“3軍暮らし”から這い上がってきた富士市立のボランチ岩﨑翼。武器は冷静沈着なゲームメークと正確なボールコントロール
静岡県東部地区の高校サッカー界を牽引する富士市立に、めきめきと頭角を現したボランチがいる。昨年までひっそりと3軍生活を送ってきた岩﨑翼(3年)だ。4月のプリンスリーグ東海開幕2週間前にAチームに引き上げられると、一気に定位置を奪取した。
技術を大切にするチームの中でも、ボールコントロールはトップクラス。富士市立のビルドアップはほぼ、この岩﨑から始まる。存在感は抜群だ。
最終ラインまで落ちてきてはGKからボールを受け、敵陣の穴を探しながら前進していく。ワンステップで正確なロングボールを前線に届けられるのも魅力だ。
「みんなが感情的になってる時でも、冷静に声を掛けてチームをコントロールすることを意識している」
監督「彼は本当に努力家」
岩﨑は伊豆市出身。小学時代は伊東市を拠点にするFCレイマールでプレーした。中学時代はアスルクラロ沼津U-15に所属していたがユースには昇格できず、富士市立へ。技術を生かしたパスサッカーが魅力的に映ったという。
入学後は下積みが長く続き、2年生の1年間は3軍暮らしだった。新チームが発足した後も2軍に“昇格”しただけで、新人戦でも出番は訪れなかった。
岩﨑の視界が開けたのはプリンスリーグ開幕2週間前の3月。突然、Aチームに抜擢されると、ゲームメーカーとしての才能を発揮。杉山監督の信頼を勝ち取るのに時間は掛からなかった。
「彼は本当に努力家。正確なボールコントロールは元々備わっていたものではなく、毎朝ボールを触って身につけたもの。自分の努力でポジションをつかみ、今は自信を持って攻撃の起点になってくれている」
伝統校の壁を突き破れるか
富士市立はプリンスリーグ東海で現在7位。後期の巻き返しに向け、中断期間中にどれだけチーム力をアップさせられるか。悲願の全国選手権出場も、その延長線上にある。
ようやく“表舞台”に出てきたゲームメーカーは、ピッチの外に出ても冷静だ。「ずば抜けた選手はいないけど、チームとしてまとまっている。今まで自分たちは『弱い学年』と言われてきたけど、インターハイやプリンスリーグを通して戦えるなと感じている」
杉山監督が岩﨑に求めるレベルは春よりも高くなっている。「チームに安定感をもたらしてくれているが、彼もそれだけで満足していたらいけない。この夏は、攻撃で前に出ていくことをもっと要求していきたい」
これまで手が届きそうで届かなかった全国切符。何度も跳ね返されてきた伝統校の壁を突き破るには、このゲームメーカーのさらなる飛躍が欠かせない。
>>>攻撃力アップへいよいよ本腰!静岡県総体サッカーで初の4強入りを果たした富士市立は実り多き秋を迎えられるか