付けられた像がまるでイタリア・ローマの「真実の口」のように口を開けて鎮座しています。
そして、おみくじは「引く」のではなく「釣る」スタイル。張り子のマグロみくじを1本釣りとは……さすが「マグロ神社」です。
毎年4月、海南神社で開催される「食の神フェスティバル」では、「包丁式」が執り行われます。平安時代から伝わる伝統技術で、手を使わずに箸と包丁だけを使ってマグロを切り分け、食と海への感謝を込め奉納されるそうです。
海南神社は、単なる観光スポットではなく、三崎の食文化と漁業の歴史を象徴する場所なのですね。
赤身でもない白身でもない「アカネミ(茜身)」
三浦市では、マグロの背と腹のあいだにある「血合い」の部分を「アカネミ(茜身)」と呼び、地元のお店ではアカネミステーキ、アカネミコロッケ、ニラ鍋など、趣向を凝らしたメニューが楽しめます。
かつて血合いは、赤黒い見た目と生臭さから敬遠され、廃棄されることも多かった部位。しかし、神奈川県水産技術センターの研究により、抗酸化物質のセレノネインやDHA、鉄分などの栄養素を豊富に含んでいることが明らかになりました。
栄養価の高さに加え、地元の漁業資源を無駄なく活用できる点が注目され、商品開発がスタート。皆から親しまれる名前をと一般公募が行われ、「赤身」「白身」に続く「第3の色」として、茜色の「アカネミ(茜身)」が選ばれました。
赤よりも深く、鮮やかな茜色は、新鮮な血合いの色をイメージしたネーミングです。
アカネミステーキを食べてみた
私も地元の食堂で「アカネミステーキ」をいただきました。
血合いはぼそぼそとしているイメージを持っていましたが、レアに焼かれてやわらかく、大根おろしとレモンでさっぱりと食べれます。
三崎を訪れることがあれば、「もったいない」から生まれた、地元ならではの美味しさをぜひ一度味わってみてください。
異色の将棋大会「三浦三崎マグロ争奪将棋大会」
三浦市では毎年12月頃、「マグロ争奪将棋大会」というユニークなイベントが開催されます。
その名のとおり、優勝賞品は三崎のマグロ! 異色すぎる「マグロ×将棋」のセンスには、思わず唸ってしまいます。
大会にはプロ棋士の参加もあり、真剣勝負が繰り広げられます。
優勝者への賞品はなんとマグロ一本。上位入賞者にもマグロブロックが贈られます。
参加費に昼食が含まれているのも特徴的。内容は年によって異なるそうですが、おにぎりに加えてマグロの漬け、あら汁、燻製、串カツなど、地元ならではのマグロづくしも魅力のひとつです。
実は以前、筆者の息子がこの大会に出場したことがありました。見事マグロブロックを持ち帰り、家族で大喜びしたことを覚えています。
マグロの数え方はどんどん変化する?
ちなみにマグロの数え方を知っていますか。
海にいるときは「匹」、水揚げされると「本」、解体されると「丁」。ブロックは「コロ」、スーパーの短冊は「柵」と呼びます。そして、お刺身は「切れ」ですね。
つまり、優勝賞品のマグロは解体されているので、正しくは「1丁」。息子が持ち帰ったのは「1コロ」でした。
新鮮な三崎のマグロをめぐって繰り広げられる将棋の真剣勝負。地元の活性化にもつながり、魚に親しむ楽しいイベントです。
三崎でマグロづくしの一日を!
三崎の食文化と漁業の歴史を今に伝えるマグロ神社、名もなき部位に光を当てたアカネミ、勝者にマグロが贈られる将棋大会──。どれも三崎ならではのユニークさと、海への敬意にあふれたものでした。
まだまだ知らない魅力が、この港町には詰まっていそうです。
(サカナトライター:こやまゆう)