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「異動先・転職先で良いスタートを切りたい。」新組織で活躍するためにやるべきこと【ビジネスコミュニケーション力】

求人ボックスジャーナル

「異動先・転職先で良いスタートを切りたい。」新組織で活躍するためにやるべきこと【ビジネスコミュニケーション力】【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

人事異動や転職が、4月の次に多い10月。新しい環境で働いている方も多いのだろう。「新しい組織でパフォーマンスを発揮できるか?」、「職場に馴染めるか?」、または、上司が変わり「良い関係性を作れるか?」と不安を抱いている方も少なくないと思う。

12年間経営コンサルティングに従事し、WEBメディアの運営支援、記事執筆などを行うティネクト株式会社の代表、安達裕哉さんに、「新組織で活躍するために、やるべきこと」について伺った。

はじめに

異動や転職は一般的に、新しい環境に慣れたり、人間関係を構築したりするのに時間がかかるため、高いパフォーマンスを発揮するには、少し時間がかかります。

だからこそ、「第一印象が大事」とか「わからないことは積極的に尋ねる」といった話は、様々な転職サイトに書いてありますし、実際に大事でもあります。

しかし、こうした「型」に関する話は、あちこちで入手できるので、ここで改めて取り上げるまでもないと思います。
ここで改めて強調しておきたいのは、そうした「わかりやすい適応のしかた」だけでは、異動や転職の後の状況に対応するには不十分であることです。
本当に大事なことは、なかなか見えにくいものです。

では、「新組織で活躍する」ために、知らなければならない、そして、なかなか教えてもらいづらいことは何でしょうか。それが、今回の話です。

最初の難所「暗黙のルール」

新しい組織で働くうえでの最初の難所は、「暗黙のルール」です。

暗黙のルールがなぜ難しいかというと、

1.暗黙なので 明文化されていない 2.独自のルールであることが皆にも知られていないので、 教えないといけない、ということすら認識されてない

の2点が理由です。

例えば、こんなルールがありました。

私が以前に在籍していた会社では、パワーポイントのスライドをチェックするときには、モニター上でやるだけでは不十分で、いちど紙に印刷をしてからチェックする、というルールがあったのです。こうするとミスの発見率が上がるからです。

ただしこれはあくまでも「暗黙」でした。
人が増えてくると、このルールを知っている人と、知らない人が混在するようになります。

会社は都度、それを指摘するようになりましたが、
「それがルールであること」自体が、一部の人にしか知られていないため、守られないことが多発し、ついにこのルールは、「マニュアル」のような形で明文化されるようになりました。

つまり、こういうことです。

「暗黙のルール」は、そもそも「教えないといけない」という事実自体が認識されていません。そして、上の例のように、結構それが重要なルールであることもしばしばです。

ですから 異動・転職先には、「必ず暗黙のルールがある」ことを前提 として動きます。
軽視してはなりません。

特に「人によって言うことが違う業務」は、その表れであり、注意したほうが良いでしょう。

新しい仕事は「新しいやり方」を要求する

二つ目の関門は、 「前の職場と同じ仕事のやり方はしない」 です。

これについては、ピーター・ドラッカーが良い教訓を残してくれています。

新しい仕事が要求するものを考える──シニアパートナーの教訓

私は一九三三年にフランクフルトを離れ、ロンドンに渡った。初め大手の保険会社で証券アナリストをつとめ、一年ほどしてから、小さくはあったが、急速に成長していたある投資銀行に移った(中略)
ところが三か月ほどして、年配の創立者が私を部屋に呼びつけて、こう言った。「君が入社してきたときはあまり評価していなかったし、今もそれは変わらない。しかし君は、思っていたよりも、はるかに駄目だ。あきれるほどだ」。二人のシニアパートナーに毎日のように褒められていた私は、あっけにとられた。
 その人はこう言った。 「保険会社の証券アナリストとしてよくやっていたことは聞いている。しかし、証券アナリストをやりたいのなら、そのまま保険会社にいればよかったではないか。今君は、補佐役だ。ところが相も変わらずやっているのは証券アナリストの仕事だ。今の仕事で成果をあげるには、いったい何をしなければならないと思っているのか」 。私は相当頭に血が上った。しかし、その人の言うことが正しいことは認めざるをえなかった。そこで私は、仕事の内容も、仕事の仕方も、すっかり変えた。
 このとき以来、私は新しい仕事を始めるたびに、 「新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか」を自問している 。もちろん答えは、そのたびに違ったものになっている。

