意外と多くの人が気になっているこの時期特有の肌トラブル…。花粉症じゃなくても発症?原因とスキンケア対策を聞きました
スギやヒノキによる春の花粉症シーズンは終盤に入りましたが、この時期特有の肌トラブルに悩まされる人は意外と多いようです。花粉による肌荒れについて、小児科専門医でアレルギー専門医として知られる浜松市中央区の子ども&ファミリーアレルギークリニック・ペンギン院長、西田光宏先生にSBSアナウンサー松下晴輝が聞きました。
松下:国民病ともいわれる花粉症ですが、鼻炎や目の症状のほか肌のトラブルを発症する人も増えていると聞きました。これは本当ですか。
西田:花粉症といえば目のかゆみやくしゃみ、鼻水が代表的な症状ですが、肌にも影響が出ることがあり、これを花粉皮膚炎と呼ぶ人もいます。花粉が多く飛ぶ時期に、皮膚のかゆみや湿疹、まぶたや目の周りが赤くなる症状がある場合は、花粉皮膚炎の可能性があります。
肌トラブルを引き起こす3つの原因は?
松下:花粉症の症状は何年も出ていたのですが、肌のトラブルは今年が初めてという人もいると聞きました。この場合は別の原因があるんですか。
西田:原因は大きく3つあると思います。1つ目は花粉が直接肌に付いてアレルギー反応を起こすことです。空気中を漂う花粉は、顔や首、腕など露出した肌に付着します。特にスギの花粉症がある人は、肌のバリア機能が弱まっている部分に花粉が触れると、赤みやかゆみ、湿疹などのアレルギー反応が出やすくなると思います。
2つ目はかゆみで皮膚をこすってしまうことです。これは特に子どもに多いのですが、無意識にこすってしまうことで肌が傷ついて炎症が悪化します。まぶたや鼻の周りは皮膚が薄く、特に注意が必要です。
3つ目は、花粉に限らないことですが、この時期の気候による乾燥や寒暖差によって皮膚のバリア機能が低下していることです。スギ花粉が飛散する時期は空気が乾燥して気温差も大きく、皮膚がダメージを受けやすい状態なんです。このタイミングで花粉など外からの刺激が加わると、皮膚トラブルが起こりやすくなります。
外出前、帰宅後の予防対策は?
松下:様々な原因があるんですね。普段の生活で予防する方法はありますか。
西田:原因が3つあるので、1つずつ対策を紹介します。まずは花粉が肌に付かないようにすることが大切です。外出時はマスクや花粉用の眼鏡、帽子を活用するといいと思います。衣類は花粉が付きにくいツルツルした素材のものを選ぶのがおすすめです。毛織物など花粉が付きやすいものは避けた方が良いと思います。
そして帰宅後は、玄関で服や髪の毛に付いた花粉をよく払って、すぐに洗顔することも大切です。顔に付いた花粉はできるだけ早く落とすことを心がけましょう。また、下着や寝具は直接皮膚に触れるので、花粉が付かないように室内干しにすると安心です。
子どもは爪を切るなど肌を守る対策も
西田:次に皮膚をこすって悪化させないための対策ですが、目や鼻のかゆみがある場合は目薬や点鼻薬を正しく使ってください。かゆみそのものを抑えることが大事です。さらにお子さんの場合は無意識にこすってしまうので、爪を短く切っておくのも忘れないようにしてください。
乾燥や寒暖差から肌を守るスキンケアもとても大事です。洗顔や入浴の後はすぐに保湿剤を塗るよう心がけてください。また熱いお湯で顔を洗ったり、かゆいからといってゴシゴシこすったりすると肌のバリアが壊れてしまうので注意しましょう。タオルで拭くときも優しく押さえるようにするのがポイントです。
バリア機能低下で花粉皮膚炎に?疲れや寝不足にも注意
松下:花粉症じゃなくても花粉皮膚炎になることがあると聞きましたが、これはどうしてですか。
西田:花粉症じゃなくても乾燥や寒暖差で肌のバリア機能が低下していると、黄砂やPM2.5などの刺激で皮膚炎を起こすことがあります。特にアトピー性皮膚炎の人などで肌が敏感な人は注意が必要です。空気の乾燥に加えて花粉や生活習慣の乱れ、疲れなどが加わるとかゆみが増したり皮膚炎になったりします。
松下:肌トラブルがすぐに治らない人は、早めに病院を受診した方が良いですか。
西田:ここまで説明したさまざまな対策を試しても良くならない場合は、医療機関を受診してください。トラブルの原因を考えながら治療することが大切です。
また花粉症だからと諦めずに、内服薬や点眼薬、点鼻薬などを使って症状をコントロールすることも重要です。さらに寝不足や疲労が溜まると、肌のバリア機能が落ちるだけでなく全身のだるさや集中力の低下など、生活の質にも影響します。
症状のコントロールはとても大事なので、重症の人は飛散が始まる前から内服を開始するとか、舌下免疫療法などの予防的な治療が効果的だと思います。
松下:花粉による皮膚炎に悩んでいた方は多いと思いますが、予防する方法も含めて詳しく教えていただきました。西田先生、ありがとうございました。
※2025年3月27日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。今回お話をうかがったのは……子ども&ファミリーアレルギークリニック・ペンギン院長、西田光宏先生
浜松医科大学医学部卒業後、小児科およびアレルギー専門医として病院勤務を経て、2021年に「子ども&ファミリーアレルギークリニック・ペンギン」を開院。気管支喘息管理や舌下免疫療法、さらに乳児から始まるアレルギーマーチの軽症化をライフワークとして、赤ちゃんから大人まで家族全員のアレルギー診療に携わる。