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「うちの子まったく勉強しません!」【中学受験】どう対応? 難関校・高合格率の『グノーブル』ベテラン講師が「保護者の悩み」にガチ回答!

コクリコ

教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる「中学受験伴走」連載。今回は中学受験塾「グノーブル」に取材。「勉強法」「志望校」にまつわる保護者の悩みについてベテラン講師が回答。(全2回の2回目)

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教育ジャーナリスト・佐野倫子です。「中学受験伴走(サポート)」連載、前回に続き「保護者のお悩み相談会」編です。今回も、難関校合格率に定評がある中学受験塾「グノーブル」練馬校・山下倫央先生に、「勉強法」「志望校」についてお答えいただきました。

帰宅後すぐダラダラしてしまうときの声のかけ方は?

Q1:学校や塾から帰宅後、すぐダラダラしています。どのように声をかければよいでしょうか?

山下倫央先生(以下、山下先生):保護者の方は、家での姿しか見ていないので、ダラダラしている姿を見ると不安になるのも無理はありません。しかしそれは、塾や学校で頑張ってきた反動かもしれません。

というのも、子どもにとって家は「休息の場」であり、「緊張を解く場所」だからです。塾という、いわば「戦いの場」で全力を尽くし、家では「剣と盾を置いている」というイメージでしょうか。

山下先生:受験生にも、息抜きやリラックスタイムは必要です。とはいえ、一方で保護者の方は、必要以上に気にしすぎず、穏やかに正論を言ってあげていいと、私は思います。例えば、「そろそろ昨日の復習をしたほうがいいよね」「宿題をやったらどうかな」など。

親が何も言わなくなると、逆に不安になる子もいます。感情的になるのはもちろんNGですが、そういう言葉がけも含めて、保護者の方の役割だと思っています。

また、正直なところ、多くのお子さんにとって、家での30分の学習は塾での10分ほどにしか相当しません。家での勉強の効率はどうしても落ちるんです。子どもは教室というハードな環境でこそ伸びるものです。塾でがんばっていると思って、多少家では目をつぶってあげてはいかがでしょうか。

「ケアレスミス」が一向になくならないときの向き合い方は?

Q2:「ケアレスミス」が一向になくなりません。どう向き合えばよいでしょうか?山下先生:その質問もよくいただきますが、子どもにいくら口頭で「注意しようね」と言ってもまず治りません! 人間は、重要だと思ったことにしか集中できないのです。つまり「これを間違えると損をする、もったいない」と、子ども自身が実感することが必要です。

塾に通っていると、「あと1問の正解で上のクラスに行けた」「あと偏差値が2ポイント上がれば合格圏だった」など、僅差で悔しい思いをすることが度々あります。

それを積み重ね、6年生になったときに、「この1問のケアレスミスがもったいなかった!」と思うようになるのです。

こう気づけるように、保護者の方は「このミスはもったいなかったね」など、具体的に問題・解答用紙を見て声をかけるようにして、本人に自覚を促すようにしてください。

受験直前期に成績の「ピーク」は合わせられる?

Q3:ピーキングがうまくいかなくて、第1志望を外してしまったという体験談を目にしました。受験直前期に成績や調子のピークを合わせることはできるのでしょうか?

山下先生:私は、子どもには「ピーク」という概念はないと思っています。子どもは、常に成長し続けているのです。「今がベスト」で「明日はもっと良くなる」でいいのです。

だから、人為的に操作するような「ピーク」を考える必要はありません。日々成長する中でも成績にはアップダウンが存在しますし、とくに直前期に下降傾向になると不安になって志望校をより安全にしたくなることもあると思います。

気持ちはわかりますが、志望校を「安全のために」安易に入りやすい学校に変更することはお勧めしません。例えば変更して「合格できるな」と思うと気が緩む子もいますし、結果として「そこが天井になった」というケースもあります。

本人がどうしても安全にというのなら別ですが、親御さんがリスクを避けようとして無理により入りやすい学校に変更することは、後々、後悔につながりやすいですね。これは悪い意味での「ピーク」づくりになってしまいます。

また「ピーク」とは別に、当日の体調や調子というものは当然ありますので、これは保護者の方が整えてあげてほしいと思います。

親子で志望校の意見が別れたときはどちらを優先する?

