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チョウチンアンコウの仲間たちは提灯が個性的? <多種多様な12種の提灯>をイラストで解説

サカナト

チョウチンアンコウ(提供:PhotoAC)

チョウチンアンコウは背びれの軟条が長く伸び、その先の膨らんだ部分が提灯のように光ります。この光を使って、魚をおびき寄せたり、驚かせたりすると考えられています。

提灯の膨らんだ部分には、発光するバクテリアを海中から取り込んで培養する部屋があります。その一部が半透明になっていて光を放つのです。

魚の絵を描いている筆者が、チョウチンアンコウの仲間たちの多様な提灯をイラストを使って紹介します。なお、発光の様子は、半透明の部分が光っていると考えて描写しています。

チョウチンアンコウの提灯は“糸”が特徴

チョウチンアンコウの提灯は、球体から伸びる糸が特徴です。糸は途中で枝分かれしていて、その先端が光るので光が分散して動いているようです。

チョウチンアンコウ(提供:ととげ)

他の生物からしたら、複数の生物が群れているように見えるのかもしれません。

それから、球体の部分から出ているふたつの突起も特徴的ですね。中にいる発光バクテリアからすれば、ここが部屋でいちばん大きな窓になるのかもしれません。

まるで“鬼火”のような迫力!オニアンコウの提灯

オニアンコウの提灯は糸が植物の根のように太く枝分かれしているため、全体が光っていると“鬼火”のように迫力があることでしょう。かなりお洒落なデザインです。

オニアンコウ(提供:ととげ)

しかし、他の魚から見て、これがおいしそうに見えるのかわかりません……。大きな光る生き物に見えているのでしょうか。

竿の部分がとても短いため、光に誘われて近づいたらすぐそこに口があります。気がついたらあっという間に丸のみにされてしまうことでしょう。

糸の先が三叉槍に?ビワアンコウの提灯

ビワアンコウの場合は1本の糸の先が三叉槍のように先が3本に分かれています。他のアンコウよりシンプルなデザインですね。

ビワアンコウ(提供:ととげ)

一見、アピールが少ないように見えますが、竿がとても長いです。あまりに長いため、竿を収めるための鞘が背中から飛び出しています。

この長い竿を使って魚が集まるのを待って、一気に竿を引き寄せることで、効率的に食事をすると考えられています。

ユメアンコウの提灯は光る筆のよう

ユメアンコウの提灯は全体的にふさふさしていて光る筆のようです。

ユメアンコウ(提供:ととげ)

深海でみると綿毛のように揺れてきっと幻想的に見えますね。

ユメアンコウは体が真っ黒なので、その光だけに誘われていったら、寝落ちするように飲み込まれてしまいそうです。

離れた発光器を持つシロホシチョウチンアンコウ

シロホシチョウチンアンコウは、提灯の竿の途中からも糸が出ています。

シロホシチョウチンアンコウ(提供:ととげ)

派手な見た目なので、全ての糸や突起が発光していたとしたら、提灯の部分だけでも生物にも見えるほどです。

発光する部分は、主に先端の大きい四本の発光器と、柄から生えている発光器に分かれます。

発光器を離れた場所に置くことで、ひとつの個体ではなく群れのように見せているのかもしれませんね。

クラゲに見える?クロツノアンコウの提灯

クロツノアンコウは背中のいちばん高いところから長い竿の先に提灯があります。提灯は前に4本、後ろに2本の糸が根本から生えているのが特徴です。

クロツノアンコウ(提供:ととげ)

光る球根の根が揺れているように見えるのでしょうか。水中で見ると、ひらひらとしてクラゲのような生き物のようにも見えるかもしれません。

アンドンモグラアンコウの提灯は光るイチゴ!

