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SUSHIBOYS、4年ぶりのワンマンはオーディエンスとの絆を確かめるような空間に

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SUSHIBOYS

SUSHIBOYS『名字集合ツアー』2024.10.18(fri)渋谷WWW X

全員名前Tで来てくれよな。Xで呼びかけているのは知っていたが、まさかこんなに着てくるとは思わなかった。SUSHIBOYS「名字集合ツアー」の東京公演。完全ソールドアウトのフロアのほぼ9割が自分の名字をでかでかとプリントした白Tを着ている。マジックで手書きの猛者もいる。新曲「What is your name?」にちなんだ企画のはずだが、見た目が面白すぎてもはや理由はどうでもいい。SUSHIBOYSの情報発信力の高さとファンのノリの良さを見せつける、4年ぶりのワンマンツアーの東京ファイナル開演だ。

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モーツァルト「レクイエム」から始まる荘厳なオープニング、と思いきや、「What is your name?」の強力なドリルビートに乗って飛び込んできたFARMHOUSEとサンテナの煽りにフロアは即沸騰。「死んだら骨」「ISCREAM」と爆音連続投下、ドリルとかトラップとかいろいろあるのだろうが詳しくないので全部「アガれるビート」にする。ベース音が死ぬほど太い。この規模のハコで聴くとマジで床と壁が揺れる。

オカッパのFARMHOUSEは蛭間、ボウズのサンテナは大木と書いたアディダスの白T。「LOUD」「ルーモス牧島」と、背景にミュージックビデオを流しながら盛り上げる。つくづく全裸の好きな人たちだなと思う。それもヒップホップのマッチョイズムではなく、青春パンクロックのヤンチャさに近い。歌詞をよく聴くと励ましや応援歌的メッセージが多い。だからたぶん学生世代中心のオーディエンスの感受性にとても近い。

SUSHIBOYS

「ヤバイね。空前絶後だわ。宇宙が始まって以来、名前Tを来た人間がこんなに集まったことはないだろ」(FARMHOUSE)

4年ぶりのワンマンを意識して、丁寧にグループの成り立ちを紹介する蛭間。埼玉県越生町出身。小中校と一緒だった蛭間と大木が、遊んでる延長線上で「なんでかわかんないけど音楽をやることになって今こういう感じ」って、大雑把すぎるが妙に納得。「軽自動車」を歌前に、ヒップホップマナーを伝えるためにコール&レスポンスを練習させるのも実に親切。大木の父・アキオの顔をでかでかと映して「アキオアキオ~」と歌わせる親孝行が素晴らしい。ちなみにアキオは腕利きの車の整備士らしい。

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そのまま「ダンボルギーニ」「ママチャリ」「高速道路」と、車にまつわる楽曲はちょっとBPMを落として快適にクルージング。ママ!チャリ!のやりとりで盛り上げ、DJのneo yosikawaを加えた3人の振り付けで盛り上げる、お約束のパフォーマンスがいちいち楽しい。「ママチャリ」の「みんな漕いでくれ!」という意味不明な煽りはうけた。巻き込み力が凄い。

SUSHIBOYS

曲が短い、しかもノンストップのDJミックスだからどんどん走る。カップヌードルのCMで替え歌された「OMG」から「Shopping Cart Racer」、全員揃って三角ポーズで決める「おにぎり」から「ブルーハワイ」、オーディエンスとの突然しりとり大会をむりやり「あ」に繋げて「アヒルボート」へ。文字にするとよくわからないが現場の楽しさだけは伝えたい。アヒルボートならぬアヒルプールをフロアに投げ込み、サビが終わってあっという間に回収される。一瞬にかけるエンタメプロの仕業だ。ホンダのCM曲「Ride」はCM映像を映しながら明るく得意げに。SUSHIBOYSのキャッチーなトラックとワードは、いつのまにか世間一般に浸透している。

FARMHOUSE

SANTENA

「スイカには種がある。人間にも種がある。悩みのタネだ。こいつはどれだけ育ててもロクなことがないから、気にしてる奴がいたら今俺たちが伐採しに来たぜ」(FARMHOUSE)

めちゃくちゃいいことを言っているがMVはやっぱり全裸の「木にしない」。青春ロックにも似たEDMラップチューンから「ルンバ」「白米」と得意の日常ネタでぐいぐい飛ばす。「みんな田んぼになってくれ」という大木の意味不明な呼びかけがうける。MCのリーダーは蛭間だが、いかつい顔でニコリともせずにおかしなことを言う大木の魅力がすごい。そういう例えはどうかと思うが、コンビ芸人の一つの典型がここにある気がする。

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ライブは佳境に入ってきた。またしても食べものソング「パンライススパゲティうどんそば」から「問題ねぇ」「Good day」へ。俺が言うGood、君が言うday、というコール&レスポンスが妙にくすぐったく懐かしい。ユノンセーンとか言ったり、古き良きヒップホップマナーを大事にしているのが見て取れる。フロア一体となった手振りが壮観だ。そして自伝的に過去をいつくしみ振り返る、リアルにセンチメンタルな「save」は、蛭間のラップにこれまでにない深い感情がこもる。SUSHIBOYSにアンコールはない。さぁラスト2曲。

「この曲を作ったのは2019年で、今は音楽でご飯を食べれるようになった。その時の夢はかなったけど、なりたいものになってもその先は続いてく。何が言いたいかと言うと、俺はさなぎのままでいたい。蝶になりたいという思いをずっと大切にしていきたい」(FARMHOUSE)

SUSHIBOYS

みんなも、蝶になりたいと思って踏み出した一歩は絶対何かのためになっているからーー。言葉を一つ一つ探しながら丁寧に、こういうことを普通に言ってしまえるところがSUSHIBOYSらしい。ラップ限定ではなくJ-POPとして届く範囲が広い。「SANAGI」から「DRUG」へ、蛭間と大木、neo、そしてオーディエンスとの絆を確かめるような楽曲で温かい共感に包まれる。笑顔とダンスと大騒ぎの果てにぐっと深い感動を胸に残す、これが2024年のSUSHIBOYS。

最後に揃って記念写真に納まり、4年振りのツアーは大成功で幕を下ろした。4年の間にSUSHIBOYSの存在は大きく世の中に知れ渡った。ここからはさらに上のステージでの活躍が待っている。貫き通すか変化してゆくか、すでに始まっている新章への期待を強く感じる90分だった。

取材・文=宮本英夫

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