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【京都観光ではたらく】~ヤサカ観光バス株式会社~

京都観光Naviぷらす

常務取締役 阿辻康雄さん(中央)
運転士 山中翔太郎さん(中央左)
運転士 藤本 翔さん(左)
バスガイド 秋友ひかりさん(中央右)
バスガイド 野村侑加さん(右)


お客様に直接京都の魅力を発信するセールスマン、観光バスの乗務員をもっと増やしたい


―常務取締役 阿辻康雄さん


京都観光に訪れるツアー客や、団体旅行に欠かせないのが観光バス。京都市南区に拠点を構える「ヤサカ観光バス株式会社」は、1950年代の創業以来、多くの観光客を支えてきた企業です。会社の駐車場には大型バスがずらり。観光バスを舞台に、日々活躍するみなさまにお話を伺いました。



できるだけ多くのバスに、バスガイドを同乗させたい


ヤサカ観光バスでは、運転士が約50人、バスガイドが約25人勤務しています(取材時2024年12月時点)。常務取締役の阿辻康雄さんはこう語ります。「運転士やバスガイドは、毎日現場でたくさんの人と出会います。彼らは京都の魅力を発信するセールスマン。特に、直接お客様と触れあうバスガイドは大きな役割を担っています」
他の業界と同様、観光バスの業界でも人手不足はコロナ禍以前から課題だったそう。「乗務員が不足していて、自社でバスガイドを確保している会社は減っていく一方。そんな状況でも、私たちはやはりバスガイドを大切にしたい。自分で観光地の情報を調べることもできるけれど、旅先でバスガイドに案内してもらう体験は、やはり違いますよ。人数が足りず、今は運転士だけの運行になるときもありますが、できるだけ多くのバスにバスガイドを同乗させたいと考えています。」


免許なしでも入社可能。会社負担で大型二種免許取得をサポート


教育体制が充実しているのもヤサカ観光バスの特徴。未経験でバスガイドや運転士を目指すことも可能です。運転士志望で大型二種免許を持っていない場合でも、免許取得にかかる費用約50万円を会社が負担。働きながら取得できる制度が整っており、独り立ちできるまで先輩社員がしっかりサポートしてくれます。「教育課主任運転士が教習ドライバーとして指導し、毎日バスに乗って練習できる環境を整えています。3日に1回、4日に1回乗っているようでは大型観光バスの運転をマスターすることは難しいので、毎日欠かさずバスに乗ってもらっています」と阿辻さん。これまでに、大学を卒業されたばかりの若者、イタリアンレストランの店長など、異業種から転職した方々がこの制度を活用し、バス運転士として活躍しています。
運転士になると、もう一つ楽しみが。なんと一人一人に自身が運転、管理する専用の〝マイバス〟が与えられるとのこと。「新しいバスをどんどん導入しています。昔は、新入社員は古いバスしか運転できない……そんな時代もありましたが、今は違います。入社したばかりの社員にも最新のバスに乗ってもらいます」


待機時間は自由時間。遠方での仕事や繁忙期には手当てが充実



観光シーズンである春と秋は繁忙期。この時期は業務もハードになりますが、その分やりがいを感じている社員も多いそうです。「遠方への運行や繁忙期には手当てがつきます。ハイシーズンにはしっかり働いてお給料を稼ぎ、シーズンオフには休みを取ってゆっくり過ごす……そんな働き方をしている社員も多いです」と阿辻さんは言います。運転士は乗客の命を預かる仕事。会社は運転士の健康管理にも気を配ります。「運転士の健康診断は年に2回実施しています。脳ドックも順番に受けてもらっています」。このように社員が、安心して業務にあたることができる環境が整っています。


「バスガイドは、やはり好きでないと続けられない仕事です。子育て中であれば、時短勤務をしたり、宿泊がない業務を担当してもらうなど、一人一人に合わせて調整も可能です。最近は長く働いてくれる社員が増えてとてもありがたいです」と阿辻さん。観光バスを舞台に京都の魅力発信をする社員をもっと増やしたい、と新たな仲間を心待ちにしています。


