ヤギと氷見の大自然に癒される…築100年の古民家が憩いの場に【山の中のヤギカフェ 草の音】ヤギミルクのパンケーキやプリン、牧場パスタも
2025年4月、富山県内で初めてとなるヤギセラピーカフェがオープンしました。
ヤギセラピーカフェ。
なんとなく意味は伝わりそう、実際、どういう場所なんでしょうか。
「たくさんの人にヤギの魅力を知ってほしいですし、心身ともにリフレッシュできる場所になればと思っています」
こう話すのは、「山の中のヤギカフェ 草の音-くさのおと-」 店主の高畑絹江さん。
携帯電話の電波も届かない人里離れた氷見市の中山間地で、築100年以上の古民家を利用してヤギと出会えるカフェを営む張本人です。
カフェ誕生のきっかけ…手作りのヤギ牧場「吉がけ牧場」
「草の音」の紹介の前に、まずはヤギカフェが誕生するきっかけとなった「吉がけ牧場」の紹介から。
牧場があるのは、氷見市吉懸。氷見北西部の山あいで、東海北陸自動車道 氷見北インターから約9km、車で15分ほど走った場所です。
かなり険しい山道を登っていくので道中は少し心細く感じるかもしれませんが、牧場に到着すると、愛らしい目をしたヤギたちが、メェー、メェーとあたたかく迎えてくれます。
過疎が進む故郷ににぎわいを。“げんじぃ”の牧場
牧場を営むのは、“げんじぃ”の愛称で親しまれている村江元三さん。
「過疎化が進む吉懸を知ってもらいたい。吉懸を訪れる人を増やしたい」という想いから、8年前、72歳の時に家族の反対を押し切ってヤギを飼い始めました。
廃材を使ってヤギ小屋や放牧場を作り、現在は約5000㎡の敷地で約40頭のヤギを飼育しています。
貫禄のある鳴き声の母ヤギと、初々しくかわいらしい鳴き声の子ヤギたち。
大規模な観光牧場とは違って特に派手なアトラクションや遊具があるわけではないですが、ヤギと触れ合っているだけで、なんだか心が落ち着きます。
「朝、おはようと声をかけるとみんな、こちらをじっと見てくれる。名前で呼ぶと、返事もしてくれる。笑顔が魅力やね。ヤギの言葉もだいぶわかってきましたが、まだまだです」
やさしい笑顔でげんじぃが教えてくれました。
そんなげんじぃとヤギの魅力に惹かれ、ヤギ牧場には観光客はもちろん、小屋の掃除などをするボランティアが県内外から訪れます。
ヤギカフェ「草の音」の店主・高畑さんも、そんなふうにげんじぃとヤギに魅せられたひとりです。
げんじぃの生家を改装 牧場近くにオープンしたカフェ
というわけで、牧場の近くでヤギの魅力に触れてもらいたいとオープンしたのが「草の音」。
吉がけ牧場から約200m、げんじぃの生まれ育った築100年以上の古民家を改装して作られました。
長年、山の中の厳しい自然に耐えてきた民家。
柱や梁にちっとも古ぼけた様子はなく、時の流れとともに重厚感も感じられます。
柱にかかった時計、囲炉裏の自在鉤…初めて訪れても、どこかなつかしさを感じる佇まいです。
「ヤギの魅力で癒やしの空間を」想いが形になったカフェ
高畑さんが初めて吉がけ牧場を訪れたのも、8年前。
以前から「たくさんの人が心を寄せ合い、ふれあうことができる居心地のいい場所を作りたい」と想っていた高畑さんに、ボランティアとして足しげく通い、げんじぃやヤギとふれあっていく中である想いが生まれました。
「より多くの人にヤギの魅力を知ってほしい。ヤギをテーマに癒やしの空間を作りたい」
その想いはどんどん強くなり、ついにヤギカフェをオープンすることになったのです。
めぇにゅーにはヤギのミルクを使ったパンケーキやプリン
牧場をイメージしたパスタやうどんなど
実は高畑さん、もともとカフェで働いていた経験もあります。
そのため、カフェめしやスイーツのラインナップも本格的です。
メニュー、ならぬ「めぇにゅー」は、ヤギのミルクを使ったパンケーキやプリン、ヤギの形をしたクッキー、パスタ、うどんなど。
牧場をイメージしたパスタ ヤギのアレも忠実に…
オススメの「牧場パスタ」は、バジルソースと緑の野菜で牧場をイメージしています。
アクセントに黒豆が散らされていますが…
めぇにゅーには「牧場にころがる黒豆もおいしいです」の文字。
牧場にころがる…そう、アレです。
なんて聞くと、食欲が落ちるかもしれませんが、パスタに黒豆は想像以上によく合います。バジルのさわやかな香りにも誘われ、あっという間に完食です。
ヤギのミルクで作ったパンケーキ
ヤギのミルクを使ったパンケーキも。
牛乳に比べてなじみがないですが、ヤギのミルクはミネラルバランスにすぐれ、 5種類の必須アミノ酸が含まれているといわれています。味も、牛乳に比べるとさらっとした飲み心地が特徴です。
そんなヤギのミルクを使ったパンケーキは、もちもちの生地にトッピングの黒豆・きなこ・あんこ・クリーム・バターなどを添えて楽しむことができます。ヤギさんの後ろ姿が焼き印で押されていて、どこから食べようか迷ってしまいますね。
カフェでは、くつろぎながら大画面でヤギの映像も楽しめます。
「ヤギのお乳で育ったげんじぃの暮らしも感じながら、ゆったりとした時間を過ごしてもらえたらうれしいです」(高畑さん)
新緑が日に日に色濃くなる氷見の山あい、ふたりの想いがこもった手作り感に親しみやあたたかさをたくさん感じられるヤギ牧場とカフェ。
メェー、メェーとヤギが草を食む音に、心も体も癒されそうです。