ASTORO Cafe ~ 気軽に相談できる場所を。U-29同士の交流の場を作った倉敷青陵高校・國本涼太さんの活動
社会人が新たな出会いや交流を求めて参加する異業種交流会。
ある日、異業種交流会で知り合った人から、倉敷天文台で開催している「ASTORO Cafe(アストロカフェ)」というイベントの存在を教えてもらいました。
「ASTORO Cafe」は、29歳未満(Under29:U-29)の交流会イベントで、異業種交流会とはまた違ったコンセプトで開催しています。
イベントの主催は、倉敷青陵高等学校に通う國本涼太(くにもと りょうた)さん。現役高校生ながら、企業と連携したイベントの運営や、ビジネスコンテストの出場など、さまざまな活動に取り組んでいると聞き、興味が湧きました。
現役高校生が主催しているイベント「ASTORO Cafe」の裏側について、國本さんに取材しました。
「ASTORO Cafe」とは
ASTORO Cafeは、倉敷天文台でおこなわれている29歳未満の交流会です。第1回は2024年3月に開催され、以来月に1回のペースで開催されています。
・何かの活動に励む人達の相談の場
・「活動したいけど一歩目が踏み出せない」という人に、新しい出会いや活動のヒントを提供する場
という二つの側面を持っています。
これまでの参加者には、探究学習のテーマ決めに悩む中学生や、自身が考案したビジネスプランのフィードバックがほしい高校生。そして、そのような人達にアドバイスを送り、悩み相談に乗る人などがいたそうです。
年齢が近い人達が集まるため、会場は終始和気あいあいとした雰囲気で、参加者同士の会話も弾みます。
主催者の國本さんが受験生のため、次回の開催は未定ですが、開催する場合はInstagramで告知されるのでチェックしてみてください。
ASTORO Cafe主催者・國本涼太さんについて
ASTORO Cafeを運営している國本涼太さんは、倉敷青陵高校に通う高校3年生です(2024年8月現在)。
國本さんはASTORO Cafe以外にも、さまざまな課外活動に挑戦してきました。
高校2年生の時には岡山イノベーションスクールを受講し、県内のビジネスプランコンテストに出場。その後、スクールで出会った仲間たちと就職系のイベントを運営するなど、就職・キャリアを軸にした活動に取り組んでいます。
國本さんがキャリア系のビジネスに興味を持ったきっかけは、高卒就職を目指した過去にありました。
高卒就職は、大学の新卒と比べて、仕事の選択肢が限られてしまう現状があります。思うようにやりたい仕事ができないと感じた國本さんは、「高卒就職でも自信を持って働ける社会を作りたい」と考えました。
岡山ガス主催の「岡山ガス ビジネスプランコンテスト2023」では、高卒就職者と地方の中小企業をマッチングさせるサービスを提案し、國本さんは高校生の部で受賞します。
その後も、岡山大学企業部と連携したセミナーイベントや、地方教育プログラム「無花果(いちぢく)」を運営している無花果グループと企業説明会を開催するなど、イベント運営にも取り組みました。どちらも、國本さんが課外活動で広げた人脈で生まれた出来事でした。
意欲的に活動するなかで、「気軽に相談しあえるようなコミュニティがあれば良いな」という想いが生まれ、ASTORO Cafeはその役割を担うような場所として始まりました。
大人の手を借りず、自ら試行錯誤して開催を重ねてきたASTORO Cafe。イベント運営のやりがいや成長となったポイントなど、國本さんにお話を聞きました。
國本涼太さんインタビュー
──ASTORO Cafeはどのような経緯で企画されましたか?
國本(敬称略)──
もともと倉敷天文台では、ASTORO Bar(アストロバー)という異業種交流会のようなイベントが開催されていました。
そこに参加した時に、主催者のかたに「若者向けバージョンの交流会を作らないか」と声を掛けてもらったのがASTORO Cafeを立ち上げたきっかけです。
若い世代同士がつながるコミュニティが倉敷にはまだ無かったので、気軽に立ち寄れて相談ができるような場所を作りたいなと思いながらイベントを企画しました。
まず考えたのは、若者が集まって相談や情報共有をする交流会でした。
探究活動に励む中高校生や、社会に対する課題意識を持っている人、その人達に対してアドバイスやフィードバックをくれる人達が交流できる場を作ろうと思ったんです。
年齢が近ければざっくばらんに話せるかなっていうのもあって、学生とそこまで年齢に差が出ないような29歳未満の人達を対象にしたイベントを企画しました。
──実際に運営してみていかがでしたか。
國本──
第1回のASTORO Cafeは個人的に成功したと思っています。中高生はもちろん、市内の企業で働かれているかたや、学校の先生も来てくれたので、人数的にもバランス的にもちょうど良かったです。
その時はただの交流会ではなく、僕が皆さんの前で岡山ガスのイノベーションコンテストで話したような内容をプレゼンテーションしたんです。それに対して参加者のかたが「もっとこうしたほうが良いよ」とアドバイスをくれるような場でした。最初に構想していた内容と、理想に近い形で終われたと思います。
ただ、2回目以降から少しずつコンセプトを保つのが難しくなってきましたね……。
──2回目以降、イベントの方向性に悩まれたのですね。
國本──
1回目で「誰かがプレゼンする」という形式を作ってしまったので、2回目以降は発表してくれるメンバーがなかなか見つからず決まりませんでした。
