2024年、エンジニアtypeで最も読まれたのは? 人気記事ランキングベスト10
国内外で活躍する技術者や、話題の技術書の著者、誰もが知るあの人とエンジニアたちの対談などなど……2024年、エンジニアtypeでは225本の記事を公開(12月27日現在)。「技術者のキャリアを考える」というサイトコンセプトの通り、読者の皆さんが仕事・キャリアに迷った時のヒントを届けられるような情報発信に努めてきた。
今回は、24年に公開した中で最も多くの反響を集めた10記事をランキング形式でご紹介。1年の振り返りとして、来年の抱負を考える際の参考として、ぜひチェックしていただきたい。
目次
【1位】優秀なエンジニアは「コードが汚いから読めない」なんて言わない/ひろゆき×安野たかひろ【2位】フルリモート勤務者はお先真っ暗? 突きつけられた「出社要請」への向き合い方【3位】意識低い系エンジニアは被害者? 人材不足のIT業界でさえ「気軽に退職したら次はない」【4位】日本のエンジニアは甘すぎ? 「初学者への育成論」が米国からみると超不毛な理由【5位】ひろゆきがRubyの父・まつもとゆきひろに聞く「弟子募集しないんですか?」【第6位】ひろゆき×ドワンゴ川上量生が「エンジニアは頭が悪くないと大成しない」と語るワケ【第7位】FF14が“愛され長寿”なのは「たまたまじゃない」/ひろゆきが吉田直樹に聞く【第8位】落合陽一「2026年にはほとんどの知的作業がAIに置き換わる」人間に残される仕事は“とげ作り”【第9位】登大遊、落合陽一を生んだ、未踏の父・竹内郁雄に聞く「優れたエンジニア」に必要なこと【10位】ミノ駆動流「思うように伝わらない」を解消する!エンジニアのための言語化力の鍛え方
【1位】優秀なエンジニアは「コードが汚いから読めない」なんて言わない/ひろゆき×安野たかひろ
優秀なエンジニアは「コードが汚いから読めない」なんて言わない【ひろゆき×安野たかひろ】https://type.jp/et/feature/26796/
2024年に最も多く読まれたのは、ひろゆきさんが今話したいエンジニアや今注目の研究者、話題のプロダクトの作り手に気になる疑問をぶつけていく人気連載『ひろゆきが聞く!』より、AIエンジニア・安野たかひろさんとの対談だった。
日本のAI研究をリードする松尾豊教授の研究室出身で、AIスタートアップ2社の経営者。東京都知事選への出馬をきっかけに注目を集めた安野さんにひろゆきさんが投げかけた「コードを書けることと、会社が儲かることは違いますか?」という問いかけを発端に二人ならではの「コード談義」が繰り広げられた。
ひろゆきさん「サービスが流行るにつれて、想定と違うボトルネックが発生して、アルゴリズム自体を変える必要が出てきた時などにコードを綺麗にするのはアリだと思いますが、コードを読むのが下手なエンジニアのためにコードを綺麗にするのは時間の無駄かな……と。
ただ、エンジニアからは『コードは綺麗に書け』という圧力が出てくるのは当然なので、上位の人が『どんなコードでも動くコードを作るのが正しい』『done is better than perfect(完璧を目指すよりも、まずは終わらせることが重要) 』のスタンスが効率的だろうなぁ……と思うおいらです」
安野さん「私もスタートアップの経営をやっている時にエンジニアチームから何度も新機能開発ではなくリファクタリングに時間を使わせてくれと要求されていました。
結果、お客さんに『この機能のリリース遅れます』と頭を下げ、エンジニアチームには『ここまでは耐えてくれ』とお願いし、経営陣に『リファクタリングやらないとマズイっす』と強弁し、ほうぼうで調整をかけていた覚えがあります。そういう意味ではひろゆきさん推奨の『done is better than perfect』を貫き切れなかった側の経営でした……」
【2位】フルリモート勤務者はお先真っ暗? 突きつけられた「出社要請」への向き合い方
フルリモート勤務者はお先真っ暗? 突きつけられた「出社要請」への向き合い方https://type.jp/et/feature/25960/
2024年にスタートした流しのEM・久松 剛さんによる連載の初回が第2位となった。
コロナ禍以降主流となったリモートワーク。しかし2023年中盤あたりから、海外のIT企業を皮切りに「出社回帰」の流れが目立ち始めている。オフィス回帰が既定路線になりつつある理由や、その流れの中でエンジニアがフルリモートにこだわる危険性、それでもフルリモート勤務を望むエンジニアへのアドバイスまで、久松さんが詳細に語った。
大企業の後ろ盾を持つスタートアップや合弁スタートアップ、日系大企業の活況を背景に売上を伸ばすSIerや受託開発会社の中には「フルリモート勤務可」の看板を下ろしていない企業は数多いです。こうした企業を選ぶのは一つの道ですが、陥りやすいワナもあります。
例えばスタートアップ企業の中には、ほかにPRできる要素がないゆえ、仕方なしに「フルリモート勤務可」を謳っている企業があります。運よくフルリモート勤務を認めている意中の企業に入れたからといって、必ずしもこの先も安泰というわけではないことも忘れてはいけません。赤字決算やM&Aなどで経営陣が変わり、フルリモート勤務が廃止になることはよくあることです。
【3位】意識低い系エンジニアは被害者? 人材不足のIT業界でさえ「気軽に退職したら次はない」
意識低い系エンジニアは被害者? 人材不足のIT業界でさえ「気軽に退職したら次はない」https://type.jp/et/feature/26256/
第2位に続き、ここでも久松 剛さんの連載がランクイン。今回のテーマは、「意識低い系エンジニア」の末路。穏やかではないテーマにも聞こえるが、エンジニアとしてのキャリアに少しでも課題感を感じている人はぜひ一読してほしい。
社内での出世はおろかエンジニアとしての成長意欲にも乏しく、居心地が悪くなったら転職を繰り返す……そんな状態に陥ってしまった時、エンジニアに待ち受けている未来とは?
