釜石広域風力発電 来春から新風車で稼働 橋野・県道沿いに新管理棟完成 地域住民も祝福
釜石、遠野、大槌2市1町にまたがる風力発電施設「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の新しい管理棟が、釜石市橋野町荻の洞の県道釜石遠野線沿いに完成した。20日、事業者のユーラスエナジーホールディングス(諏訪部哲也代表取締役社長、本社:東京都千代田区)による開所式が現地で行われ、関係者と地域住民約80人が新拠点の落成を祝った。同施設は現在、風車の建て替え工事が進行中で、2026年4月からの運転開始を目指す。風車増設の計画もあり、「2050年ゼロカーボン達成」を目指す釜石市にとっても追い風になることが期待される。
開所式で同社常務執行役員、国内電源開発ユニット長の伊藤健さんは「新しい事務所、発電所が皆さまの身近な存在となり、岩手、日本の持続可能なエネルギー推進に寄与するよう努力していく。地元の信頼に応えるべく、地域創生にも力を入れていきたい」とあいさつ。来賓の小野共釜石市長は「地域脱炭素に向けた取り組みがさらに加速することを願う。当市の再生可能エネルギー事業導入にもアドバイスをいただくなど、発電事業にとどまらない地域貢献に感謝する」と述べた。
設備の保守・点検、事故対応などに当たる新管理棟は風車の更新、拡張計画に伴い移転整備。鉄骨造り2階建てで、延べ床面積約523平方メートル。倉庫棟(同平屋建て、同約264平方メートル)も併設した。県道から約3キロ、和山高原登り口付近の通称・瀞渡(とろわたり)にある既存事務所周辺には雪上車車庫も新設した。今後、事務所機能を移転させ、5月からの供用開始を予定する。
同ウインドファームは、1998年の県の風況調査で釜石市の和山高原一帯に発電に適した一定の風エネルギーがあることが判明し、市が地権者と協議し事業化への取り組みを開始。公募で選ばれたユーラス社が事業開発を行い、和山牧場、貞任山口・琴畑牧場(遠野市)、新山・白見牧場(大槌町)にわたる丘陵地帯に43基の風車(総出力4万2900キロワット)を建設。東北電力に売電する方式で、2004年12月から運転してきた。
運転開始から約20年となり高経年化が進んだことで、23年3月に営業運転を終了。設備の全面的な更新(建て替え)を行うことになった。既存の43基を撤去し、国内最大級となる1基あたり出力4200キロワットの風車を11基建設。ローター(羽根部分)の直径は以前の約1.9倍の117メートル、風車の高さは約1.4倍の142メートルとなる。総出力は以前と同じ4万2900キロワット。これは一般家庭約3万1000世帯相当分の電力供給量となり、年間約4万4000トンのCO2削減効果が見込まれる(同社試算)。既存風車の撤去は完了し、現在、新設風車の基礎工事などが進められている。更新風車の営業運転開始は26年4月を予定する。
同社は合わせて事業拡張も計画する。3市町の高原地帯に風車25基の増設を検討していて、更新分と合わせると総出力14万1500キロワット(一般家庭約10万世帯相当分)の事業規模となる見込み。一帯は国の天然記念物イヌワシの生息地であることから、環境保全措置として釜石市の楢ノ木平牧場に代替餌場の整備を進めている。
地権者の一般社団法人栗橋地域振興社(旧栗橋牧野農業協同組合)の菊池録郎代表理事会長は「ユーラス社の事業拡大は、牧場の有効活用、地域活性化につながるものと期待している。管理棟が町の中心部に移り、住民との距離も一層近くなった。新たな拠点の完成、発電事業の発展は今年70周年を迎える振興社にとってもうれしいこと」と話す。
なお、本年中は新設風車の設置工事のため、周辺道路は大型車両の通行があることから、一般車の理解と協力を呼び掛ける。