新小学1年生【学校給食の悩み・不安】好き嫌い・遅い・小食・牛乳…管理栄養士・松丸奨が全回答
はじめての給食についての心配ごとと困りごとに、人気管理栄養士・松丸奨先生がお答えします! 1回目は、保護者が気になる給食の「時間」、「量」、「好き嫌い」についてです。
【画像】管理栄養士・松丸奨先生が全部答えます!「新・1年生の給食の悩み」「好き嫌い」「食べるのが遅い」「小食」「牛乳が苦手」など、はじめての給食について心配ごとを持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。しかし、「新1年生にはさまざまな配慮が実施されています」とは、管理栄養士の松丸奨先生。
というのも、文部科学省が2020年に新設した小学校学習指導要領で「スタートカリキュラム」の実施が義務化。
「入学後は、時間割や学習活動など、新しい学校生活を創り出していくためにさまざまな工夫がされるのですが、給食についても新1年生には給食時間を長く設けるようにしています」(松丸先生)。
そこで松丸先生に、新1年生の給食の疑問や様子について教えてもらいました。
心配ごとで多いのは「時間」
「保護者の方が最も気になるのは『うちの子はちゃんと食べられるだろうか』ということだと思います」と話すのは、都内の公立小学校で管理栄養士として働く松丸先生。
給食の心配ごとの中でも、特に「時間」について気になる保護者が多いといいます。
「小学校の給食は、準備と片付けを含めて45~50分で終わらせなければいけません。多くの小学校では、喫食(きっしょく※食事を楽しみながらおいしく食べること)の時間は20分程度になります」(松丸先生)
しかし、入学後の約1ヵ月は、そこまで「時間」の心配をしなくて大丈夫。なぜなら、新1年生に向けた特別な配慮が実施されているのです。
「入学後は、全国の小学校がスタートカリキュラム(※1)というものを実施することが義務付けられています。幼稚園や保育園での生活から変わる子どもたちに、時間割りや学習活動を工夫するのですが、給食についても新1年生用のカリキュラムを組みます。
ちなみに我が校では、4月の間は、喫食に40分の時間を設けるようにしています」(松丸先生)
(※1 スタートカリキュラム:小学校に入学した子どもが、幼稚園・保育所・認定こども園などの遊びや生活を通した学びと育ちを基礎として、主体的に自己を発揮し、新しい学校生活を創り出していくための カリキュラム。文部科学省が2020年に新設した小学校学習指導要領で、実施が義務化された)
慣らし給食の行う学校も
保育園の“慣らし保育”のように、“慣らし給食”を行う学校もあります。
「おかずを1品減らしたり、こぼすと危ない汁物は出さないようにしたりする学校もあります。ただ、このような“慣らし給食”を導入すると、食べる時間は早くなりますが、お腹が減ったり、栄養が足りなかったりなど賛否両論あるので、給食の時間を延ばすカリキュラムを実施している学校が多いです」(松丸先生)
このスタートカリキュラムの実施は、たいてい4月いっぱいまで。5月からは普通の小学校生活になるので、「家庭でも20分で食べられる練習はしておいたほうがいい」と松丸先生。
家庭でできる「20分で食べる練習」とは?
「ついつい楽しすぎておしゃべりしたり、気づくとぼーっとしちゃったりする子も。そこでおすすめなのが、学校でも実践している『もぐもぐタイム』です。もぐもぐタイムとは、『いただきます、をしてから5分間は、おしゃべりしないで食べようね』という時間です。ぜひご家庭でも取り組んでみてください」(松丸先生)
みんなで楽しくワイワイ食べるのも給食の醍醐味。でも、7割くらい食べるまではもぐもぐタイムを導入することで、しっかりと食べられるように。
「お家でも、『もぐもぐタイム』にはテレビも消すし、スマホもいじらないこと。最初の5分間だけでいいので、家族みんなでもぐもぐタイムをやってみてください。ある程度食べたら『今日はどうだった?』なんて、会話をしながら楽しく食べてくださいね」(松丸先生)
食べ切れる? 足りる? 給食の量
次に気になるのが、給食の「量」。小学校の給食については、文部科学省の定める学校給食法という法律で決まっており、保育園や幼稚園からのころに比べると、量は2割くらい増えることになります。
「保護者の方から『うちの子は小食だから、給食を食べ切れるか心配です』という声もよく届きますが、心配はいりません! 今の時代、無理やり食べさせるのは体罰になるので、絶対にやりません」(松丸先生)
量について不安に感じている子には、給食の配食ルールを教えてあげてください、と松丸先生。
「給食の残し方」 最近はこんなルールになっていた!
