【質問例付き】コンピテンシー面接とは?流れと対策方法を紹介
転職しながらキャリアを積む人が増えた現在、いかに転職後のミスマッチを回避するかは求職者・採用側の両者にとって大きな課題です。そこで、近年では採用選考に「コンピテンシー面接」を導入する企業が増えています。コンピテンシー面接という言葉は聞いたことはあるものの、どのような面接が行われるのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、コンピテンシー面接と従来の面接との違いや、コンピテンシー面接を実施する目的、具体的な流れなどを分かりやすく解説します。コンピテンシー面接の対策方法や質問例についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
コンピテンシー面接と従来の面接の違いとは?
コンピテンシー(competency)とは、高いパフォーマンスを発揮する人に共通する行動特性を表す言葉です。コンピテンシー面接は、 求職者の行動や考え方を深掘りし、高い成果を上げられる行動特性を備えた人物かを見極めます 。
従来の採用面接では、求職者の第一印象や職務経歴といった主観的な基準での評価のほか、志望動機や自己PRなどの表層的な質問への回答をもとに、採否を判断することが一般的でした。
一方、コンピテンシー面接の場合、求職者が過去にとった行動の意図や背景を深く探ることに焦点を当てています。このアプローチにより、求職者の行動特性や思考の傾向にもとづいて評価を行うことができるのです。
<コンピテンシー面接と従来の面接の違い>
コンピテンシー面接 従来の採用面接 評価方法 行動特性や思考の傾向など 第一印象や職務経歴など 評価の観点 客観的な指標にもとづいて評価する 主観的な基準での評価がされやすい 評価基準 入社後に成果を出せる行動特性を持っているか 面接担当者によって異なる 質問内容 過去にとった行動の意図や背景を深掘りするような質問 志望動機や自己PRといった表層的な質問
企業がコンピテンシー面接を行う理由は?
なぜ企業は、採用選考にコンピテンシー面接を取り入れるのでしょうか。主な理由として、次の4点が挙げられます。
求職者の本質を見極められ、入社後のパフォーマンスをイメージしやすい
企業がコンピテンシー面接を行う理由のひとつに、求職者の入社後のパフォーマンスを想定しやすいことが挙げられます。コンピテンシー面接は、求職者の過去の行動について「なぜそのような行動を選択したのか」「どのような考えにもとづいて行動したのか」を深く掘り下げていくのが特徴です。求職者の本質的な行動特性や思考の傾向を引き出すことで、 第一印象や職務経歴だけにとらわれず、その人の本質 を見極められます。
求職者が入社後にどのような行動をとるのかを予測する手掛かりになるため、実務への適性をイメージしやすくなり、入社後のパフォーマンスを予測するうえでも有効です。
採用のミスマッチを回避できる
採用のミスマッチを防ぎ、採用した人に長く働いてもらうこともコンピテンシー面接を行う理由のひとつです。従来の面接では、求職者の第一印象や職務経歴など表層的な情報をもとに評価が行われます。しかし、このアプローチでは、面接担当者の主観が採否に影響を与え、採用後のミスマッチや早期退職を引き起こすリスクがあります。
一方、コンピテンシー面接は、行動特性や思考の傾向など本質的な情報をもとに業務への適性を判断します。 求職者の適性を見極めることでミスマッチが起きづらく、入社後の早期退職を防ぐ ことが可能です。
面接担当者による評価のばらつきを回避できる
面接担当者ごとの評価のばらつきを最小限に抑えられることもメリットのひとつといえます。従来の面接方法では、求職者に関する特定の情報が面接担当者によって過大または過小に評価されるリスクがありました。例えば、求職者の前職の企業や出身大学の知名度のほか、前職の年収などです。
コンピテンシー面接では、企業が事前に定めたコンピテンシーモデルにもとづいて評価が行われるため、面接担当者の主観が影響しにくくなります。結果として、 面接担当者による評価のばらつきを抑えられ、一貫性のある評価基準にもとづいて採否を判断 しやすくなるのです。
職務経歴の誇張や矛盾を見抜ける
書類や面接において、求職者が自身の経歴や実績を誇張したり、事実でないことを述べたりしていないかを確認する目的もあります。
コンピテンシー面接では、求職者の過去にとった具体的な行動に焦点を当てて質問することで、求職者がどのような思考を持ち、どのように行動を起こしたのかが明らかにします。たとえ 職務経歴に誇張や偽りがあったとしても、面接を行うなかで矛盾が浮き彫りになりやすく、求職者の行動特性や思考の傾向をより正確に把握 することができるのです。
コンピテンシー面接の実施手順
コンピテンシー面接の準備を効果的に進めるためには、面接の実施手順を理解することが重要です。ここでは、企業がコンピテンシー面接を実施する際の一連の流れを見ていきましょう。
1. 社内で活躍している社員の行動特性を分析する
企業はコンピテンシー面接を実施するにあたり、自社で活躍している社員にヒアリングして共通する行動特性を分析します。これは、どのような行動特性を持つ社員が活躍しているのかを明らかにし、求職者に求めるべきコンピテンシーを明確に定義するためです。
