“甲賀忍者の里”で食べられている「ふじの葉ずし」は、たった2軒にだけ受け継がれる貴重な押しずし
“甲賀忍者の里”として知られる滋賀県甲賀(こうか)市甲賀町。町内にある大鳥神社では、毎年7月23~24日に大原祇園が行われます。その日に作られるのが「ふじの葉ずし」。しかもこれ、参道沿いの集落でしか作られておらず、現在、たった2軒にしか受け継がれていない(*)貴重な押しずしなのです。*一般販売はされていません。イラストを拡大して見てね~。
どんなお味?
ちょうどピンポン玉サイズの酢飯の上に、甘辛く煮たシイタケ、サケ、ゆばがのります。
押しずし用の箱に詰めて1日ほど押したら完成! 包んだ姿は柿の葉ずしそっくりで、ひと口サイズがよき。
暑い夏も、何個でも食べられる軽やかな味わい~♪
「なんでこの集落でしか作られていないんですか?」
「それが……いつ頃から、なぜ作られているかまったくもって不明なのよ~。今は生サケを塩と酢で漬けたものを使っていますよ」と、作り方を教えてくれた方。
なんでサケ?
滋賀県でハレの日の押しずしとして多いのは、断然サバずし!!
福井県の若狭湾から京都まで、塩サバを運んだ「鯖街道」が滋賀を通っていることや、昔の街道づたいで京の食文化が伝わっているから。
でもふじの葉ずしは、なぜかサケを使います。いわれは諸説あります。
①サバは足が早いので、真夏の祭りには不向きだったから節。
②江戸時代に甲賀のくすり売りが旅先から塩ザケを持ち帰ったからという説。
甲賀忍者はくすり売りとして、あちこちに出向いていたんです。
ふじってなに?
“ふじ”と聞くと、たぶん春から初夏に咲く“藤の花”を思い浮かべる人が多いと思います。
ところが!! このすしに使う“ふじの葉”の“ふじ”はクルマフジという葛(くず)のことなんです。
葛ってあちこちに生えている、あの雑草!?
「大原祇園の時期がちょうど、ふじの葉が青くて大きい時期なのよ」
大原祇園とは
7月23日は宵宮祭、7月24日は本祭として「花奪い」が行われます。
宵宮祭の時に、本物のロウソクを点けた和紙と木でできた灯籠を本殿前で激しくぶつけ合うシーンが個人的に好きです。
インヨーソーライ。
わ、燃える。大丈夫かな~!?
取材・文・イラスト・写真=松鳥むう
松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。