ハイクオリティすぎて驚愕!岩崎宏美のアルバムに世界中のシティポップ・ファンが注目
名盤発掘のような気持ちで選んだ岩崎宏美10枚のアルバム
今から約20年前。岩崎宏美がデビュー30周年のタイミングに、とある雑誌の企画で『岩崎宏美的AOR名盤10枚』という特集をしたことがある。筆者が選んだ10枚のアルバムについて、宏美さんが1枚1枚丁寧にコメントをくださって、とても嬉しかったのを昨日のことのように思い出す。そんな宏美さんも2025年4月でデビュー50周年を迎え、時の流れの速さを感じずにはいられない。
筆者が選んだ10枚のアルバムのほとんどは、近年ブームになっている “シティポップ的アルバム” という概念だったが、当時(2000年代)は “シティポップ” というジャンルは死語に近いワードだったため、あえて “AOR” とカテゴライズした。セレクトした10枚は、1978年〜1997年までの期間に発売されたアルバムで、名盤発掘のような気持ちで選んだ記憶がある。その時に選んだアルバムは、以下の通りだ。
▶ パンドラの小箱(1978年)
▶ WISH(1980年)
▶ 戯夜曼(1985年)
▶ cinéma(1985年)
▶ わがまま(1986年)
▶ よくばり(1987年)
▶ Me too(1988年)
▶ MY GRATITUDE -感謝-(1995年)
▶ FULL CIRCLE(1995年)
▶ SHOWER OF LOVE(1997年)
1980年代に発売されたシティポップ4作品のクオリティの高さ
時を経て、2024年12月、ビクターから『マスターピース・コレクション~フィーメル・シティポップ名作選』の第4弾企画として、岩崎宏美のシティポップ・サウンドのアルバムが4タイトルリリースされた。
▶ WISH(1980年)
▶ 私・的・空・間(1983年)
▶ わがまま(1986年)
▶ Me too(1988年)
岩崎宏美の場合、この4作品以外にも名盤は多く存在するのだが、これらは1980年代に発売された代表的な4タイトルだ。しかし発売当時は、特に大きなヒットになっていたわけでなく、近年のほうが評価が高い。つまり、丁寧に作られた作品は旧譜にはならず、必ず評価されるということなのだろう。筆者も20年前に4枚中3枚をセレクトしたが、この4作品は、どのアルバムも非常にクオリティが高い。
筒美京平が作曲、編曲を手がけた「Street Dancer」の人気の高さ
現在、Spotifyにおける岩崎宏美のトップトラックは「聖母たちのララバイ」、続いて「シンデレラ・ハネムーン」で、もちろんこの2曲は誰もが納得の彼女の代表曲だ。しかし、3番目に再生されている楽曲が、アルバム『WISH』に収録されている「Street Dancer」だというのだから驚きだ。
アルバム『WISH』は全曲LAレコーディングで制作された名盤で、作曲は全て筒美京平。人気の「Street Dancer」はアレンジも筒美が手がけている。このアルバムにはシングルにもなった「女優」が収録されているのだが、ロサンゼルス録音によるアルバムバージョンで収録されており、2バージョンを聴き比べてみるのも面白い。他にも後藤次利アレンジによるメロウな「Kiss Again」や、軽快なLAサウンドの「処女航海」など、聴きどころが非常に多いアルバムだ。
玉置浩二作曲による人気曲「Morning Breeze」
『私・的・空・間』は1983年の作品で、筒美京平によるシングル「素敵な気持ち」と「真珠のピリオド」が収録されている。現在、アナログ盤などで再発、再評価されているシティポップ系のアルバムはこの時代にリリースされた作品が多いのだが、当時はそこまで支持されていたサウンドではなかった。
アルバム10曲中7曲を筒美京平、3曲を玉置浩二が作曲を手がけている。当時の玉置浩二は安全地帯のブレイク前ではあったが、すでにメロディメーカーとしての才能を発揮していた。人気曲「Morning Breeze」は玉置作曲による1曲だ。
和モノ・ブギ―の最高峰、「カサノバL」
1986年のアルバム『わがまま』は、前年に発売されたアルバム『cinéma』で数曲の作曲を手がけていた山川恵津子ワールド満載の1枚。近年、山川サウンドの再評価が高いが、80年代にはこんな素敵な作品を残していたのだ。シングル「小さな旅」以外の8曲は全て山川によるアレンジで、アカペラのコーラスのみで構成された「好きにならずにいられない」のアルバムバージョンの他、「Street Dancer」に続く人気ナンバー「カサノバL」は世界中で話題の和モノ・ブギ―の最高峰だ。
シティポップ的エッセンスの濃い名盤「Me too」
そして、白眉は1988年に発売された『Me too』だ。この作品は当時のアルバムチャートで92位と全くヒットしなかった。しかし、筆者は当時からこのアルバムを好んで聴いており、評価されないことが不思議だったくらい。収録曲は和泉常寛と濱田金吾が作曲しており、非常にシティポップ的エッセンスの濃い1枚だ。特に、1曲目に収録されている軽快な「Dance with a loneliness」からワクワクとした気分にさせてくれる。
今聴いても全く古さを感じない岩崎宏美のシティポップ・サウンド
その他、1984年にはLA録音の『I WON'T BREAK YOUR HEART』をリリース。このアルバムにはデイヴィッド・フォスター、ビル・チャンプリン、ラルフ・ジョンソン、スティーヴ・ルカサーらが参加しており、ビル・チャンプリンとは2曲デュエットもしている。
また、1995年のアルバム『FULL CIRCLE』もLAレコーディングで、全曲 “13CATS” がアレンジを手がけた非常に上質な作品だ。さらに1997年のアルバム『SHOWER OF LOVE』では、吉田美奈子、角松敏生、佐藤竹善らが作曲・編曲で参加している。このアルバムは残念ながらチャートインしていないので、隠れた名盤と呼んでも差支えないだろう。
そう、昨年末に再発された4作品や、筆者が20年前に選んだ10枚は今聴いても全く古さを感じない作品ばかり。50周年を迎えたこの機会に是非シティポップ・サウンドの岩崎宏美の世界を体感していただきたい。
HIROMI IWASAKI 50th TBS Special Collection
・発売日:2025年3月5日(水)
・仕様:6枚組DVDボックスセット(三方背豪華BOX / 特製デジパック仕様 / 解説書付き)
・価格:29,480円(消費税込み)
・DISC1「in 8時だョ!全員集合」(約66分予定)
・DISC2「in ザ・ベストテン」(100分)*数々の名場面を久米宏&黒柳徹子とのトークも含め収録
・DISC3「in ロッテ歌のアルバム +(プラス)」(64分)
・DISC4「in サウンド・イン“S” +(プラス)」(71分)
・DISC5「in BS-TBS」(約68分)
・DISC6「award 日本レコード大賞 +(プラス)」(約75分)合計444分