2. 採用において重視する行動特性を決める
ヒアリングした内容をもとに職種や役割別に、コンピテンシー面接で特に重視すべき行動特性を決めます。面接で重視する行動特性をリストアップしたら、実際に現場で活躍するマネージャーやリーダー、成果を出している現場社員に抜け漏れや違和感がないかを確認し、企業のミッションやビジョン、バリューとの整合性がとれているかをチェックします。
3. 評価シートを作成する
求職者を一貫性のある方法で評価するために、評価シートの作成が一般的です。この評価シートには具体的な質問項目や評価基準のほか、評価の内訳や評価の比重、求職者の回答を記録するためのメモ欄などを設けます。
4. 面接担当者を育成する
コンピテンシー面接は、従来の面接と質問内容や流れが異なるため、企業は面接担当者がコンピテンシー面接の目的をしっかりと理解し、企業が求めるコンピテンシーに即した人材を見極められるようトレーニングを実施します。具体的には、コンピテンシー面接への理解を深める座学研修や、実際の面接を想定したロールプレイングなどを行います。
5. コンピテンシー面接を実施する
ここまでの準備を整えたうえで、企業はコンピテンシー面接を実施します。面接担当者が求職者の過去の行動や思考についての質問を重ね、求職者の行動特性や思考の傾向を探ります。求職者の話に一貫性があり、その行動特性や思考の傾向が企業の求めるものと合致していると判断されれば、コンピテンシーレベルが高いと評価されるのです。
6. 求職者を評価する
企業は、コンピテンシー面接の結果を 「受動的行動」「通常行動」「能動・主体的行動」「創造・課題解決行動」「パラダイム転換行動」 という、5段階のレベルで評価します。これには、面接担当者ごとの評価のばらつきを避ける狙いがあります。
各レベルが示す評価は次のとおりです。
<コンピテンシー面接における評価方法>
レベル 評価 レベル1:受動的行動 誰かに指示されたことだけをやる受け身の姿勢。みずから工夫や発信はしない。 レベル2:通常行動 与えられた業務をマニュアルどおりにこなす。みずから業務改善の工夫やアイディアを出すことはない。 レベル3:能動・主体的行動 みずから目標を設定し、達成に向けて行動する。創造的な提案を行うことは難しい。 レベル4:創造・課題解決行動 みずから課題を発見し、自分だけでなくチームや組織全体を巻き込んで課題解決を図る。 レベル5:パラダイム転換行動 独自のアイディアによって組織内の常識を覆す。リーダーシップをもって組織を変革する。
レベル4以上の求職者が、「採用後に会社の業績に貢献できる可能性がある」と希少価値の高い人材として評価されるでしょう。
コンピテンシー面接で押さえておきたい具体的な質問例
コンピテンシー面接では、「STAR面接」のフローに当てはめながら質問を投げかけていくことが一般的です。STAR面接とは、 「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(結果)」 の4つの観点から質問を深掘りしていく面接手法を指します。
ここからは、コンピテンシー面接で押さえておきたい質問例を、STAR面接のフローに沿って見ていきましょう。
1. Situation(状況)
Situation(状況)の質問では、 求職者が過去に直面した状況 について聞かれます。
具体的な質問例は、下記のとおりです。
Situation(状況)の質問例
当時、どのような課題を抱えていましたか あなたはどのような役割やポジションでしたか プロジェクトの人数、どのような役割分担をしていたか教えてください プロジェクトにはどのくらいの期間携わっていましたか これまで関わってきた業務の中で、特に力を入れたものは何ですか
求職者は、事実を誇張したり曲げたりせずに、ありのままの事実を簡潔に述べることが大切です。
2. Task(課題)
Task(課題)に関する質問では、Situation(状況)で回答した状況下で解決が求められた課題について聞かれ、 課題解決能力の高さやストレス耐性などがあるか を見られます。
具体的な質問例は、下記のとおりです。
Task(課題)の質問例
どのような目標を設定していましたか 目標を設定したときに考えたことを、優先順位を含めて教えてください あなたがそれを行うにあたり、問題・課題と認識したことは何ですか 今までの業務で経験したトラブルの中で印象的なものは何ですか トラブルの原因は何でしたか 課題を解決するためにどのような役割が求められましたか
求職者は、自発的に設定した課題や、チームやプロジェクト全体の課題解決にどう貢献したかを回答しましょう。
3. Action(行動)
Action(行動)とは、Task(課題)に対して具体的にどう対処したのかを尋ねる質問のことです。 行動の背景にある意図や思考方法 を問われていると考えてください。
具体的な質問例は、下記のとおりです。
Action(行動)の質問例
課題を解決するために、具体的に何をしましたか なぜその行動をとったのか、理由や意図について教えてください とった行動を順番に教えてください 解決へと導く過程で、どのようなことに苦労しましたか
求職者は、行動した手順や思考のプロセスを分かりやすく明確に話すことを意識しましょう。
4. Result(結果)
