交通安全協会 会員勧誘に壁 存続危機へ キャッシュレス化の影響
交通安全協会が存続の危機にある。運転免許更新の手続きにキャッシュレス化が導入されると、会員を勧誘する機会が失われるため、活動の財源となる会費が確保できなくなるという。地域の交通安全の啓発を担ってきたボランティア組織をどう残すか、メンバーや関係者らの模索が始まった。
「時代の流れを感じる。キャッシュレス化は今や当然の流れで、今さらひっくりかえせる話ではない。各地区の協会は今後どうするか考えなければならない」。そう話すのは相模原交通安全協会の田所豊会長。
神奈川県が6月11日に発表した補正予算案に「運転免許の更新手続きに関するデジタル化の推進」を盛り込み、7月9日の議会で可決された。
予算資料によると、運転免許更新の手数料について、収入証紙による徴収に代えて警察署での窓口キャッシュレス決済を導入する。各警察署では来年3月に開始し、運転免許センターでは来年8月に開始するとしている。
また運転免許更新手続き窓口の混雑解消を図るため、オンラインによる予約サービスを導入するほか、運転免許とマイナンバーカードの一体化に向けて免許情報の即日記録が可能な警察署を拡充する方針も盛り込んだ。
会費が財源
各地区の交通安全協会の多くは警察署に併設・隣接し、運転免許証の更新に必要な収入証紙の販売や顔写真の撮影などの業務を行っている。その業務の際に利用者に対して交通安全協会の活動のPRや特典などを説明し、加入は任意として会員を勧誘してきた経緯がある。
相模原交通安全協会ではこれまで、利用者の6〜7割が会員に加入し、会費として年間で2000万円ほど捻出し、財源に充ててきた。そのほか、市や県協会からの助成、写真撮影の手数料なども含めると3000万円ほどの財源を確保してきたという。財源は窓口業務を担当する事務員などの人件費や建物の賃料のほか、18支部の活動費や啓発グッズの費用などに充ててきた。
勧誘機会失う
今回のキャッシュレス化が導入されると、交通安全協会が担ってきた業務が大きく削減されるため、対面で会員を勧誘する機会が失われる。そのため、活動の財源が確保できなくなるという。
こうした事態について、県警本部交通総務課は「キャッシュレス化に伴い、交通安全協会の収入証紙の販売収益がなくなることは認識していた。自治体にとって地区安協は交通安全活動を推進する上で重要な存在であり、県警としては今後もボランティア団体として活動を続けてほしい。ただ県警としては各地区の交通安全協会を指揮、監督する立場ではないため、運営方法などについてはコメントできない」としている。
「役割大きい」
相模原交通安全協会の活動は管内の18支部、約200人のボランティアによって支えられている。交通安全キャンペーンに合わせた啓発活動のほか、毎年新1年生に黄色いランドセルカバーを贈呈し続けてきた。
大澤一則事務長は「相模原交通安全協会は交通戦争と言われる時代の前から活動を始め、75年を超える歴史がある。事故を防止するためにはハード、制度に加え、大切なのは啓発。その啓発を担ってきた協会の役割は大きい」と話す。
「あと何年続けることができるか。先行きを考えていかなければならない」と田所会長。
相模原交通安全協会では「あり方検討会」を立ち上げ、8月から本格的に今後の方針を検討していくという。