日本いかにも土産物考~村上宗隆・岡本和真選手も身に着けていた、あの記念メダル編~
どこの家庭の引き出しにも、1枚や2枚は転がっていそうな土産(みやげ)。それが記念メダルではないだろうか。昭和の時代、観光地には必ずと言っていいほど記念メダルの販売機があった。金色に光るそのメダルは、まるで物語に出てくる金貨のように映り、自分の名前や日付などをガヒョンガヒョンと刻印できる機械とともに、子供たちの心を捉えたものである。
記念メダルは、どのような場所で販売されているか?
悲しいかな、多くの子供は成長するにつれ、そうした記念メダルを集める欲を失ってしまう。私自身も大人になってからは、旅先で記念メダルを購入することはほとんどなかった。
しかし、このままいけば土産としての記念メダルそのものが廃れてしまうかもしれない。そう思った私は、各地で記念メダルを見つけた時にはできるだけ入手しよう、と思い始めるようになった。
記念メダルは、どのような場所で販売されているのだろう。まず、城址などの歴史的な観光施設にあることが多い。
新しくできた観光施設に記念メダル販売機が置かれることは少ないが、古くからの観光施設では、昭和の時代から記念メダルが土産物として販売され続けているからだと推測できる。1964年に開園した、戦国武将のコンクリート像が200体以上も設置されている『関ケ原ウォーランド』にも、やはり記念メダルは存在した。
まだある、記念メダルを見つけられるスポット
各地のタワーもまた、記念メダルを容易に見つけられるスポットである。高いところに上った人は、何かしらその記念を残したくなるものなのかもしれない。
東京スカイツリー(R)は2012年開業と比較的新しいタワーだが、それでも売店には記念メダル販売機がズラリと並び、外国人観光客なども群がっていた。
博物館も記念メダル発掘スポットだ。
自館の所蔵品などをデザインした土産物を作るにあたり、記念メダルは最適のアイテムなのだろう。近頃では、常設展ばかりではなく、特別展の際にメダルが作られることも多い。
こうして集めた金色に光るメダルを眺めていると、まるで自分がお金持ちになったような気分になる。この高揚感をみんなに共有できないものか……と思っていた矢先に、あるニュースが飛び込んできた。
再ブームの期待を抱かせた、とあるニュース
2024年7月23日、プロ野球オールスターゲームがエスコンフィールド(北海道)で開催された。試合前、出場選手が私服でファンの前に登場する「ブルーカーペットショー」が行われたのだが、そこに登場した村上宗隆(ヤクルト)・岡本和真(巨人)の両選手が、首から金に光るお揃いのメダル型ネックレスを下げていたのだ。パッと見、高価なアクセサリーのように見えたそのメダルは、まごうかたなき記念メダルではないか。
ショーの後の村上選手のインタビューで、それが札幌駅直結のJRタワーで購入した記念メダルであることが明らかになった。岡本選手にも同じものをプレゼントしたという。きっと刻印もしたに違いない。両選手とも推定年俸が数億円にも上る一流選手であるが、そうした選手の心をもつかんでしまう記念メダルには、やはり抗いがたい魅力がある。
今回の一件で記念メダルの再ブームが起きるのではないか、というほのかな期待を抱きつつ、私はまだ見ぬ記念メダルを探しに行こうと思う。
イラスト・文・写真=オギリマサホ
オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書に『半径3メートルの倫理』(産業編集センター)、『斜め下からカープ論』(文春文庫)。