乗り物や運転が好きで選んだ仕事。責任を持ってお客様を目的地に安全に届けた後には楽しみも


―運転士 山中翔太郎さん
—運転士 藤本 翔さん



山中翔太郎さんと藤本翔さんは、ヤサカ観光バスで働く運転士。取材時、山中さんは入社2年目、藤本さんはまだ入社後3か月ほどでした。


入社後に免許取得ができることも、就職先決定の決め手に


「乗り物関係の仕事に就きたいと思っていました。小学校のときに乗ったヤサカ観光バスが印象に残っていて、入社を決めました。入社当初は、楽しみが6割、不安4割。大型二種免許は就職前に取得していましたが、技術面で大丈夫かなと不安でした」と山中さん。



藤本さんは入社後に免許を取得。「運転が好きだったのでこの仕事を選びました。大型二種免許を会社負担で取得できる点が大きな決め手でした。費用がかかるので、やはり自分ではなかなか取得できません……。本当にありがたかったです」
免許取得や研修を経て、現場デビューまで約3か月。初めての乗務は、二人とも手に汗握る経験だったと振り返ります。「京都駅から滋賀県の希望ヶ丘まで、小学生1クラスの送迎を担当しました。京都駅で駐車券を取るときには、緊張で手が震えていたのを鮮明に覚えています」と山中さん。藤本さんは最近になって一人乗務を経験したばかり。「今でも毎日、無我夢中です。お客様が笑顔でバスを降りる姿を見ると、ようやくほっと一息できます」


楽しい旅行を支える縁の下の力持ち。先輩の姿を見て研鑽を積む



「お客様を目的地に安全にお送りすることが一番大事。今後はさらに、その道中を楽しんでもらえるような運転ができるようになりたい」と意気込みを語る藤本さん。
山中さんは研修で印象に残った言葉を教えてくれました。「運転士はお客様の楽しい旅行を支える縁の下の力持ち。お客様の『ありがとう』を聞けたとき、ちゃんと役目を担えたと実感できて、この仕事を選んでよかったと感じます」



スキルアップのために、先輩運転士の運転を視察することもしばしば。「先輩運転士は動きの無駄のなさ、タイミングが全然違います。遠方への運行でバスに同乗させていただくときはとても勉強になります」(山中さん)


シフト制だがしっかり休みも確保、待機時間も楽しめる働き方が魅力の一つ


運転士の仕事には、土日の勤務や長時間の運転といった不規則なイメージもありますが、ヤサカ観光バスではシフト制を採用し、労働時間は法律で厳格に管理されています。勤務時間内でも待機時間は、基本的に自由。これが仕事の楽しみの一つでもあるようです。「目的地到着後のお客様の観光時間は待機時間として自由に使えます。もちろん整備や清掃をしっかりと行った上ですが、自分も観光を楽しんだりします」と藤本さん。



「待機時間はバスで休憩をしていてもいいし、お客様と一緒に観光してもいい。慣れてきたら、仕事が旅行の延長線上のように感じられることも。この仕事の魅力でもありますね」と山中さんも笑顔で話します。
最後に、二人は口を揃えて言います。「やっぱり一番は、お客様に楽しんでいただくこと」。山中さんは、「命とともに時間も預かっている。もし道を間違えれば、楽しい旅行の時間を奪ってしまうことになる。だから、とにかくミスを減らし、安全で安定した運転を目指したい」と今後の目標を語りました。お客様の楽しい旅行を支える運転士としての責任感。二人の言葉からその思いがにじみ出ていました。


数年間のブランクや方言の壁を乗り越えて。『ありがとう』の笑顔が見える案内を


―バスガイド 秋友ひかりさん
―バスガイド 野村侑加さん


秋友ひかりさんは、高校卒業後ヤサカ観光バスで9年間バスガイドとして勤務後、10年のブランクを経て、2022年に復帰しました。野村侑加さんは、長野県出身。京都で暮らしてみたいという思いからバスガイドの仕事を選んだそうです。


不安も感じながら、それぞれチャレンジ中



「復帰前は観光とは全く違う仕事をしていたので、最初は無理だ......と思っていました。でも友達とドライブ中に、心の中でガイドをしてみたら『意外といけるかも』と思えてきて。好きな仕事でしたから、頑張れば復帰できると自信が持てました」と秋友さん。復帰後も以前の同僚や後輩たちが温かく迎えてくれたことが心強かったそうです。「10年前と比べて新しいホテルが増えていたり、バスの駐車場が変わっていたり。毎日アップデートに必死です!」と笑顔で話します。



