【第二次世界大戦終戦から80年】戦争と平和、核兵器廃絶。私たちは何ができるのか。難しいと遠ざけず、みんなで今こそ考えたい!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「第二次世界大戦終戦から80年」。先生役は静岡新聞の高松勝ニュースセンター専任部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2025年2月24日放送)
(山田)今日(2月24日)の静岡新聞一面に、ロシアのウクライナ侵攻から今日で3年だという記事が出ていました。三島にウクライナから避難した人の記事もありましたね。
(高松)今年は第二次世界大戦の終戦から80年の年です。今、ロシアのウクライナ侵攻からちょうど3年が経過し、和平の道筋がつかないという状況です。県内にも、ウクライナから避難して生活している人が、三島や浜松などに数十人規模でいるといわれています。今の状況では、戻るのも非常に難しいということがありますね。
イスラエルの問題についても、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意には「人質の解放」などさまざまな条件付きの協議があり、先行きが見えない状況です。戦後80年がたっても、世界から戦火は消えません。
もう一つ、昨年12月には、国内の被爆者らで組織する「日本被団協」がノーベル平和賞を受賞しましたが、これも核廃絶ということに関しては長い道のりで、難しい状況が続いています。
「平和」や「核廃絶」という大きな話になると、「ちょっと対応できないよ」と思うかもしれません。でも、1人1人に考えられることがあるんじゃないかなと思い、今日はこの話題を取り上げます。
被爆2世・3世や、血縁のない人も「語り手」として
(高松)まず、ノーベル賞の話からしたいと思います。静岡新聞では、今、「伝言 しずおか戦後80年」というタイトルの連載を行っています。今回、被爆者についてのシリーズを展開しました。
1945年の8月6日に広島、8月9日に長崎で原爆投下があり、静岡県内にも直接被爆された方たちがいらっしゃるんですが、その人たちの2世、3世という時代になってきています。
昨年12月にノルウェーのオスロでノーベル平和賞の授賞式があり、ここでも被爆者の方たちが「2世、3世の若い人たちに記憶を継承していってほしい」という発言をされていました。
日本は唯一の戦争被爆国なんですが、こうした方々がこれからどうやって語り継いでいくのか。今年の8月に向け、非常に大事な局面になっていくと感じます。
(山田)戦争と、原爆が落とされた当時の話をしていく語り部さんっていう方がいますね。僕も中学校の修学旅行で語り部さんの話を聞きました。語り部さんもいなくなってきているから、それも引き継いでいかなきゃっていう話ですよね。
(高松)そうですね。広島では既に継承者育成の取り組みが行われています。血縁者ではない人たちが、体験者から直接話を聞いて勉強し、継承者という資格のようなものを持って、活動する制度もあります。直接の体験者ではない人たちが一生懸命勉強した「記憶」を持って、語り部の活動をすることが広まっています。
(山田)へぇー。
(高松)あとは、広島や長崎は数多くの被爆証言の映像記録を保管しているので、映像を見て勉強してもらうということもたくさんやっています。
こういった映像的なものを使っていくというアプローチと、当事者以外の人にも勉強してもらい体験をみんなでつないでいくことの両方が、これからますます必要になってくるという状況ですね。
(山田)そうか、血縁じゃなくてもこの語り部をどんどん繋いでいくっていう活動をしているわけですね。でも、僕も中学生当時話を聞いたとき、何ていうか、怖い話を聞いている感じでしたもんね。リアルすぎて。
(高松)広島の平和記念資料館は今年度、これまでで最も人が来ていると言われています。やはり、ノーベル平和賞の効果が非常に大きいようですね。
今年が80年目の夏ということで、勉強する機会としては非常に意義があると思います。そういう「怖いもの」とか「難しいもの」っていうところを、どう考えていくかですよね。
「核兵器がなくなる」流れと逆行…!?