写真:mapo/イメージマート

Q4:親子で志望校について意見が分かれたときはどちらを優先すればよいでしょうか?

山下先生:親と子の間にずれがあるのは当然です。完全一致を求める必要はありませんし、どんな選択にもいろいろ感じることは自然のことです。

後悔はつきものです。私がお答えできるのは、「よりましな後悔」を選ぶことが大切ということ。そう思うと、絶対にベストな志望校選定がある、という考えを変えることができます。

どこにいっても完璧はないし、後悔だってきっとあります。だから、最終的には本人にゆだねるのがいいと思います。例えば、通学時間が1時間半もある学校へ、親に強制されて通うのはとてもつらく感じるでしょう。一方で、本人の熱望校であれば、通学時間の長さはそんなに気にならないと思います。そういう意味で、本人の希望を優先するのが、本人の満足感、充足感を上げることにつながると思われます。

6年生の学習時間の配分はどうする?

Q5:受験生の6年生になったらとにかく時間が足りません! 学習時間の配分を教えてください。

山下先生:まず、「得意科目・苦手科目」という分け方をやめたほうがいいですね。例えば算数なら、単元ごとの正答率を見て、落とすべきでない問題を確実にできるようにする意識を持つこと。どこが「もったいない」箇所か、塾の先生と一緒に確認をしてみてください。

そして苦手なところだけを集めてずっとやらせる、というのは子どもにとってとてもつらいことです。せっかくのやる気をなくしてしまいますから、得意なところ、好きな分野もさらに勉強していくことが大切だと思います。

山下先生:家庭学習の工夫としては、例えば、お風呂やトイレに年表や地図を貼るという方法は、ビジュアル性の高い、目から入る情報が重要な分野で有効ですね。地図や動植物の系統図、単位換算など、まとまったものを何度も見ると定着が期待できます。

そういった背景知識があると、塾で新しいことを学習したときに、「“福井県”はあのあたりだな」「この植物の特徴はあれと似ているな」など、ベースの情報が結びついて身につきやすくなります。

もうひとつ、テスト結果だけにとらわれるのではなく、「国語が苦手」な場合は、「国語」とひとくくりにするのではなく、「漢字が苦手」「読解が苦手」、例えば算数でも「速さが苦手」「相似比の理解が不十分」など、具体的に分けて考えると対策をとりやすいです。

例えば、漢字や知識問題が弱いなら、アウトプット不足が原因。手を動かして、とにかくたくさん書かせること。読解は音読も効果的ですよ。意識して、活字に触れる量を増やしてみてください。

このように、学習ごとに細かく切り分けながら、塾の先生とも共有して家庭学習に結びつけていけるとよいですね。

最後に、保護者の方にはとにかく塾の先生に悩んでいることがあるならすぐに相談してほしいということです。この記事を読む時間があるなら、通っている塾に、今すぐ相談電話してほしいぐらいです(笑)!

相談しづらいというお声をいただくこともありますが、塾講師たちは相談を待っていますし、個々の生徒に即したアドバイスは有効なものです。

いつでも遠慮なく、相談してください。講師も生徒のことをしっかり見ていますので。試験当日へ向けて、一緒に頑張りましょう!

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2時間近い取材でしたが、山下先生の言葉の端々から、長年最前線で子どもたちを合格させているプロの知識と慧眼に感動しました。

やっぱり「餅は餅屋」。困ったことや、悩んでいることはぜひお子さんを預けている塾の先生に相談してみてくださいね。

撮影/日下部真紀
取材・文/佐野倫子

『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)

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