一方、野村さんは大の京都好き。なんと、お母様が現役のバスガイドだそう。「母がバスガイドなので、『京都でバスガイドになる』と言ったら京都への移住を許してくれるんじゃないかと思ったんです。母には、『京都のバスガイドは特に難しい。やるんだったら一番難しいところから始めなさい』と言われました」



歴史ある社寺が多く、案内する事柄が多い京都でのガイド「お寺や神社、歴史も好きなので、案内するのがとても楽しいです。休日にも改めて足を運ぶほど。京都生活を満喫しています」


「今ここを注目してほしい」という〝ご案内〟がバスガイドの大切な仕事


他エリアから移住した野村さんには苦労もあったそう。「私が最初につまずいたのは関西弁でした。関西に来たお客様は、関西弁で面白いことを話してくれると期待をしている方が多くて。その期待に応えるには、なかなか苦労しました」。そこで、野村さんなりに独自の工夫を凝らしたとのこと。「京都でのガイドは、どうしても歴史の話が多くなりますが、地元の特産品を紹介したり、いろんな話を含めるように心がけました。初めて知るその土地の一面に驚かれた様子や、関心を示されたときには、心のなかでガッツポーズをしています」



ドライバーと同じく、バスガイドのやりがいも、やはりお客様からの『ありがとう』の一言。「少しでも手を抜けば、『ありがとう』はもらえません。初めて京都を訪れたお客様にわかりやすい案内をするにはどうすればよいか、日々考えています。」と秋友さん。「以前、お客様に『ガイドさんの案内はかゆいところに手が届く』と言ってもらえたことがあって、とても嬉しかったです。今は、ビデオでの案内も多いですが、生身の人間だからこそできるガイドをしたい。例えば、バスガイドがベストなタイミングであえて『皆さん右後ろをご覧ください』と声をかけることで、普段気づかない景色をお見せすることができます。その〝ご案内〟こそが大事な仕事だと思っています」



忙しい時期はしっかり働くからこそ、充実したオフを過ごせる


繁忙期を乗り越えて仕事が落ち着いた時期にはしっかり休めるのもバスガイドの魅力。「一度バスガイドの仕事を辞めたとき、ほかの仕事ではこんなに休みが取れないんだと実感しました。バスガイドはシフト制で、有給休暇を加えれば1か月休むことも可能。海外旅行にも行きやすいんですよ」



野村さんは、休日には茶道のお稽古に通っているとのこと。「茶道を学んでから、季節の行事に敏感になりました。道具やお菓子、お花など、季節の移ろいを楽しんでします。こうした学びができるのも京都ならではです」
仕事もプライベートもアクティブで充実しているお二人。キャリアを積むと、徐々に遠方の仕事も任せられるようになるそう。「1年目は関西中心の業務が多いですが、その後は宿泊業務を含む遠方の仕事を担当するようになります。キャリアを重ねるごとに研修を受けて、担当できる範囲が広がっていきます。宿泊業務では、温泉に入ったり、旅館のお料理を楽しんだり。これも仕事の楽しみの一つです」



3人での会話写真に―――


阿辻さん―
野村さんは長野から就職してきてくれた。他にも北海道や鹿児島の出身の社員もいます。修学旅行でうちのバスに乗って、先輩ガイドの姿を見て、『私もなりたい!』と就職してくれる社員も多いです。


野村さん―
長野は近い方ですね。


阿辻さん―
野村さんはもう10年目。安心して任せられます。


秋友さん―
もうベテラン! 私も頑張らなくては!


阿辻さん―
秋友さんが戻ってきてくれて本当に助かっています。経験豊富でとても頼りになる。ぜひほかの方も戻ってきてほしいですし、未経験の方もぜひチャレンジしてほしいです!

▼京都で働きたい人と観光事業者をつなぐメディア「京都観光はたらくNavi」
https://job.kyoto.travel/


記事を書いた人:株式会社文と編集の杜
京都で活動している編集・ライティング事務所。インタビュー、ガイドブック、書籍などジャンルを問わず、さまざまな「読みもの」に携わっている。近年は、ライティングに関するイベントの開催も
https://bhnomori.com/

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