(高松)今のウクライナの問題を見ていても、一時期、ロシアが核使用をちらつかせたというようなこともあるので、過去の話というわけではないですよね。今、世界には1万2000発ぐらいの核兵器があると言われています。皆さん、歴史の授業で習ったように、アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国というのが国連常任理事国でもある核保有国なんですが、その後の流れでインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮まで保有しているとされています。核を持っている国って、増えているんですよ。
(山田)増えてるんだ。
(高松)そのため、状況的には、「世界から核兵器がなくなる」っていう流れとは逆行した流れになっている部分があり、核兵器禁止条約というのが一応あるんですが、これもそういった核保有国は参加してないんです。
(山田)それじゃ意味ないです。
(高松)実際、日本も、参加していないんです。アメリカも参加していません。日本は核兵器禁止条約によってではなく、核兵器を持つ国と協調した外交努力をすることで核廃絶を目指していくというのが日本の政策的な立場です。そういういわば「建前」にしてあることで、条約の批准には至ってないんですが、これについても、日本の被爆者の皆さんからは非常に批判があるところです。国際関係の微妙な関係の上で、日本の立場ははっきりしない感じになっていますね。
(山田)僕、本当にびっくりしてますよ。日本は入ってないんですね。
(高松)そうです。3月に核兵器禁止条約の参加国が集まる会議があり、これに対し、石破政権がオブザーバーとして日本の代表団を出すかどうかが注目されていましたが、見送ったんですね。このことにも被爆者からは非常に失望の声が出ました。
政府としては、歴代の首相も「核なき世界」を目指す方針は変えていないし、非核三原則も当然堅持しているし、というのはあるんです。ただ、戦後80年の節目で、しかもノーベル平和賞を日本被団協が受賞したという流れの中で、日本がもう一歩踏み込むのかどうか、日本の姿勢に世界の注目が集まっているとは言えると思います。
一般市民も含めて、戦後80年という年が、やはり戦争体験者や被爆者の皆さんからすると、「ラストチャンスだ」という声が非常に多いのです。
(山田)ラストチャンス?
(高松)「この戦後80年で若い人たちが考えてくれなければ、もうこういった声というのがなくなってしまうんじゃないか」という非常に切実な声が多く聞かれます。ですから、「何か難しい話だ」とか、「ちょっと近寄りがたい話題だから考えるのはやめよう」という捉え方をされないようにするためにどう持っていけばいいのか、本当に難しい問題ですが、今、問われているところですね。教育関係者だけではなく、いろんな情報発信をする人たちも含め、みんなで考えることだと思います。
(山田)その中で、静岡新聞としてもこの連載で、それをある意味模索しながらみんなに伝えていくということをやっているんですよね。
(高松)そうですね。ただ、若い方も勉強はされているとは思うんですが、やっぱり80年前の話となると、おじいさんおばあさんでも、もう90、100歳ぐらいまで生きている方じゃないと、直接体験としては話せないですよね。ご高齢のご親族がいたとしても、直接体験を聞くとなるとなかなか大変なので、リアリティを持って認識するというのも非常に難しいと思います。
戦争を扱ったアニメや映画も、知るきっかけに
(高松)こういうテーマのアニメやドラマなど、何か記憶に残ってるものってあります?
(山田)たくさんありますよ。戦争ものの映画だと、「この世界の片隅に」は特によかったかな。戦争時代にタイムスリップしちゃうものは結構多いですね。「硫黄島からの手紙」とかもありましたね。ただ、それが「戦争をテーマにやってるから、戦争について深く考えなきゃ」ってよりも、一つの作品として見ちゃってるところが多かったりするのかなと思います。
(高松)なるほど。今の40代、50代ぐらいの世代だと、ドラマや映画など、エンターテインメントも含めて戦争の話を見聞きしてきていると思うんですが、10代、20代の方たちや今のSNSの時代を生きる人たちにとって、日本の80年前の戦争というのが文化として入ってくるようなものは、当然、すごく減っていると思うんです。その辺の部分も、一つの課題ではありますよね。
(山田)そうですね。今日取り上げた静岡新聞の「伝言 しずおか戦後80年」の連載自体はまだまだ続いていくわけですよね?
(高松)これからもできるだけ、若い人たちに関心を持ってもらえるように続けていきたいとは思います。
(山田)ぜひ、皆さんにも注目していただきたいと思います。今日の勉強はこれでおしまい!