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イスラエルとイランは、かつて「仲間」だった?〜1979年イラン革命以前の関係とは

草の実堂

画像 : イラン革命 イランに帰国したホメイニー師 public domain

近年、イスラエルとイランの関係は緊張と敵対の連続だ。

2025年6月も、両国間の軍事的応酬が激化し、国際社会や日本国内では「犬猿の仲」と見なされている。

しかし、意外にも1979年のイラン革命以前、両国は戦略的かつ友好的な関係を築いていた。

友好関係の背景

画像 : イラン最高指導者 アリー・ハーメネイー氏 public domain

イスラエルとイランの友好関係は、1948年のイスラエル建国直後から始まった。

イランは当時、パフラヴィー朝の統治下にあり、モハンマド・レザー・シャー(国王)が西洋寄りの近代化政策を推し進めていた。
イランはイスラエルを1949年に事実上承認し、中東で非アラブ国家として共通の地政学的利益を見出していた。

両国は、アラブ諸国の影響力を牽制し、地域の安定と自国の安全保障を確保するために協力した。

特に、冷戦下でのソビエト連邦の影響力拡大を防ぐため、イスラエルとイランは米国を中心とする西側陣営に属し、戦略的パートナーシップを深めた。

イランは石油資源を背景に経済的・軍事的な力を増しており、イスラエルは軍事技術や情報分野で優位性を発揮。
両国は、互いの強みを補完し合う関係を築いていたのだ。

経済と文化の交流

画像 : イランの首都テヘラン wiki c Amir1140

友好関係は、経済や民間交流にも及んだ。

1950年代から1970年代にかけて、イスラエルとイランは貿易を拡大。

イランはイスラエルに石油を供給し、イスラエルは農業技術や灌漑システムを提供した。
イスラエルの先進的な農業技術は、イランの農地開発や食糧生産の向上に貢献。特に、乾燥地での灌漑技術はイランの農業近代化に大きな役割を果たした。

民間レベルでも交流は活発だった。両国間には直行便が運航され、観光やビジネスでの往来が盛んだった。

イランの首都テヘランでは、イスラエル人ビジネスマンや技術者が活動し、逆にイラン人もイスラエルを訪れ、テルアビブやエルサレムの文化に触れた。

ユダヤ教とイスラム教の違いはあったものの、非アラブ国家としての共通意識が、文化的障壁を低くしていた。

軍事と情報分野での協力

軍事面でも両国は密接に連携した。

イスラエルはイランに軍事装備や訓練を提供し、イランはイスラエルに戦略的な後方支援を行った。

特に、1960年代から1970年代にかけて、両国は情報機関であるイスラエルのモサドと、イランのサヴァク(国家情報治安機構)を通じて緊密な協力関係を築いた。両者はアラブ諸国の動向や共産主義勢力の監視で情報を共有し、地域の安全保障を強化した。

一例として、クルド人問題での協力が挙げられる。

イランとイスラエルは、イラクのサダム・フセイン政権に対抗するため、イラク国内のクルド人勢力を支援。
武器や資金を提供し、イラクの影響力を弱める戦略を共有した。

この協力は、両国の地政学的目標が一致していたことを象徴している。

友好関係の終焉とその後

画像 : イラン革命 イランに帰国したホメイニー師 public domain

しかし、この友好関係は、1979年のイラン革命で劇的に終わりを告げた。

革命によりパフラヴィー朝が崩壊し、ホメイニ師を指導者とするイスラム共和国が成立。
イランは反米・反イスラエルを国是とし、イスラエルとの関係を断絶した。

直行便は廃止され、経済・軍事協力も途絶。両国は互いを敵視する関係へと転換した。

革命後のイランは、パレスチナ問題を重視し、イスラエルを「シオニスト政権」として非難。
ヒズボラなど反イスラエル勢力を支援し、対立は深まった。

一方、イスラエルはイランの核開発や地域影響力の拡大を脅威とみなし、軍事衝突やサイバー攻撃を繰り返すようになった。

2025年6月の軍事応酬も、この対立の延長線上にある。

友好の歴史が示すもの

イスラエルとイランの過去の友好関係は、地政学的な利害が一致すれば、宗教や文化の違いを越えた協力が可能であることを示す。

しかし、革命によるイデオロギーの変化が、こうした関係を一変させることもある。

現在の敵対関係は、両国の歴史的背景を無視して理解することはできない。友好の時代があったからこそ、現在の対立の深さが際立つのだ。

国際社会や日本国内で「犬猿の仲」とされる両国だが、過去の協力の歴史は、中東の複雑な関係性を理解する鍵となる。

和平への道は険しいが、かつての友好が再び可能になる日を想像することは、無意味ではないかもしれない。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

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