地下鉄の構内図に描かれない「謎の扉」調査してみた!隙間から見えた通路のその先は
皆さんが抱えている「なぜ?」「どうして?」を調査する、HBC「もんすけ調査隊」。
これまで地下鉄にまつわる数々のミステリーを解き明かしてきましたが、今回挑む謎は、札幌市在住のえいこうさん(10代)の依頼。
「地下鉄・東区役所前駅にいかにも怪しげな扉があります。この扉は何なのか?調べて下さい」
連載「じぶんごとニュース」
東区役所前駅と言えば、名前の通り、駅前に区役所が存在する札幌市営地下鉄東豊線の駅です。
さっそく現場に行ってみると…そこには確かに、怪しい扉が。
その扉は、改札を出て右に進むと、正面に立ち塞がる巨大な扉で、細長い隙間があいています。
ほかの扉と比べても、明らかに異なる形状で、よく見ると扉には何か書かれていますが、これはただの衝突注意の札。
何はともあれ調査開始!しかし駅の利用者はそろって「知らない」とのこと…。
扉の隙間から中をのぞいてみると、確かにその奥には、どこかに続く通路が存在しています。
そこで駅周辺の地図を見てみると、駅の出口付近には区役所と学校が存在しているのですが、駅の構内図を見ても、何も書かれていません。
この先には何があるのか…?
そもそも東豊線が開業したのは、1988年のこと。
高度経済成長を経て人口が急増した札幌では深刻な交通渋滞が社会問題に。
そこで誕生したのが地下鉄東豊線でした。
開業時は「栄町駅」から「豊水すすきの駅」まででしたが、その6年後「豊水すすきの駅」から「福住駅」まで延伸されました。
では、これはいったい、何の扉なのでしょうか?
行き詰まった調査員が、札幌市交通局に撮影をお願いしたところ、取材の許可が下りました。
鍵を開けてもらい、さっそく中に入ってみると…。
そこには薄暗い廊下が広がっていました。
正面に突き当たって右に曲がると階段があります。
そして階段の下にも扉があります。
今度はその扉を開けてみると…そこに広がっていたのは、なんと!ホーム。
謎の扉から通路を抜け、階段の先に進むと、そこには地下鉄のホームが広がっていたのです。
いったいどういうこと?
これはいったい、どういうことなのでしょうか?
札幌市交通局運輸統括主任の中村保司さんに聞いてみると、こんな答えが。
「この奥は、プラットホーム階とコンコース階をつなぐ避難経路の入り口」
この扉、災害などの緊急事態にホームから安全に脱出するための避難経路だったのです。
「プラットホーム上で大きな事件事故起きた場合、逃げる方向を2方向で確保しなければならないというルールがある」
実は、地下鉄のホームには、「異なる2つ以上の避難経路を設置する」という国の決まりがあるのです。
例えば、東区役所前駅の場合、改札の位置の都合上、福住方面には通常の階段がありますが、栄町方面にはありません。
そのため、栄町方面には避難用の階段が設置されているのです。
というのも、昔、国内では列車火災が度々発生し甚大な被害が出ました。
そこで1975年、地下鉄の火災対策の基準が定められました。
さらに2003年には韓国で、192人が死亡し151人が負傷する地下鉄放火事件が発生。
そのため、日本でも地下鉄の火災対策が強化されたといいます。
実はほかの駅にもあるんです!
こうした経緯から、東区役所前駅だけでなく札幌市営地下鉄46駅のうち17駅にこの様な避難経路が設置されています。
例えば、東西線・宮の沢駅のように、ホームから避難経路を通り抜けていくと、改札階に出られるパターンと、南北線・幌平橋駅のように、扉を開けて、薄暗い通路を通り抜けて進んでいくと、地上の中島公園に出られるパターンがあるといいます。
札幌市交通局運輸統括主任の中村さんは「札幌市交通局では、職員の教育・訓練を行い、安全を確保しているので、安全安心な地下鉄をどうぞ利用ください」と話していました。
ということで、調査結果です。
札幌市営地下鉄東豊線・東区役所前駅にある謎の扉の向こうには、災害などの緊急事態の際の避難経路がありました。
さらに、扉に隙間があった理由も教えてもらいましたよ。
地下鉄の駅では、地下に空気が滞留しないように、24時間常に換気を行っていますが、ひとつの出口では空気の流れが良くないので、流れを良くするために、隙間を空けているということでした。
あなたの質問や悩み、調査依頼をお待ちしています。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部もんすけ調査隊
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月18日)の情報に基づきます。