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【倉敷市】くらしき緊急告知アプリ ~ 防災拡声塔に変わる、「市長の声」で避難情報など災害時の緊急情報を発信する無料のスマホアプリ

倉敷とことこ

くらしき緊急告知アプリ ~ 防災拡声塔に変わる、「市長の声」で避難情報など災害時の緊急情報を発信する無料のスマホアプリ

倉敷市では、2025年10月1日よりスマートフォンで利用できる「くらしき緊急告知アプリ」の運用を開始します。

防災拡声塔の運用が2026年3月末で終了することに伴い導入が決まったそうですが、防災拡声塔が抱えていた課題の解決も目指した取り組みだそうです。

どのような目的があるのでしょうか。
倉敷市 防災危機管理室のかたに話を聞きました。

「くらしき緊急告知アプリ」とは

「くらしき緊急告知アプリ」は2025年10月1日より運用開始予定の、避難情報などの災害時の緊急情報をスマートフォンアプリでお知らせするサービスです。

倉敷市では、防災拡声塔の運用が2026年3月末で終了します。
長年の運用で老朽化していた防災拡声塔は、平成30年7月豪雨災害の検証結果から、いくつかの深刻な課題が浮き彫りになっていたそうです。

このため、「くらしき緊急告知アプリ」は防災拡声塔の代替サービスとして位置付けられていますが、防災拡声塔の課題を解決することも意図して導入が決まりました。

おもな課題は以下のとおりです。

聞こえにくさ
拡声塔から発せられる音声は方向性を持つため、スピーカーの向きから外れると聞こえにくいという問題
環境要因による遮断
豪雨時などは、雨音や風音によって音声がかき消され、ほとんど聞こえないという問題
生活様式の変化
多くの家庭が高気密・高断熱住宅になり、窓を開けて生活する人が減少したことにより、外からの情報が届きにくい原因になるという問題

「くらしき緊急告知アプリ」の特徴

「くらしき緊急告知アプリ」の起動後画面

このような背景で導入される「くらしき緊急告知アプリ」は、以下のような特徴があります。

音声による情報伝達の重視
拡声塔の代替として、緊急情報を音声で伝えることを最優先しています。テキスト情報は見逃されやすいですが、音声はより切迫感が伝わり、人々の行動を促します。
マナーモード時も自動起動
マナーモード設定中でも、緊急時にはアプリが自動で起動し、音声放送が流れます。これにより、情報を見逃すリスクを大幅に軽減します。
過去放送の聞き直し機能
放送された音声は、過去10件までアプリ内に保存され、いつでも聞き直すことができます。放送内容を聞き逃しても安心です。
「市長の声」によるメッセージの説得力
「知らない人が『逃げてください』と言っても響かない」という考えから、拡声塔の強みであった「市長の声」を継承しています。
郵便番号登録による広範囲での情報受信
ユーザーは2か所まで郵便番号を登録できるため、倉敷市内に居住していなくても、たとえば倉敷市に住む両親の地域情報を、東京や大阪など県外からでも受信できます。

倉敷市の担当者が特に強調していたのは、倉敷市内に住んでいなくても利用できる点で、離れて暮らす家族の安否を確認したり、避難を促したりする連携も可能になることです。また、倉敷市に転入したばかりの学生や単身赴任者など、地域の防災情報に詳しくないかたがたへの情報伝達にも有効だと考えているそうです。

インストールによるデメリットはほとんどありません。
ただし、緊急時にしか起動しないため、インストールしたことを忘れてしまい、何のアプリか分からなくなってしまう可能性がある点はデメリットといえるかもしれません。

