小中学校「宿題」が減り「自主学習」増加! 「自主学習ノート」は何をどうやって書くの? 現役小学校教師が伝授
桐朋学園桐朋小学校教諭・伊垣尚人先生に聞く、「自主学習」。全2回の前編は、自主学習ノートの書き方について。見開き1ページに学習の振り返りと、好きなことのまとめを半分ずつという伊垣式のその理由を、詳しく解説してもらいました。
「自主学習」のノートのまとめ方を現役教師がわかりやすく解説これまで学校では、授業の復習や学習習慣の定着を目的として当たり前のように宿題が出されてきました。しかし近年、ドリルやプリントなど全員一律の宿題を廃止する学校が増えています。そこで今回は、20年ほど前から子どもたちの学びに「自主学習」を取り入れてきた桐朋学園桐朋小学校教諭・伊垣尚人先生に、家庭での自主学習の取り組み方について教えてもらいました。
(全2回の前編。後編を読む。※公開時よりリンク有効)
「自主学習」は興味があることをまとめること
「自主学習」は興味があることをまとめること
──岐阜市立岐阜小学校(*1)や、山形県新庄市立日新小学校(*2)、愛知県江南市立布袋小学校(*3)、新宿区立西新宿小学校(*4)でも、生徒が自主的に学ぶ力の育成や教員の働き方改革を背景に、学校単位での改革が進められてきました。
代わりに取り入れられているのが、生徒自身が学ぶ内容を決める「自主学習」ですが、そもそも自主学習とはどういうものなのでしょうか。
伊垣尚人先生(以下、伊垣先生):自主学習(自学)というのは、子どもが知りたいことや、興味のあることを、自由にノートにまとめるというものです。
自学には、学びに対する主体性が育まれたり、表現力や思考力、まとめる力がつくなどいろいろなメリットがあります。
桐朋学園桐朋小学校教諭・伊垣尚人先生。
伊垣先生:自主学習自体は、実は新しい取り組みではなく、脈々と行われてきたものです。
僕も20年前、教師になりたてのころに先輩教師がやっているのをみて始めました。
最初は、自由にやらせて大丈夫だろうかという不安もありましたが、実際に始めてみると、子どもたちはやりたいことを見つけてどんどん学んでいってくれます。
自主学習に対する関心が今までになく高まっていると感じたのはコロナ禍ですね。
というのも、自主学習についてまとめた本を2012年に出版したのですが、2020年以降、取材や講演依頼が一気に増えたんです。
これは、子どもたちが自宅で過ごす時間が増えたことにより、どのように学びを続けていけばいいのか、教師も保護者も悩んでいたからではないか、と。
また、2020年から大きく改訂された「新学習指導要領(注1)」にも、「主体的・対話的で深い学び」という言葉が盛り込まれました。教師が一方的に教えるのではなく、子どもたち自身が主体的に学ぶ姿勢が重視されるようになったという背景も考えられます。
注1:文部科学省「新学習指導要領」
学習の振り返りと好きなことのまとめを半分ずつ
学習の振り返りと好きなことのまとめを半分ずつ
「学習の振り返りページでは、自分に合った勉強法を見つけてもらえたらと思っています」(伊垣先生)
──自主学習ノートの書き方にルールはあるのでしょうか?
伊垣先生:自主学習の進め方は学校や教師によってさまざまですが、僕のクラスでは「一日見開き1ページ」を基本として、見開きの半分は学習の振り返りを、もう半分は何でも好きなことをまとめてもらうようにしています。
もちろんページが増えるのは問題ありません。ただ、好きなことを深掘りしていくには、読み書きといった基本的な学力も大事なので、バランスよくやるようには伝えています。
学習の振り返り「バッチリメニュー」
伊垣先生:学習の振り返りページは「バッチリメニュー」と呼んでいて、学校でやったことの復習です。
今のクラスでは算数プリントを1枚宿題として出しているので、バッチリメニューでは漢字をやる子が多いですね。漢字1字ではなく、熟語で書くように指示していますが、それ以外のやり方やまとめ方はもちろん自由。週に1回、小テストがあるので、それに向けて漢字ドリルを見ながら各自で進めてもらうようにしています。
「初めてだとなかなかイメージがわきにくいと思うので、僕の書いた『自主学習ノート 実践編』を見せることも多いですね」(伊垣先生)
伊垣先生:小テストをやって、思うように点が取れなかった子には、「ノートのやり方を変えてみてもいいんじゃない?」と提案することはあります。そうやって自分に合った勉強の仕方を見つけてもらえたらという想いはありますね。
卒業生で、「中学に行ったら自分で勉強を進めなくてはいけなくなったから、自学ノートをやっていて本当によかった」と話してくれた子もいました。
好きなことのまとめ「ワクワクメニュー」
好きなことのまとめ「ワクワクメニュー」
伊垣先生:残り半分は「ワクワクメニュー」と呼んでいます。テーマは何でもOK。ただ、漠然としたテーマだと深めにくいので、「インコの飼い方」「ネコの本音」「野球の歴史」といったように、「○○の××」と絞って設定するとまとめやすいよと伝えています。
自学ノートへの取り組みは基本的に毎日です。また1つのテーマで最低1週間は続けてみてと伝えています。いろいろな角度から考えたり疑問を持ったりすることで、いろいろな発見があり、理解も深まっていくからです。
伊垣先生の著書『自主学習ノート 実践編』(ナツメ社)。
「1学年下の子にもわかる」ようにまとめる
──ワクワクメニューで知りたいことについて、子どもたちはどのように調べているのですか?
伊垣先生:毎週、学校の図書室に行く時間があるので、そこで本を借りるようにしています。今はネットで何でもすぐ調べられますが、児童向けの本は子どもにもわかりやすいように書かれていますし、オフラインでも見られます。
だから僕は「まず本から」と子どもたちには言っています。きちんと丁寧に作られた本に出合って、読書経験を積んでほしいという思いもあります。
ただ、調べる内容がだんだんマニアックになっていくんですよね(笑)。先日も、アルゼンチンの南のほうにしかいない鳥について調べたいという子がいたので、さすがに「ネットでいいんじゃない」と言ったことがありました(笑)。
「調べていくうちに内容がどんどんマニアックになっていくことも(笑)」(伊垣先生)
──資料を丸写ししちゃう子はいませんか?
伊垣先生:「丸写しはダメだよ」という言い方ではなく「1学年下の子にもわかるように書いてね」と伝えています。ちゃんと理解できていないとそれは難しいですから。本にわからない言葉がある場合は、自分で調べて書いていますよ。
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今回は自主学習ノートの取り組み方について伊垣先生に教えていただきました。
次回後編では、子どもがつまずいたときのアドバイスや、親の見守り方、そして子どもたちが実際にどんなことをテーマに取り組んでいるのかをご紹介します。
取材・文/北 京子
撮影/森﨑一寿美
自主学習の記事は全2回。
後編を読む。(公開日までリンク無効)
「子どもの力を引き出す自主学習ノートの作り方」著:伊垣尚人(ナツメ社)
「子どもの力を引き出す自主学習ノート 実践編」著:伊垣尚人(ナツメ社)