アンドンモグラアンコウの提灯は表面にぽつぽつと凹凸があります。根本からは突起が出ていて光るイチゴのような見た目です。

アンドンモグラアンコウ(提供:ととげ)

モグラアンコウのなかまのいちばんの特徴は、泳ぐときに提灯が逆さになっていることです。

この提灯を下になびかせるようにして、海底の生物を狙っているのでしょう。

蝋燭みたいなペリカンアンコウの提灯

ペリカンアンコウ(提供:ととげ)

ペリカンアンコウは他のチョウチンアンコウより控えめで先端に突起が2つあり、そこが光っています。

先が少し光っているだけなので提灯というより蝋燭みたいなのですが、ペリカンの名の通り口のとても大きいアンコウなので、提灯の小ささで油断していると丸飲みにされてしまいます。

あまり目立たない?ヒレナガチョウチンアンコウの提灯

ヒレナガチョウチンアンコウの提灯は木の枝のようにたくさん分岐しています。

ヒレナガチョウチンアンコウ(提供:ととげ)

しかし、発光バクテリアを培養するための培養室がないためほかのアンコウと同じように発光することはできないと考えられています。光ったらクリスマスの電飾のようになると思うので、残念ですね。

しかし、ヒレが長く伸びているので寧ろ、このアンコウの場合は提灯があまり目立っていない印象です。

マサモリチョウチンアンコウの提灯は重厚感がある

太くて長い2本の突起が特徴です。細かいトゲに覆われており、見た目から重厚感を感じます。

マサモリチョウチンアンコウ(提供:ととげ)

深海でも目立つことでしょう。トゲで全体が覆われているので、光るサボテンのようにも見えます。

体に対してもとても大きい提灯なので、泳いでいて重たくないのか気になります。

Lasiognathus ancistrophorus の提灯

Lasiognathus ancistrophorus の他のアンコウとの違いは、ふたつの鋭いかぎ爪が付いている点です。

Lasiognathus ancistrophorus(提供:ととげ)

このかぎ爪で獲物をひっかけているのであれば、人と同じように釣りをしていることになりますね。

釣り針まで付いた人工的な提灯で、不思議な魅力があります。

himantolophus macroceratoides の提灯

このアンコウは2本の糸が生えていてその先が光っているというチョウチンアンコウに似た形状を持っていますが、その2本がとても太いです。糸というよりはほぼ縄です。

himantolophus macroceratoides(提供:ととげ)

Himantolophus macroceras によく似ていますが別種です。macrocerasとは大きな角という意味で、この提灯の特徴をとてもよく捉えた学名です。

個性的なチョウチンアンコウの提灯

このようにチョウチンアンコウの提灯は多種多様で個性的です。アンコウにとっては大切な釣り道具、発光バクテリアにとっては住むための家となっています。

お互いがお互いのためになっている、双方共が利益を得られる関係性ですね。

発光バクテリアが中で発光しているのを半透明の皮膚で取り囲んでいる構造は、蝋燭などの光源の周りを光を通す障子紙で取り囲んでいる提灯の構造と似ていて、チョウチンアンコウというのはとても特徴を捉えた良い名前だと思います。

(サカナトライター:ととげ)

参考文献

岡本誠・本村浩之(2024)、日本の深海魚図鑑、山と溪谷社

中坊徹次編(2013)、日本産魚類検索 全種の同定 第三版、東海大学出版会

尼岡邦夫・仲谷一宏・矢部衞(2020)、北海道の魚類 全種図鑑、北海道新聞社

尼岡邦夫(2009)、深海魚 暗黒街のモンスターたち、ブックマン社

羽根田弥太(1968)チョウチンアンコウの発光器とその発光、横須賀市自然・人文博物館報告, 第14号, 1図3板, 1968年3月.

Ho, H.-C., Kawai, T., & Amaoka, K. (2016). Records of deep-sea anglerfishes (Lophiiformes: Ceratioidei) from Indonesia, with descriptions of three new species. Zootaxa, 4121(3),267?294.

Pietsch, T. W. (2010). A new species of deep-sea anglerfish, genus Himantolophus (Lophiiformes: Himantolophidae) from the Western South Pacific, with comments on the validity of H. pseudalbinares. Zootaxa, 2688, 57?65.

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