「気軽に辞めても次がある」
おそらく早期離職者はそんな思いがあるのでしょうが、現状はそれほど甘くありません。エンジニア採用バブルが絶頂期を迎えた2021年ごろと比較すると、ここ数年は景気後退やスタートアップ投資市場の冷え込みなどの影響で、エンジニアの採用市場もシュリンク気味に推移しているからです。
各社の採用条件を整理していても「採用目標人数を必達したい」という2021年の状況から「会社のために貢献できる人ならすぐにでも採りたいが、少しでも迷うなら採らない」という企業が大半を占めているのが実情です。早期離職を繰り返していても、高い実務能力と尖ったスキルがあればチャンスがないとは言いませんが、多くの場合は路頭に迷う可能性が高くなっています。
【4位】日本のエンジニアは甘すぎ? 「初学者への育成論」が米国からみると超不毛な理由
日本のエンジニアは甘すぎ? 「初学者への育成論」が米国からみると超不毛な理由https://type.jp/et/feature/27363/
「つよつよエンジニアは、初学者に厳しすぎ」
昨今Xを中心に何かと話題に挙がる「エンジニア育成論」を日米比較したこちらの記事が第4位となった。取材に応じてくれたのは、米国のテック業界やエンジニア事情に詳しいブランドンさんだ。
「エンジニア教育、どこまでやるのが正解?」という議論は、米国を拠点に活動するブランドンさんの目にはどのように映ったのか。聞くと「そもそも米国と日本ではエンジニアのキャリアの始まり方が違うので、こうした議論は発生しない」のだと語った。
ブランドンさん「業務を進めるために必要なスキルを身に付けることは、エンジニアが各々やるべきこととしてみなされます。なので、オンボーディング期間が終われば“毎日査定”される日々がスタートします」
さすが成果主義の国らしい話だが、そのハードモードな環境に愚痴を言いたくなる瞬間もあるだろう。日本でよく見られる“若手同士が飲み会で上司や会社の愚痴を言い合う”なんて場面はどんな様子なのか。
ブランドンさん「愚痴る前に訴訟を起こされますね(笑)。ただ大前提、米国では愚痴を言う人やネガティブなことを言う人はローパフォーマーとみなされる傾向にあります。
Googleの採用基準に『good natured person』(いい人)があることで広まった考え方ですが、不平不満を言う人は組織の雰囲気や生産性を下げるため、人前でネガティブな発言をしたり、SNSで書き込んだのがバレると解雇されることも少なくありません。入社時に交わす契約書にも、ネガティブな発信をしたら『1回目は注意、2回目は解雇』と明記している会社も多いです。不当解雇と訴えられるのを避けるためですけどね。
利益は伸びているにも関わらずGAFAMが定期的に大規模レイオフを行うのも、その成長スピードに追いつけないローパフォーマーをふるいにかけたい思惑があるからです」
【5位】ひろゆきがRubyの父・まつもとゆきひろに聞く「弟子募集しないんですか?」
ひろゆきがRubyの父・まつもとゆきひろに聞く「弟子募集しないんですか?」https://type.jp/et/feature/24272/
第5位にランクインしたのは、ひろゆきさんの連載より、Rubyの開発者であるまつもとゆきひろさんとの対談だ。
「自分が作った言語が沢山の人に使われ広がっていく感覚ってどんなだろう」というひろゆきさんのピュアな疑問に、まつもとさんはどう答えたのか。さらに「開発言語って一つでよくない?」「言語の方向性や哲学で判断が難しいことって?」「まつもとさんがいなくなったらRubyはどうなる?」などなど、気になることをまとめてまつもとさんにぶつけてみた。
ひろゆきさん「プログラム言語の多様性って必要ですかね? 全部C++とかpythonでいいじゃないすかって言われたらまつもとさんはなんて答えるんだろーと思って」
まつもとさん「必要か必要でないかといえば、必要ではないですね。ただ、現状たくさんある言語の多様性の解消は現実的ではないと思います。
プログラミング言語の世界では、チューリング完全という性質を持つ言語ではありとあらゆるアルゴリズムが記述可能であることが証明されています。ということは、例えばC++で記述できるプログラムは原理的にはRubyなりPythonなりでも記述できるわけですね。だから、多様性の排除あるいは言語の統一は原理的には可能です。