利用方法

アプリのインストール・利用料は無料です。

ダウンロード時に発生する通信料は利用者の負担

そのため、少なくとも倉敷市民のかたは、まずインストールしておくことをおすすめします。緊急情報を受信すると、アプリが自動で起動し、音声が流れます

設定方法も非常に簡単です。
アプリをインストールし、郵便番号を入力すると、自動的に住所が入力されます。

郵便番号を入力し、「検索」ボタンを押す

検索結果を確認し、問題なければ「登録」ボタンを押してください。

検索結果の住所を確認し、問題なければ「登録」ボタンを押す

初期画面が表示されたら完了です。

「くらしき緊急告知アプリ」の起動後画面

この後、音声放送や文書メッセージなどを受信した場合、それらはアプリ内に保存されます。

音声放送履歴

倉敷市防災危機管理室 危機管理課の担当者インタビュー

左から矢野彰一(やの あきひと)さん、三好達也(みよし たつや)さん

倉敷市防災危機管理室 危機管理課の三好達也(みよし たつや)さん・矢野彰一(やの あきひと)さんに導入の意図などについて、話を聞きました。

──「くらしき緊急告知アプリ」を導入した意図を教えてください。

三好(敬称略)──

まず、平成30年7月豪雨災害の検証結果において、防災拡声塔が聞こえにくいという声がありました。

スピーカーは方向性を持っているため、その向きから外れると聞こえにくく、さらに風の音などでかき消されてしまいます。また、現代の高気密高断熱の家では窓を閉めて生活している人が多いため、外からの情報伝達には限界があります。

そこで、外からではなく、なかから情報発信する方向に転換しました。まずはスマートフォンを持っていないかたへラジオの普及(緊急告知FMラジオ)を進め、次の段階としてスマートフォンを持っているかた向けに「くらしき緊急告知アプリ」を導入しました。

──既存の防災アプリと比較した、強みはあるのでしょうか。

矢野(敬称略)──

メールや既存の防災アプリは文章での情報提供が中心ですが、避難情報は人命に関わるため、音声で伝えることが重要と考えています。

「くらしき緊急告知アプリ」の強みは、スマートフォンが自動起動し、マナーモードでも音声が流れることです。そして過去10件まで録音されるので、聞き直しも可能です。

「くらしき緊急告知アプリ」が伝えるのは、気象庁が発表する大雨注意報や警報といった気象情報そのものではありません。そうした情報を元に、倉敷市が発令する避難情報や避難所開設情報など、より緊急度の高い情報のみが対象となります。

また、スマートフォンに直接届く緊急速報メールは、発信ルールが厳格で、状況が変わらなければ頻繁に送れないという制約があります。しかし、緊急告知FMラジオ・くらしき緊急告知アプリはそうした制限がなく、より柔軟な情報発信が可能です。

また、「市長の声」で情報が伝わるため、知っている人の声が避難行動のきっかけになりやすいという点も大きな強みです。

緊急告知FMラジオ「こくっち」
※旧モデル

──「市長の声」が流れるのは大きな特徴と思うのですが、緊急時には市長自身も被災している可能性があり、放送できないこともあるのではないでしょうか。

三好──

基本的には市長が発信することになっていますが、公務で市外に滞在していることもありますし、市長自身が被災している可能性ももちろんあります。

このため、ある程度想定されるメッセージは事前に録音しています

──運用開始は2025年10月からですが、アプリのインストール状況や市民からの反応はどうですか?

矢野──

アプリの自動起動機能に驚く声はありますが、まだ実際に使われていないため、市民の実感はあまりないようです。

「インストールしたのに何も表示されない」という問い合わせもあります。

音声放送は、年に1回程度の訓練時のみ使用される予定です。
そのため、文書メッセージ機能を活用して防災クイズなどを配信し、アプリが定期的に動作していることを確認できる仕組みを検討しています。

緊急告知FMラジオがおこなっている、毎月の試験放送とは連動させない方針です。

──市民に向けてメッセージをお願いします

三好──

「くらしき緊急告知アプリ」は2025年10月1日から正式にサービスを開始します。

「インストールしたものの、表示されない」という声も寄せられていますが、このアプリは「鳴らないに越したことはないお守りのような存在」とご理解いただければと思います。

2026年4月以降、防災拡声塔の運用は完全に停止予定です。撤去作業には費用がかかるため順次進められますが、機能としてはその時点で完全に停止します。

そのため、くらしき緊急告知アプリをダウンロードし、アンインストール(削除)せずに使い続けていただきたいです。

おわりに

「くらしき緊急告知アプリ」は発表されてすぐにインストールしましたが、何も起こらなさすぎて、逆に不安を感じていました。

取材中に聞いた「お守りのような存在」という言葉には納得できましたが、実際に動作したときにどれくらいの音量で流れるのかなど、知りたいかたも多いのではないでしょうか。

絶好の機会が2025年9月26日(金)に実施される「倉敷市一斉地震対応訓練2025」です。この日は午前9時に緊急放送が流れるとのこと。

倉敷市民のかたはもちろん、倉敷市にご家族が住んでいるかたも、ぜひインストールしてみてはいかがでしょうか。

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