ピーター・ドラッカー プロフェッショナルの条件 ダイヤモンド社より

当たり前のことではありますが、なかなか気づきにくい事実です。
つまり、新しい仕事は「新しいやり方」を要求するのです。

ドラッカーはまた、昇進するとほとんどの人が凡人になってしまう理由は、「自分を昇進させてくれたやり方で仕事を続けてしまうから」と言います。

営業部長は、普通の営業パーソンとは異なった仕事をしなければなりません。
それは、日常の行動がそうであるだけではなく、物の見方も変えなければならない、ということです。

例えば営業パーソンは、自分が1位になることは望ましい仕事ですが、営業部長にとっては「誰か一人だけ傑出した成果をあげる」のは、実は頭痛の種だったりします。
かつては自分がそうだったとしても、です。

「彼のやり方をマネしなさい」と言っても、皆がそれをできるわけではない。
だから彼のやり方を、他の人もできるやり方にすること、それが営業部長に課せられた仕事であると認識せねばなりません。

異動や転職の後にも、これと全く同じようなことが起きると考えてよいでしょう。
つまり、 これまでの方法に固執せず、新しい職場環境で何が求められているのかを考え、成果を上げるために必要な適切な方法を見つけ、実行する ことが必要です。

教えてくれたことに対して返せるのは「感謝」だけという状況に耐える

異動や転職直後は、自分が新人に戻った時のように、まわりの人の力なくしては全く仕事ができなくなります。
そこで重要なのは、「自分は新人だ、何もできないことは恥ずべきことではない」と自らに言い聞かせることです。

もちろん、そのような状態はどうしても、こころに負担を多くかけます。
「聞いてばかりで、こちらからさし出せるものがない」と、どうしても聞くこと自体がイヤになってしまうのです。

しかしそのために「聞かないで進める」という決定をするのは非常にリスクがあります。
聞くべきことは聞かねばなりません。

ではどうするか。
しばらくの間、 自分からさし出せるものは「感謝だけ」という状況を受け入れるしかありません 。感謝の気持ちを伝えることで、相手に対しての責務を果たしている、と自分を納得させます。

もっと言えば、感謝の気持ちを具体的に伝えてください。
例えば、「先日のプロジェクトでのサポート、本当に助かりました。ありがとうございます」といった具体的な事例を挙げることで、相手に対して感謝の気持ちをより明確に伝えることができます。

「教えてもらって当然」という態度の人に快く教えてくれる人はいません。
異動や転職の直後こそ、「感謝を形にすること」が重要になります。

一度、私は東京から大阪に赴任したことがあります。

その時、一番助かったのは、大阪の商習慣や、お客さんの特性を教えてくれた部下たちでした。
赴任したての上司がどのような人間なのか、部下たちも不安に思っていますから、現場から教えてもらうために、感謝のコミュニケーションをとることは、非常に有効でした。

以上が異動と転職にかかわる注意事項です。服装や遅刻などに気を付けるのは当然ですが、長期的には上に挙げた3つが、仕事のパフォーマンスに大きく影響してくるでしょう。
健闘を祈ります。

プロフィール

安達裕哉

1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。 品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。 大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。
現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」および生成AIコンサルティング会社「ワークワンダース」 の代表として、コンサルティング、webメディアの運営、記事執筆などを行う。

代表著書 『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること(日本実業出版社)』
『頭のいい人が話す前に考えていること(ダイヤモンド社)』 X(旧Twitter) 安達裕哉

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