言葉の発達がゆっくりな次男、幼稚園入園後に異変?母と「二人っきりの時間」をつくってみたら
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
言葉が遅い次男、幼稚園の満3歳児クラスに通うことに
3歳になった次男かーは、夏休み明けから幼稚園の満3歳児クラスに通うことになりました。
当時、かーは母(私)に対しての執着が激しかったので、入園するにあたり少し心配していました。しかし、人と関わるのが好きな印象がありましたので、すぐに慣れていくかなあと楽観的に考えていました。
かーの通う幼稚園はバス通園でした。朝、バスが迎えに来てくれる場所まで送っていくと、目に涙を浮かべています。長男りーにはなかった反応でした。かんしゃくを起こしている時のように泣き叫ぶのではなく、目にいっぱい涙をためて両手でふいていました。感情があふれないように我慢している姿に心が痛みましたが、これも成長なのかなと思い、私も一緒に泣きそうになるのをこらえて、笑顔で見送るようにしました。
環境変化のストレス?寂しさ?怒りっぽくなった次男
かーは最初こそ涙を見せていたものの、入園から1か月ほど経った頃には、バスが来るとピョンピョン跳ねて喜んで、うれしそうに先生と手をつないでいる姿も見られるようになりました。そのため、徐々に園の生活にも慣れてきたのかな?と思っていたのですが……。
それは家で遊んでいる時のことでした。兄と弟に対して、かーが発する声が怒っているように聞こえたのです。
私が見たところでは、2人がかーに特に何かしたというわけではなかったのですが、明らかにイライラしている様子が見られました。その場から私が離れると、かーはすかさず「あーー!」と怒りながら私を探しに来ました。その後お風呂に入る時、夫に対しても怒った言い方が続きました。
当時、三男おーは1歳。歩き始めて、いろいろなものに興味津々で、なかなか目が離せない状況でした。長男りーは療育園に通っていましたが、家に帰ってくる時間は次男かーとほとんど同じでした。かーは甘えられる時間も少なくなり、急に変わった環境に戸惑っていたのかもしれません。
次男に「甘え放題の日」をつくってみた!
ちょうどその頃、長男りーの誕生日のお祝いで、りーと夫が二人旅に行くことになっていました。そこで私は三男おーを実家に預け、幼稚園をお休みし、かーと二人きりで過ごす時間を設けました。
かーは久しぶりの母とのお出かけにとてもうれしそう。抱っこや手をつなぐなど、求めてくることにはすべてこたえました。その際、かーには「大好きだよ」「いつもありがとう」「かーのおかげでママは頑張れるよ」などたくさん話しかけるようにしました。
長男りーにも同じような言葉はかけますが、あまり長く集中が持たないため、すぐにどこかへ行ってしまいます。頻繁にはできません。
しかし、かーはそういう話をしている時には私の顔をじっと見て、落ち着いて聞いているように感じました。それからというもの、私は意識的にかーとスキンシップを多くとり、たくさん話をするようにしてみました。その効果があったからか、しばらくするとイライラした様子を見せることも減りました。以来、かーにはできるだけ、プラスの言葉がけをするようにしています。
長男と次男、それぞれの特性の違いに寄り添う日々
長男りーとは違い、スキンシップや人と関わるのが好きな次男かー。それぞれの性格や特性の違いがありますが、模索しながら対応をしていくのも、今思えば私は苦ではありませんでした。うまくいかないことのほうが多いですが、その分成功した時の反動がとても大きくうれしく感じるからです。
かーは幼稚園でも徐々に生活の流れを覚えて、安定して過ごしているようでした。これでひと安心、と思っていたのですが……今度は児童発達支援の先生から、気になる言葉を聞きました。かーの新たな問題が起きたのです。
その話はまたの機会に書いていこうと思います。
執筆/かしりりあ
(監修:新美先生より)
次男さんの幼稚園入園時の様子やかかわりについてお聞かせいただきありがとうございます。きょうだいでも、一人ひとり性格も入園時の反応も違って、それぞれに合った対応をお母さんが試行錯誤を楽しみながらされているというエピソードがとっても素敵だなと思って読ませていただきました。
幼稚園・保育園入園時は、楽しく通えていても疲れもたまるので、家に帰ってからかんしゃくをおこすようなこともよくありますね。
疲れがたまっているような時に、特別デーを設定するのはいいですね。きょうだいがいても1対1でママを独占できて、好きな遊びに付き合ってもらえる時間、甘えられる時間があると、心身ともにリフレッシュします。これはもっと大きくなっても続けていけたらいいかもしれないですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。