同じ形式で運営を続けるのに苦労したので、そこはだいぶ反省点かなと思います。結局、プレゼンしてフィードバックをもらうという流れが成り立たなくなったので、交流メインで雑談のみになってしまった回もありました。
2回目以降から社会人のかたの参加も減ってきて、集客にもかなり苦労しましたね。
──ASTORO Cafeの運営を通して得られたことはなんですか。
國本──
反省点でいうと二つあります。
一つ目は、集客方法をしっかり考えて運営していかないと長く続けられないことを実感できたこと。
二つ目は、「どういうイベントにしていきたいか」というコンセプトの部分を強く持つ大切さを知れたことです。
今後、自分でイベントを運営する機会があれば、この二点の反省をしっかりと生かしていきたいと思っています。
ただ、反省だけでなく、ASTORO Cafeを通じていろいろな人と出会えたことは、自分のなかで大きな糧になりました。もともとコミュニケーションをとるのが得意なほうではないので、ASTORO Cafeで新たな縁が広がったのはうれしかったですね。
今回のような取材も、ASTORO Cafeをやっていたからこそ生まれた体験だと思います。イベントから新たな活動が生まれることを実感できたので、開催する意義を再確認できました。
ただ開催して終わり、ではなくて、そのイベントを通じてさらに活動が広がる流れを大事にしていきたいです。
──ASTORO Cafeの今後の目標について教えてください。
國本──
ただの交流だけでなく、悩み事を共有して相談しあえる場所を作っていきたいです。
あとはASTORO Cafeの交流を通して新たな活動を生んでいきたいので、参加者にとって新しい出会いが多く生まれる場所にしていきたいと思っています。
たとえば、今考えているのは「参加者プラス1」。参加してくれた人に、次回参加する際に友だちをひとり連れてきてもらうことで、新しい出会いを増やしていこうというのが目標です。
運営的な面でいうと、後任の人を探しつつ、しっかりと引き継げるように内容とコンセプトをしっかりと固めていきたいと思います。より良いASTORO Cafeが作れるように頑張っていきたいです。
──國本さんご自身の目標はありますか?
國本──
今目指しているのは「誰もが職場で輝ける社会」です。
その社会を実現するために、いろいろな手段があると思うんですけど、僕は高卒就職に着目しています。
というのも、自分自身がもともと進学志望ではなく、モノづくりの仕事に興味があって工業高校に行きたかったんです。結局、倉敷青陵高校に進学しましたが、今思えば、高卒で就職してもやりたい仕事はできなかったんじゃないかなと思います。
大学に進学して就職するという流れが一般的で、その流れを外れてしまうとどうしてもネガティブなイメージを持たれてしまう。そこで、高卒就職者が自分自身の選択に自信を持って働ける社会を作ることが大事だと考えています。
──具体的な事業も考えられたんですよね。
國本──
はい。岡山ガスのビジネスプランコンテストで発表したのは、地方の中小企業と高卒就職のマッチングサービスの提案でした。
現状、高卒就職者が入社する企業って、認知度の高い大手企業が多いんです。中小企業も人を求めているのになかなか良い人材がとれない状況なので、もっと中小企業の魅力や情報を伝えられたら良いのかなと思っています。
高校生・学校・保護者のかたに中小企業の正しい情報を伝えて、入社後のギャップがなるべく減らせるようなサービスを作りたいです。
高卒就職の仕事の選択肢を増やしていきたいですし、やりたい仕事を後押しできるような、企業と高卒就職のマッチングサービスの事業をスタートできたらと思っています。
──ASTORO Cafeの活動は今後に生かせそうですか。
國本──
そうですね。ASTORO Cafeの運営はもちろん反省点も多かったですが、「イベントを運営したことがある」というのが自信につながっているような気がします。
先ほど話した高卒就職者と企業のマッチングサービスは、Webサイトをおもに使っていく予定ですが、直接企業と会って話して、選びたいかたもいると思うんです。なので、いつかは合同企業説明会のような、企業と交流できるような場も作っていこうと考えています。
そのような「リアルな場づくり」をする時に、ASTORO Cafeを運営した経験を生かせたらうれしいです。
──読者のかたにメッセージをお願いします。
國本──
運営メンバー一同、ASTORO Cafeを今まで以上に良いイベントにできるよう頑張りますので、もし興味を持たれたかたがいたらぜひ一度参加してみてください。
あとはASTORO Cafe運営メンバーも募集中です。イベント運営に携わってみたい人や、僕たち運営側の想いに共感してくれる人は、一緒に運営していきましょう。
少しでもイベントに興味があるかたとお話できたらうれしいです。
おわりに
筆者は、第3回ASTORO Cafeに参加したことがあります。
29歳未満という上限が設けられているおかげで、年齢が近い人達と話がしやすく、参加者全員が意見を言いやすい場でした。
このような交流の場があると、最近の中高生の悩みや流行り、教育事情などが知れて、筆者自身も勉強になることが多かったです。また、熱意のある10代と出会えたことで「自分が10代の頃は何をしていただろうか……」と過去を振り返る機会にもなりました。
悩みを共有したい人や交流を広げたい人はもちろん、頑張る人達を応援したい人も、ASTORO Cafeに参加してみると新たな発見があるかもしれません。
試行錯誤を経て進化していくASTORO Cafe。國本さんの今後の活躍にも期待したいです。