しかし、これはあくまでも原理的な話。実際に統一しようとすると困難が立ちはだかります」
【第6位】ひろゆき×ドワンゴ川上量生が「エンジニアは頭が悪くないと大成しない」と語るワケ
ひろゆき×ドワンゴ川上量生が「エンジニアは頭が悪くないと大成しない」と語るワケhttps://type.jp/et/feature/25601/
こちらもひろゆきさんの連載より、ドワンゴ創業者の川上量生さんとの対談が第6位に。旧知の中である二人ならではの、キャリアの初期のエピソードから「優秀なエンジニアとは?」といったテーマまで、たっぷり語り合ってもらった。
川上さん「僕と森(栄樹)さんで最初に考えたドワンゴのビジネスモデルは単純で、優秀な僕ら(といっても森さんチームだけですが)は控えめにいっても普通の開発会社の半分以下の工数でソフトウェアを開発できる。なので、実際にかかる工数の2倍で見積もりを出せば、半分は利益で丸儲けのはずだ、というものでした。
とても簡単な算数ですが、後から振り返るとそこが『理系のずるさの限界』でした。僕らはドキドキしながら2倍の見積もりを出したんですけど、本当は10倍ぐらい出すべきでした。じゃないと儲からない。実際は想定よりも工数がかかることがあり、2倍じゃ利益出なくてめちゃくちゃ大変です。
(中略)
経営者になって思ったことですが、これは理系の美徳でもなんでもなくてビジネスマンとしては欠点じゃないかなと。給与だってそうですよね。経営者とか俳優とかアーティストとか、トップ層の報酬が理不尽なほど高くなることがあるのは基本的に文系っぽい職業です。ノーベル賞受賞者とか技術者や職人で年俸100億円とか聞いたことないじゃないですか。10億円だっていないと思います」
【第7位】FF14が“愛され長寿”なのは「たまたまじゃない」/ひろゆきが吉田直樹に聞く
FF14が“愛され長寿”なのは「たまたまじゃない」【ひろゆきが吉田直樹に聞く】https://type.jp/et/feature/26308/
大人気のひろゆきさん連載が連続して登場。第7位に輝いたのは、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さんとの対談だ。
「FF14がうまくいってる理由はなんだろう」というひろゆきさんの素朴な疑問を紐解いていくと、FF14が長く愛される秘訣が見えてきた。
吉田さん「サブスク型のMMORPGの現役プレイヤーは『未来に期待しつつ今を遊ぶ』ものなので、ここは最初からめちゃくちゃ重視しています」
ひろゆきさん「古参ユーザーの多くはゲームやスクエニ以上に、吉田さんを信じている気がするんですよね」
吉田さん「うーん、その点は僕にはわからないですが、責任者が交代したりすると、どうしても前任者との比較は出てしまうし、ノイズにはなるでしょうね。
(中略)
運営者や代表が変わって、サービスが更にどんどん良くなるのであれば、いずれ創設者や顔の見えてた運営者も忘れられていくし、必要なくなると思います。なぜならユーザーは「便利で楽しくて、沢山の仲間がそこにいる」方が重要だからです。でも、運営が変わったり、顔が見えなくなったタイミングと、サービスへの不満が重なったりすると、一気にマイナスに働きますよね。この辺りは、心理作用が大きいと思います」
【第8位】落合陽一「2026年にはほとんどの知的作業がAIに置き換わる」人間に残される仕事は“とげ作り”
落合陽一「2026年にはほとんどの知的作業がAIに置き換わる」人間に残される仕事は“とげ作り”https://type.jp/et/feature/26858/
アーティスト、科学者、大学教員、 経営者……いくつもの顔を持ち、デジタルと自然の融合で日本社会のアップデートを目指す落合陽一さんの記事が第8位に。
生成AIの急速な進化は私たちの仕事や働き方にどのような影響を与えるのか。そして、近い未来にどんな変化が訪れるのか。未来予想とこれからの時代を牽引するリーダーたちに求められるスキルやマインドを落合さんが語った。
知的作業のほとんどは2026年の頭までにはほぼAIに置き換わるでしょう。「考える仕事」の量が圧倒的に減り、AIが作業をするために必要な条件を整える「環境構築」が主な人間の仕事になるはずです。