Result(結果)に関する質問では、 求職者がとった行動の結果 について聞きます。
具体的な質問例は、下記のとおりです。
Result(結果)の質問例
計画通りに実行ができましたか 課題を解決したことによって、どのような結果が得られましたか 解決に向けて行動したことで、周囲にどのような影響を与えたと思いますか 結果を受けて、反省点や改善点はありますか 自身の成長につながったと思う理由があれば教えてください
求職者は、実際に解決できたという事実だけではなく、解決に至るまでの過程で得た学びや成長についても伝えることが大切です。
コンピテンシー面接の対策方法
コンピテンシー面接では過去にとった具体的な行動と、その背景にある意図や思考が問われることから、事前に対策をするのが難しいと感じるかもしれません。しかし、コンピテンシー面接の評価方法を理解すれば、対策をすることは十分可能です。
まずは、コンピテンシー面接における質問の流れに沿って、あらかじめ回答を考えておきましょう。過去の経験を問われた場合を想定し、前述の STARの流れに沿って端的に答えられるよう、伝えるべきことを整理しておく と安心です。想定回答のバリエーションを多く準備しておけば、面接当日に落ち着いて答えることができるでしょう。
また、面接では 「自分が伝えたいこと」よりも「企業が求めている情報」に焦点を当てる ことも重要です。企業がコンピテンシー面接を通じて何を知りたいのかを理解し、それにもとづいた具体的なエピソードを用意しておくことが、成功へのカギとなります。
コンピテンシー面接を成功させるためのポイント
コンピテンシー面接を成功させるためにも、次の4つのポイントを押さえて面接に臨んでください。
応募先企業が求める能力や人柄を知る
コンピテンシー面接を受ける前には、 入念な企業研究を行い、応募先企業が求める能力や人柄を把握しておく ことが大切です。
コンピテンシー面接を採用している企業は、自社が理想とする能力や人柄を定義していることが一般的。同じ企業内であっても職種やポジションによって求められる要素が異なる可能性があるため、事前に徹底した企業研究を行うことをおすすめします。
企業研究を行う際には、企業が採用サイトなどで公開している「求める能力や人柄」だけでなく、社員インタビューや企業のSNS投稿などから企業文化や価値観をつかむことも有効です。
質問に正直に回答する
コンピテンシー面接は、受け答えに対してさらに深く質問を繰り返していくため、 過剰な自己アピールや事実と異なる発言などをすると、答えに詰まったり辻褄があわなくなったりする でしょう。
誇張や偽りがあると判断された場合、面接の評価を下げてしまうリスクがあります。質問への回答は、自身が実際に経験したことや感じたことにもとづいて、正直に行うことが大切です。
質問に簡潔に回答する
コンピテンシー面接では、質問された内容のみに対して簡潔に答えるようにしましょう。STARの流れを意識するあまり、面接担当者から聞かれる前に課題や行動、結果などを話してしまわないように注意してください。
また、状況を分かりやすく伝えることは大切ですが、 説明が長くなりすぎないよう気を付けましょう 。面接担当者が求めているのは、その背後にある求職者の行動特性や思考プロセスであることを忘れずにしてください。
成功体験だけでなく失敗体験から得たことも話す
成功体験だけでなく、失敗体験から得た学びも評価につながります。コンピテンシー面接では、仕事での失敗談や問題点を聞かれることも多くあります。ネガティブな部分に焦点を当てすぎないように注意して、失敗の原因や対策だけではなく、その経験から得た学びについてもしっかり伝えるようにしましょう。
まとめ
コンピテンシー面接は、求職者の過去の行動や思考方法に対して質問を重ね、深く掘り下げることで、第一印象や職務経歴といった表層的な評価に頼らない採用手法です。企業はコンピテンシー面接を行うことで、求職者の行動特性や思考の傾向をより正確に把握でき、入社後のパフォーマンスを予測しやすくなります。
求職者は、採用選考でコンピテンシー面接が実施される可能性を考え、事前に適切な準備をしておくことが大切です。今回紹介した面接の流れや質問例などを参考に準備を進め、コンピテンシー面接を成功させてください。
この記事の監修
高野 秀敏
株式会社キープレイヤーズ 代表取締役
1999年に株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。人材紹介事業の立ち上げに携わり、企業や転職者の転職サポートを行う。転職者とのキャリア面談11,000人以上、経営者との採用相談4,000人以上の実績を持つ。
2005年に株式会社キープレイヤーズを設立し、ベンチャー企業・スタートアップ企業の専門転職エージェントとして企業に応じたソリューションを提案。NewsPicksプロピッカーへの就任経験や、自身のYouTube活動など様々なメディアで情報発信を行う。
代表著書 『転職して「成功する人」と「後悔する人」の習慣 転職支援の実績でナンバーワンを誇る著者が教える!仕事とキャリアの考え方』『失敗しない!転職の技術』等 YouTube 高野秀敏のベンチャー転職ch X(旧Twitter) 高野秀敏/ベンチャー転職/エンジェル投資家/M&A 企業サイト 株式会社キープレイヤーズ