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2人のトップシェフが語る「常磐もの」の魅力

料理王国

2人のトップシェフが語る「常磐もの」の魅力

2025年2月、いわき市は「常磐もの」のおいしさを発信するフェアを開催する。築地をはじめとする各地の水産関係者から品質の良さを評価されてきた「常磐もの」について、フェアに参加する2人のシェフにその魅力を語ってもらった。

いわきの水産ブランド「常磐もの」とは?

寒流と暖流がぶつかり合ういわき市沖はプランクトンが多く発生し、栄養豊富でおいしい魚が獲れることで知られている。古くから当時の築地市場をはじめとする全国の水産関係者の間では「常磐もの」と呼ばれて高い評価を受け、同時に市内の漁師や加工事業者たちもその言葉に誇りを持ち、大事にしてきた。

それを受けて平成27年10月にいわき市が、水揚げされる水産物、水産加工品、水産業に真摯に取り組む人々、の3つを総称する地域ブランドとして開始したのが「常磐もの」だ。

水産物、水産加工品の地域ブランドは全国各地に様々あり、消費者の認知向上や販売拡大のために制定されるのが常ではあるが、「常磐もの」の特徴は人にもフォーカスしていることだ。これは、その品質や鮮度の維持、向上とそのためのさらなる努力を自らに課すことで、いわきの水産物を未来のために守り、高めていくという決意表明に他ならない。

レストラン ラフィナージュ 高良康之

そんないわき市の取組に賛同した2人のシェフが25年2月から開催される「いわき常磐ものフェア」に参加する。まず1人目は「レストラン ラフィナージュ」の高良康之さん。

高良さんは以前から常磐ものの魚を好んで使っているという。
「春先からカレイが始まってそのあと一緒にアイナメがあり、夏になるとこの地域ならではの魚であるカツオ、それとスズキがあります。冬に向かっていくと、ヒラメやアンコウ。本当に素晴らしい海の幸に恵まれているので、私の料理ではなくてはならない魚になっています。その季節季節でしっかり魚種もあり、1年を通して楽しめる場所ですね」

今回いわき市から届いたのはヒラメとホッキ貝。

まずヒラメは「すごいキレイですね。この素晴らしい身質は蒸し焼きで仕上げたい」と高良さん。「ヒラメの良いところを引き出してあげようと思って、素材の良さを中心に考えています。焼いてももちろん美味しいですが、身の厚みやふくよかさを出したかったので、今回はブレゼにしました」

さらに「骨からも雑味のない味が出てきます。身質がキレイな魚ばかりで脂くどくならないので、骨の方もすべて使い切ってフュメ・ド・ポワソンとして出汁を取ってソースに合わせていきます」と続ける。

寒ヒラメのブレゼ ベルモットソース

一方のホッキ貝は焼くことでその香りを際立たせる。
「いわきから来るホッキ貝は肉厚でジューシー。さらに香りもとてもいいので、野菜と一緒に海の幸、山の幸を合わせた1品を作りたいと思います。焼きすぎると硬くなるイメージもありますが、半生に仕上げることでお醤油が焦げたような香ばしさを引き出します」

合わせるのは同じ土地で採れた長ネギのテリーヌ。つなぎを使わず、ほろほろと崩れるところに一口大に切った断面からジュースが上がってくるホッキ貝のジューシーさを合わせる。さらにフレッシュなハーブの香りを添えて、ほんのり温かいサラダに仕立てた。

ホッキ貝のグリル 長葱のテリーヌ トリュフの芳香

「前の日の夜から当日の朝にメニューを書いていくので、毎日その日に入荷してくるものやその素材のコンディションで出し方や仕立ては変わってきます。ただ、本当に地のものでありその季節のものでもあるので、本当においしい時期のヒラメと白菜、ホッキ貝とネギ、こちらはこのままで提供させていただこうと思っています。安全の確認された食材ですし、私たちもそれを踏まえて調理していくので、ぜひ安心して楽しんでいただければと思います」という高良さんによる「常磐もの」を使った2皿、ぜひフェアを通じて体験してほしい。

レストラン ラフィナージュ

東京都中央区銀座5-9-16 GINZA-A5 2F
03-6274-6541
ランチ:12:00〜15:30(13:30L.O.)
ディナー:18:00~22:00(20:00L.O.)
定休日:月曜、第3火曜日
https://laffinage.jp/

サーラ アマービレ 原田慎次

続いては自身のフラッグシップである「アロマフレスカ」と同じフロアに姉妹店として「サーラ アマービレ」を構える原田慎次さん。今回のフェアには「サーラ アマービレ」として参加する。

原田さんが選んだのはいわき市の「市の魚」でもあるメヒカリ。「いわきの人が好きな理由が本当によくわかります」というメヒカリは、素焼きにしたり、フレッシュ以外にも丸干しなども、毎年1月2月の旬の時期には必ず使っているそうだ。今回は頭ごと丸ごとフリットにしている。

緩めに溶いた衣をつけて揚げたメヒカリに添えるのは、自家製発酵バターのソースと香草オイル。
「メヒカリの身質ってすごくミルキーというか滑らかなんです。3等分くらいにして真ん中の身の部分を最初に召し上がっていただけると、この滑らかなジューシー感とクリーミーなソースが口の中で一体になるので、なぜこのソースなのかというのが分かっていただけると思います」

付け合わせは素揚げにしたフキノトウ。
「次にフキノトウを食べると、その苦みがその後の魚の甘みを引き立ててくれます。口の中がしっかりフキノトウの味になったところで頭の部分をいただくと、メヒカリの甘さがふわっと感じられると思います。最後にしっぽの部分をまたソースをたっぷりとつけていただいてほしいです」

緻密にデザインされた、原田さんならではの一皿だ。

メヒカリ ふきのとう 発酵バター

もう1つはこちらもシーズンになると毎年使っているというアンコウ。
「今回のフェアではメインのお魚料理はアンコウを使っていこうと思います。やっぱりモノがいいので、シンプルな仕立てのローストですね」

グリーンソースをやや固めのピュレ状にした、原田さんオリジナルのプレア・ヴェルデをつけながらいただくスタイルだ。

「アンコウは魚なのに肉々しいというか、その身質が特徴なので、魚料理というイメージではなく肉料理のような仕立てでグアンチャーレで包んでいます。アンコウ自体はシンプルに焼き上げているので、噛みしめることで出て来るおいしさをぜひ味わっていただきたいです」と原田さん。

鍋や唐揚げといった昔ながらの定番の料理とはまた違う、「常磐もの」のアンコウの新たな魅力をストレートに感じられる一皿だ。

アンコウ グアンチャーレ プレアヴェルデ

サーラ アマービレ

東京都中央区銀座2-6-5 GINZA TRECIOUS 12F
03-3535-6669
ランチ:12:00〜15:00(13:00L.O.)
ディナー:17:30~22:30(20:30L.O.)
※日曜はランチのみ
12:00~16:00(L.O.14:00)
定休日:第1月曜日

「いわき常磐ものフェア」は「レストラン ラフィナージュ」、「サーラ アマービレ」のほか、「四十八漁場」13店舗、「中島水産」の全国の小売店50店舗で開催される。詳細は下記のリンクよりご確認いただき、ぜひ多くの店舗を訪れて「常磐もの」の魅力を体験していただきたい。

いわき常磐ものフェア
https://cuisine-kingdom.com/iwaki-jobanmono-fair

photo: Yukako Hiramatsu(レストラン ラフィナージュ), Gaku Yamaya(サーラ アマービレ)

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