『星つなぎのエリオ』レビュー|孤独な2人が出会い、世界はやさしく変わっていく胸に残る夏のピクサー作品
『トイ・ストーリー』『リメンバー・ミー』『インサイド・ヘッド』などで知られるディズニー&ピクサーが贈る、最新長編アニメーション『星つなぎのエリオ』。
ひとりぼっちの少年エリオと、心優しいエイリアン・グロードンが、何光年も離れた宇宙で出会い、心を通わせていく――そんな心温まる物語です。
監督は『リメンバー・ミー』のマデリン・シャラフィアン、エイドリアン・モリーナ、そして『私ときどきレッサーパンダ』のドミー・シーという実力派の顔ぶれ。日本語吹き替え版では、川原瑛都(エリオ役)、佐藤大空(グロードン役)をはじめとし、清野菜名(オルガ役)や松山ケンイチ(グライゴン役)など、豪華キャストが名を連ねています。
8月1日(金)の公開に先がけて、SASARU movie編集部が試写会に参加。
今回は、その見どころをひと足早く、レビューします。
宇宙を夢見る少年の“出会い”が、心を変えていく
主人公は、宇宙に強い憧れを抱く少年・エリオ。両親を失い、孤独を感じながら毎晩星空を見上げる日々。その彼が偶然、地球代表として夢のような世界「コミュニバース」に招かれます。
そこで出会ったのが、エリオと同じような孤独を抱えたエイリアン・グロードン。
ふたりが交わす友情は、きっと誰にとっても「1番大切なものって、これかもしれない」と思わせてくれます。
子どものころ「地球じゃないどこかに行けたら」と思ったことはありませんか?そんな方には、エリオの気持ちが痛いほど伝わり、きっと胸の奥が熱くなりますよ。
知らない世界で出会う「本当の優しさ」
異星の仲間たちと過ごす中で、エリオは少しずつ心を開いていきます。友情や思いやり、家族のような絆――それは、彼にとって初めて触れる“優しさ”だったのかもしれません。
孤立だったエリオと、期待に押しつぶされそうだったグロードンが出会い、支え合うことで少しずつ変わっていく様子は印象的です。
2人の関係性の変化には、じんわりと沁みる“静かな感動”がありました。
忙しい日々のなかで、忘れかけていた誰かへの思いやりを、この映画がそっと思い出させてくれます。
ディズニー&ピクサーらしい映像美――でも、それだけじゃない
光と色彩に満ちた映像美は、まさにディズニー&ピクサーの真骨頂。リアルな地球の夜空と、幻想的でキラキラとしたコミュニバースとの世界観の対比が鮮やかで、夢と現実の間を旅するような感覚を味わえます。中でも、コミュニバースを探索するシーンのカラフルでポップな演出は思わず見入ってしまうほど。細部にまでこだわった造形美には驚かされました。
「まだ見ぬ世界は、もっと広い」――そんなメッセージを感じながら、「ディズニー&ピクサーらしさ」を超えて、“個人の物語”が深く胸に残る作品です。
キャラクターの個性も見逃せないポイント
『星つなぎのエリオ』の魅力は、エリオとグロードンの関係だけではありません。彼らを取り巻く個性豊かな仲間たちが、物語に彩りを添えています。
たとえば、毒舌な液状コンピューター・ウゥゥゥゥ、無線オタクのメルマック、心を読むクエスタなど、それぞれがエリオの成長を後押しし、宇宙の広がりをリアルに感じさせてくれます。
また、グロードンの父・グライゴンとの対立を通して、「違いをどう受け入れるか」というテーマも浮かび上がります。
登場人物たちは、まるでエリオの“心の鏡”のよう。日常にも通じる対話やすれ違いが、観る人の記憶に静かに残ります。
私の居場所って、どこだろう?
――そう思ったことのあるすべての人へ
『星つなぎのエリオ』は、観終わったあとにふと誰かの顔が浮かぶような、そんな温かさを持った作品です。コミュニバースの色鮮やかな世界は、まるで子どものころに夢見た“宇宙”そのもので、映像を眺めているだけでも心が軽くなる感覚がありました。
エリオとグロードンの間に育まれる、静かで深い絆には心を打たれます。誰かに想いを寄せることの尊さや、つながることのあたたかさに気づかされるこの物語は、心にそっと沁みる大人も泣ける作品です。
この夏、少し疲れていたり、誰かとゆっくり語りたくなったりしている方に、ぜひ観てほしい1本です。
『星つなぎのエリオ』基本情報
■公開日
2025年8月1日(金)
■監督
マデリン・シャラフィアン(『リメンバー・ミー』)
ドミー・シー(『私ときどきレッサーパンダ』)
エイドリアン・モリーナ(『リメンバー・ミー』)
■制作
メアリー・アリス・ドラム(『リメンバー・ミー』)
(原題:Elio)
■日本版声優
川原瑛都 (エリオ役)、清野菜名 (オルガ役)、佐藤大空 (グロードン役)
渡辺直美 (オーヴァ役)、野呂佳代(ウゥゥゥゥ役)、マユリカ中谷(メルマック役)
関智一(ヘリックス役)、沢城みゆき(クエスタ役)
安原義人(テグメン役)、子安武人(ユニバーサル・ユーザー・マニュアル役)
■日本版エンドソング
BUMP OF CHICKENの「リボン」
■配給
ウォルト・ディズニー・ジャパン
■公式サイト
https://www.disney.co.jp/movie/elio