「給食は、まずみんな同じ量を盛り付けます。『私はこれ少なめ』、『僕はこれをたくさん食べたい』とやっていると、配食に時間がかかるから。だから、一度盛り付けられた給食に手をつける前に『自分が食べられる量だけ戻しに行く』というスタイルが、最近の主流です。でも、苦手なおかずを全部戻してしまうのはなし! 半分は戻していいから、もう半分は頑張って食べようね、というやり方が一般的かと思います」(松丸先生)
給食の1食分は考えられたそのとき必要な栄養価
しかし、給食の1食分は、子どもの健康と成長を考えて栄養価の計算がされたものです。
「おかわりをしなくてもいいけれど、少しずつ全品頑張って食べておいでというふうにご家庭からお子さんを送り出してほしいですね」(松丸先生)
量が足りるかどうかが心配な親子も問題なし、と松丸先生。
「新学期はやっぱり給食に慣れてない子が多いので、どうしても余りが出ちゃうもの。たぶんおかわりはいっぱいあるはずなので、いっぱい食べたいという子も心配しなくて大丈夫です(笑)」(松丸先生)
給食の献立を考える管理栄養士は、新1年生がはじめての給食でもたくさん食べやすいよう、たくさんの工夫をしています。
「新学期は、盛り付けがしやすく、人気のある献立から始めていきます。今年度は、コーンピラフとサラダ、スープが、最初の給食メニュー。カレーや唐揚げ、ハンバーグなどから給食をスタートさせる学校もあるでしょうね。はじめての給食と向き合う子どもたちに『わぁ、給食っていいなぁ』と感じてほしいという思いがあります」(松丸先生)
管理栄養士・担任 どこまで相談をして良いの?
保護者から給食についての相談を受けることも多いという松丸先生。
「不安なこと、困っていることなどは何でも相談してもらっていいと思います。管理栄養士の先生でもいいですし、担任の先生に連絡帳などで子どもの様子を聞いてみるのもいいと思います」(松丸先生)
でも、好き嫌いが多い、食べるのが遅いなどの食の悩みを、どの程度まで担任の先生に相談していいものなのか……。遠慮してしまう保護者も多そうです。
「子どもたちは保護者の方が思っているよりずっと給食の時間頑張っています。お家では甘えて、『あれも、これも食べられない』なんて言っている子も、学校では楽しく、みんなで食べるという雰囲気にのせられて、苦手なものを食べられるようになる子もたくさんいるんですよ。
案外『問題なくたくさん食べられていますよ』なんて返事がもらえるかもしれません」(松丸先生)
年長さんは保育園や幼稚園で相談してみても
小学校入学前に不安なら、保育園や幼稚園でまず相談してみても。
「未就学児だと、アプリで完食率を教えてくれたりする園もありますよね。子どもたち一人一人の様子をしっかりと見てくれるのもこの時期。食べる量やスピードに不安があるなら、就学前に一度様子を聞いてみてください。保育園でも就学に向けての声掛けをしてくれたり、家庭で何かできることがあったりするかもしれません」(松丸先生)
また、小学校の献立には子どもたちがいろいろな食材を好きになる工夫が隠されているから安心してほしい、と松丸先生。
「お家ではこの野菜が嫌い、なんて言っている子も、学校給食では食べられたりするんです。大量に調理するとうま味が出るのと、食感や大きさなども子どもたちが食べやすいようにとことん工夫していますから!」(松丸先生)
食の嗜好は、発達や成長によっても変わってくるもの。
「保護者の方の不安は子どもたちへも伝わります。子どもたちが楽しく、たくさん給食を食べられるよう、あまり不安に思わず、安心して送り出してくださいね」(松丸先生)
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時間や量、味についての不安を解消してくれた松丸先生。次回2回目では、はじめての給食で子どもが困ることがないよう、お家でできることをお聞きします。
撮影/日下部真紀
取材・文/遠藤るりこ
松丸先生の新1年生の給食記事は全2回。
2回目を読む。(※公開日よりリンク有効)