もう一つ、人間に残されるのは「とげ作り」ですね。文章でも何でも、人が「面白い」と思うものには少しとがった部分、つまり論理的な飛躍の要素が含まれています。ところが、AIはそれを考えるのが苦手です。基本的に学習データで出来ているので、「もっと面白くして」「もっと興味深くして」といった指示に答えるのはあまりうまくありません。したがって人間らしい「とげ」を生み出すことは、まだしばらくは人間の仕事であり続けると思います。
(中略)
最も置き換えられやすいのは「人対データ」の仕事です。データを直接いじるタイプの仕事は、生成AIの得意ジャンルの一つだからです。このタイプの仕事の代表格は、ソフトウエアエンジニア。この職業でこれから生き残るためには、コードを書くよりも高度な技術が求められるでしょう。
【第9位】登大遊、落合陽一を生んだ、未踏の父・竹内郁雄に聞く「優れたエンジニア」に必要なこと
登大遊、落合陽一を生んだ、未踏の父・竹内郁雄に聞く「優れたエンジニア」に必要なことhttps://type.jp/et/feature/25602/
第8位で登場した落合陽一さんや登 大遊さんなど、数々のスーパークリエータを輩出してきた独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「未踏IT人材発掘・育成事業」。その立ち上げから現在までを知る統括プロジェクトマネージャー・竹内郁雄さんのインタビューが第9位となった。
2017年には、ビジネスや社会課題解決につながる人材を発掘する「未踏アドバンスト事業」にも統括プロジェクトマネージャーとして参画。前身の未踏ソフトウェア創造事業から数えて24年、のべ2000人を超える修了生を見てきた竹内さんだから言える、優れたエンジニアに共通して求められる素養を聞いた。
未踏を終えた後に成功している人には、共通する部分がある気がします。彼らはスキルのもう一段階上の、メタスキルを持っている。
スキルを素早く習得する能力というか、スキルを使いこなす能力というか。メタスキルがある人は、それまで使っていたのとは別の言語でも問題なくやれる。別の分野に移っても活躍できる。要するに、自分の持つ技術の活かしどころをいくらでも変えることができます。自分の持つスキルを俯瞰で見て「ああ、このスキルではもう先がないな。じゃあ次はこっちへ行こう」という判断ができる。これはおそらく、できるエンジニアには不可欠な能力でしょう。
未踏の修了生には、未踏でやったことと全く関係のないことをやって大成功している人も多いんですよ。それはメタスキルを持っていればこそ。そういう人が本物のエンジニアだなと思います。
【10位】ミノ駆動流「思うように伝わらない」を解消する!エンジニアのための言語化力の鍛え方
【ミノ駆動流】「思うように伝わらない」を解消する!エンジニアのための言語化力の鍛え方https://type.jp/et/feature/25970/
「つまりどういうこと?」「要するにできるの、できないの?」「それって何の話だっけ」
技術的にどうするべきか正解は見えているのに、頑張って説明しても返ってくるのはそんな言葉ばかり……。そんなエンジニアに捧ぐ記事が、2024年の記事ランキング第10位だ。
話を聞いたのは、2023年のITエンジニア本大賞・技術書部門で大賞を受賞した『良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』(技術評論社)の著者・ミノ駆動さん。彼もまた、昔は「君が何を言ってるのか分からん」と上司に言われていたとか。
ミノ駆動さんはどのように言語化能力を伸ばしたのか。聞くと、出てきたのは「合意駆動」というキーワードだった。
エンジニアの多くは技術に関心があるので、ビジネスの目的を忘れて「How」としての技術にばかり執着してしまうことがあると思います。
私自身もまさにそうでした。相手の反応なんて気にせずに、自分の言いたいことだけを早口で言って「あー気持ちよかった」と(笑)。ずいぶん独りよがりなコミュニケーションをしていたなと思います。
そうならないためには、あらゆるフェーズで目的を意識することが大切です。自分の仕事の目的は何なのか、その先にいる顧客の目的は何なのか、そもそもビジネスの目的は何なのかを意識することによって、うまく説明できるようになるでしょう。
目まぐるしく移り変わっていくトレンド、日進月歩の最新技術、先の見通しづらいエンジニアのキャリア……。エンジニアtypeでは、それらに関してハッと気付きを与えられるような記事を2025年も数多く発信していく予定だ。ぜひ来年もご愛読いただきたい。