毒にも薬にもなる不思議な唾液!? 糖尿病の薬の元にもなった”トカゲの毒”とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】
糖尿病の薬の元にもなった[トカゲの毒]
毒にも薬にもなる不思議な唾液
トカゲは、は虫類でも特に種類が多く、5000種以上を数えるともいわれています。そのうち有毒種は、神経毒を持つドクトカゲ科のアメリカドクトカゲとメキシコドクトカゲ、出血毒を持つオオトカゲ科のコモドオオトカゲの3種。ここでは、医療の分野に貢献しているアメリカドクトカゲに注目してみたいと思います。
アメリカドクトカゲの生息地はアメリカやメキシコ北西部の砂漠地帯。派手な模様にずんぐりした体が特徴で、非常に臆病な性格でもあります。それは、ほかの動物が近づくと岩のすき間などに逃げ込んで通りすぎるのを待つほど。また、日中はほとんど岩のすき間や地中で寝ていて、日没をむかえるころに活動します。活発なのは短時間で、一生のほとんどを地中で過ごすともいわれています。
さて、そんなアメリカドクトカゲが医療の分野に貢献しているというのはどういうことでしょう。実はこの種のトカゲの唾液に含まれる「エキセンディン-4」という毒の成分が、糖尿病の治療薬となる作用を持っていることがわかったのです。アメリカドクトカゲは、食前と食後で血糖値がほとんど変わりません。つまり唾液に血糖値の上昇を抑える効能があるのです。獲物を捕らえるためのトカゲの毒が、人間の病気の治療に使えるとはちょっと驚きです。
毒はあるけど臆病なアメリカドクトカゲ
・毒は下アゴの唾液腺から分泌される。ただし毒性は弱く、人間での死亡はまれ。
・キバはあまり鋭くないので、何度も噛んで傷口から毒入りの唾液を注入する。
・臆病な性格で、ほかの動物が近くを通ると岩のすき間などに身を潜めてしまう。
唾液の成分から糖尿病治療薬へ
アメリカドクトカゲの唾液には、血糖値を下げる作用のあるエキセンディン-4という成分が含まれている。実際にこの毒から「エキセナチド」という注射薬も開発され、医療に応用されている。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』監修:船山 信次