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石井琢磨、万雷の拍手に迎えられ堂々ベルリンデビュー! 名門ベルリン交響楽団との共演、現地レポート&写真が到着

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撮影=Peter Adamik

自らのYouTubeチャンネル「TAKU音-TV」がフォロワー数32万人にもなり、日本では、各所のコンサート・チケットで完売が続いている、ピアニスト石井琢磨。

2025年6月8日、ついにドイツ・ベルリンのフィルハーモニーホールで、マエストロ=シェレンベルガーの指揮で、名門ベルリン交響楽団との共演を果たした。曲目は、ロベルト・シューマンが愛妻クララに捧げた、ロマン派を代表するピアノ協奏曲であるが、なんとこの日はシューマン215歳の誕生日という偶然も重なり、特別な空気にホール全体が包まれた。とくにソリスト・アンコールで弾いたシューマンの「献呈」では、シューマンの魂が「アヴェ・マリア」の旋律とともに舞い降りたかのような錯覚にホール全体が陥り、最後の一音が消える瞬間に観客の多くから大きな感動の溜息が漏れた。石井琢磨による歴史的快挙を現地から、関係者のコメントも交えてレポートをする。

撮影=Peter Adamik

この日のベルリンは、朝に俄雨は降ったものの、昼前には晴れ、穏やかな日曜日となった。

ベルリン中から老若男女が現れて、次第に客席が埋まっていく。開演前には、なんと!最上階まで観客が入り、満席と言っても良いほどの熱気に包まれた。

カラヤン時代からアバドそしてラトルまでのベルリン・フィルで首席オーボエ奏者であり、前のベルリン交響楽団の音楽監督であったシェレンベルガーが久しぶりに指揮することにベルリンっ子たちも期待が大きいのかもしれない。シューマンのピアノ協奏曲とベートーヴェンの交響曲第3番とコリオラン序曲という、人気の楽曲がプログラムされていることもあるだろう。石井琢磨のキャスティングもあり、いつもよりも日本人の観客の姿が目に付く。

コリオラン序曲の劇的なスタートで、シェレンベルガーが往年のベルリンらしい音楽づくりでテンションが高まったところで、いよいよ石井琢磨の登場である。日本と同じようなにこやかな表情で登場するものの、世界的な舞台での初めての演奏である。緊張しない方がおかしい環境ではないかとこちらも身構えてしまう。しかし、シェレンベルガー指揮するベルリン交響楽団の劇的なトゥッティとともに、石井の見事な下降和音が奏でられると、そんな余計な心配も吹き飛ぶような、美しい音楽の奔流がホールを満たした。

撮影=Peter Adamik

このホールの舞台を踏んだ日本人が過去にいったい何人いたのだろうか?小澤征爾・佐渡裕、そして直近の山田和樹と世界的に活躍してきた指揮者たちと、ソリストは内田光子、藤田真央そしてヴァイオリンの天才少女HIMARIぐらい。筆者が浅学にして知らないだけかもしれないが、おそらく両手で足りるはずだ。角野隼斗も、まだ小ホールでリサイタルをやっただけで、大ホールのステージを踏んではいない。(来年にDBとの共演が予定されているが)

全ての演奏家にとっての憧れの舞台であり、だからこその重圧もあるこのステージで、それを跳ね返すように、コンチェルトを華麗に演奏し始める石井。ウィーン仕込みの流麗な表現とシェレンベルガーと入念な打ち合わせとリハーサルを重ねて磨き上げた演奏が、ベルリン・フィルハーモニーホールに満ちた観客をどんどん魅了していった。海外オーケストラならではの溌溂とした演奏が、石井のピアノと会話するように展開していく。過度にテンポを揺らすことなく、心地よい自然なテンポ感で、第1楽章が終わる。驚いたことにそこで、観客から大きな拍手が沸き起こる。観客が自然と石井の音楽を楽しんでいることが伝わってきた。シェレンベルガーは少し拍手を押しとどめるようなジェスチャーをしながら、第2楽章へ。ゆったりとした音楽づくりの末に、第3楽章のイントロダクションにそのまま突入し、また音楽の奔流がホールを満たしていく。石井が、見事なカデンツァを展開すると、いかにもシューマンらしい不思議な接合部を経て、コーダへ。石井琢磨の挑戦は、割れんばかりの大きな拍手の中で、劇的なクライマックスを迎えた。

撮影=Peter Adamik

アンコールに応えての、ソリスト・アンコールは冒頭でも触れたように、協奏曲と同様にシューマンがクララに捧げた歌曲集「ミルテの花」の中の「献呈」(リスト編曲)である。十八番として弾き続けてきたこの曲の演奏には何の迷いもあろうはすはない。アンコールにしてもはや自分のホームグランドのように演奏を楽しんでいる、石井の姿がそこにあった。そして、シューマンが生まれて215年目という偶然の悪戯によって、「献呈」に挿入された「アヴェ・マリア」の旋律を弾いた刹那、シューマンの魂と愛を感じた観客が多くいたにちがいない。石井の最後の一音が、ホールの壁に吸い込まれたそのとき、観客からなんともいえない溜息が一斉に漏れたのだ。ドイツ語で「美しい」という意味の言葉(schön )の囁きとともに。本編を上回る雷鳴のような拍手がホールを満たした。

石井の驚異的なベルリンでの協奏曲デビューのあとは、シェレンベルガーによるベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」である。てきぱきとしたテンポで、ベートーヴェンの交響曲のなかで第九のつぎに長い演奏時間を要する、この曲を小気味良くさらりとした口当たりで聴かせてくれる。対談でもシェレンベルガーが話していた、カラヤンのドラマトゥルギーの影響も感じさせながらも、ライトな感覚は時代にあった演奏であるように感じたし、やはり本場ドイツの名門にしか表現できない、ベートーヴェンらしさのようなものが厳然と存在していた。

撮影=Peter Adamik

関係者の話によると、終了後にはマエストロ=シェレンベルガーやオーケストラの面々からも石井氏は絶賛されたようであり、開場にオーケストラから招待された日本大使も感動を石井に伝えたそうである。

この奇跡のようなベルリン公演からスタートして、21日からはなんと13都市での日本ツアーである。6月8日のベルリン公演に行けなかった方も、きっとその感動と同じ、いや、ますます磨きがかかった表現で、それ以上の感動を体験できるだろう。

あとから決定となった名古屋公演でも、劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業の助成が決定となり、18歳以下の若年層の無料招待の募集も開始となった。

また、石井琢磨のYouTubeチャンネルでは、6月8日ベルリン公演前後の密着動画が公開となるので、こちらもあわせて楽しめる。

撮影=Peter Adamik

取材・文=神山薫 撮影=Peter Adamik

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